お気に入りのアクセサリー
馬車のレースに参加した翌日。
俺は部屋で地図と睨み合いをしていた。
ここの近くとなるとミトラを含む五大都市のうちの一つアルムかはたまた王都か、
「うーん。どうするかな…」
唸っていると、背後からひょいと顔を覗き込む気配がした。
「どうしたの?」
突然の声に、思わず飛び上がる。
「ああ。次どこ行こうか…って!鍵閉めてたよね⁉︎なんでいるの⁉︎」
驚いて問い詰めると、リナはけろりとした顔で首を傾げた。
「開いてたけど?」
俺は額を押さえた。集中しすぎて、鍵を閉め忘れたらしい。旅に出てから、リナには何度かこの手の「奇襲」をかけられている。警戒心が薄れているわけではないが、彼女の自由奔放さにはいつも驚かされる。
リナは地図を覗き込み、俺の思考を察したように言った。
「そろそろあの店に行って良いんじゃない?」
言われてみれば、もうそんな時間か。レースの興奮で少しばかり頭から抜け落ちていた。加工されたアクセサリーが、どんな姿になっているのか。
期待で胸が膨らむ。
宿を出て職人の店へと向かう。昨日と同じ路地裏を進むと、店の扉から微かな光が漏れているのが見えた。中に入ると、店主が作業台に向かい、小さな宝石を研磨している最中だった。
「おお、お待ちしておりましたよ!」
俺たちの姿を見ると、店主は顔を上げ、満面の笑みを浮かべた。その表情には、自信と充足感が満ち溢れている。
「拝見ください、これが貴方方の石ですよ」
店主はそう言って、丁寧に布に包まれた二つの品を差し出した。布が解かれると、そこには息をのむほどに美しいアクセサリーが現れた。
俺の緑色の石は、繊細な銀細工に囲まれ、まるで葉っぱから滴り落ちる朝露のように輝くペンダントになっていた。光を受けるたびに、石の奥から幻想的な緑色の光が揺らめく。その輝きは、まるで森の精霊が宿っているかのようだ。
そして、リナの白い石は、シンプルな銀の台座にはめ込まれ、指輪として生まれ変わっていた。しかし、その輝きはただの宝石ではない。まるで夜空の星々を凝縮したかのように、石の内部で無数の光の点が瞬いている。それは、静謐でありながらも、底知れぬ力を感じさせる輝きだった。
「すごい…!想像以上だよ!」
リナが感嘆の声を上げる。俺も美しさに、ただただ見惚れるばかりだった。職人の手によって、あの原石がここまで昇華されるとは。単なる宝飾品というよりは、むしろ芸術品と呼ぶべきだろう。
「この輝きは、まさしくこの石が持つ本来の力…魂の輝きですな。私もこれほどの石に触れることは滅多にありません。最高の腕を振るわせていただきました」
店主は満足げに頷いた。このアクセサリーが、単なる装飾品以上の意味を持つことは、この輝きを見れば明らかだ。俺たちの旅に、新たな力が加わった瞬間だった。
店を出て、リナは自分の指にはまった白い指輪を眺めている。俺も自分の首元のペンダントにそっと触れた。
とっても温かみを感じる。
大通りに戻ると何やら騒がしい。
そして誰かがこちらに気づいた
「居たぞー!」
するとみんながこちらを向く
少し身構えてしまう。
「おめでとう!」
「まさか勝てるとは!」
…勝ったことがもう伝わっているらしい
なんだかこれを毎回言われるとなると恥ずかしい
「…宿に戻ろう」
「そうだね」
2人でそそくさと宿に逃げ帰った。
結局次のところは決まらずじまいだ
「次どこに行こうか」
「行ったところで見つけたとこでいいんじゃない?」
リナはそう言う。確かにそれもいいかもしれない
少し考えたあと決めた。
「よし、そうしようか」
そう決めたならこの街を出るのは早い方がいい
翌朝すぐに出よう。
明日のために早く寝ることにした。
翌朝、荷物をまとめてバイクに乗る。
リナもこちらに手を回して落ちないようにする。
さあ出発だ。
ここでの思い出を振り返りつつ、ハンドルを回した
あっという間に街は遠ざかっていく
次の出会いは何があるのだろうか…
これにてミトラ、終了となります、次に行くところでどのような出会いがあるのでしょうか
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