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百八十四話

「さて、初動でいくつかポイントが動きましたが、どうでしょう?」

「そうですね、どのチームも今はファーミング中ってところですね」

「街の中に散らばるアイテムを拾い集める、ある意味一番た楽しい時間ですよね」

「そうですね、ただこれのせいで初動落ちが一番凹むって言うね」

 動きのない時間、そのゲーム内あるあるで盛り上がる解説と実況。

 会場はチームごとに時間差で映し出されるモニターに釘付けだ。

 そんな会場から、何かが起きてると思わせるどよめきが起きている。

 それに気が付いた実況の野明が、各チームの状況確認へとモニターを動かし始める。

「何か、動きがあったんでしょうか? ……おっと、これは、……またもかすみそう25のAチームか? 何やら怪しい動きをしていますよ?」

 解説のブーターマインに注目させる実況を行う。

 お、またあのチームかとブーターマインも若干顔をほころばせている。


「ん? これはえーっと? かすみそう25の賀來村美祢選手ですかね。とても珍しい武器を手に入れたみたいです!」

「確かに。これはコンテンダーですね」

「あの見つけるのも一苦労で、検証サイトが検証をあきらめて公式発表を待ったという唯一の武器ですね」

「人によっては本当にあったんだと言うでしょうね」

 そう美祢のキャラクターが手にしているのは、特訓中に傘部ランカと優華が必要だと話していた低出現率で有名な最大火力を有する武器だった。

「コンテンダーは、Ⅲアーマーでも胴撃ち一発という公式チート武器でしたね」

「ええ、ただし接近戦でしか効果を担保されていませんからね。どう使うかが見所ですね」

「ああっと!! またしても賀來村選手! 今度はメインとサブの武器にリロードしたと思ったら、なんだ? え? よ、予備の弾丸を全部捨てているぅ!!」

「え!? うわぁ……本当だ。そのくせにバックパックは一番大容量のやつ背負ってますね」

「これは流石に、さすがにオーダーミス、もしくは賀來村選手がかなりの素人だと予想されますが、いかがでしょう!?」

 このTOTというゲーム。ゲーム内の銃は所定弾数を超えては発砲できない仕様だ。

 スナイパーライフルであれば最大で10発。アサルトライフルで最大30発が最大数となっている。

 撃ってしまえば減る仕様であれば、予備の弾はいくらあっても心もとない。

 それがプレイヤーの心理だ。


 だが、美祢はそれを無視するかのように予備を持たずマガジン内の弾丸しか所持していない。

 多くの試合を解説実況してきたこの二人にも理解の追いつかない行動だった。

 しかもチームメンバーはそれを咎めもせずに、目の前で持ち寄った物資を分け始めている。

 そしてかすみそう25Aチームはまたも、会場にいる誰もが目を疑う行動をはじめる。

「……え!?」

 実況していた野明は、思わず言葉を失う。

 しかし職務を思い出したように、再び美祢達の行動をアナウンスしはじめた。

「あっ! 失礼しました。私思わず実況だということを忘れてしまいました。……それほどの光景が行われています! な、なんとっ! 賀來村選手、今度はバックパックをパンパンにするほどのグレネードを拾い始めましたよ!!?? これはいったい!?」

「初めて見ましたね。1マガジンの弾丸と少しの回復アイテム。そのほかは全部投げモノですか……初めて見た」

 その特異な行動は、会場から少しの嘲笑を引き起こす。

 あり得ない。

 なんだ、全然素人じゃんと。

 好調な出だしのかすみそう25Aチームは、もはや沈んだチームだと解説のブーターマインでさえ思った。

 それを受けたように、実況の野明も別の話題がないかと戦況の画面へと視線を移していく。


「おっ! 動きがあったみたいですね。これは、大本命のV3チーム!! 交戦していた2チームに横やりを入れて15ポイントを奪ったようですね!!」

「やはり強い、そしてその殲滅速度。やはりやり込んでいるプレイヤーとの実力の差が顕著に出ましたね」

「では、リプレイが出るようです。これは発見したシーンですね、発砲音を聞いて迷いなくそちらに走り出して……スコープで覗く! 見つけた! 鮮やか! 鮮やかなヘッドショットで1ダウン! そして交戦中のもう一チームにグレでけん制している間に人数差を活かしてつめ寄る! 近距離戦はお手の物、鮮やかなダウンからの確キルでノーダメージで1チームが殲滅。そのままリロードしながら索敵! おお!! 良いグレが通る! ものの数十秒で2チーム壊滅です!! 強い! あまりに強い!!」

「実力差があるとはいえ、ノーダメで2チームは出来過ぎですね。初動でポイントゲットした2チームを大きく突き放した形ですね」

 何度も何度もプレイしたという印象を受ける。

 きわめてオーソドックスなプレイにブーターマインも安どしている。

 直前に歪なものを見たせいもあるだろう。

 そのせいか実況にも熱が入り、解説も滑らかなものだった。

「おっと! こちらは……はなみずき25のAチーム!! 交戦が始まりそうですよ!?」

 各チームのファーミングも終わり、各所で交戦が始まりだすのだった。

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