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百八十二話

「さぁー! いよいよ始まります、アイドル達による真剣勝負! ToTアイドルカップ!! 普段は可憐な彼女たちが、ゲーム画面で互いに銃弾を撃ち合い倒し倒されする普段とは違うこのイベント!! 実況は私、アクマイヤー野明のあけ! そして解説はこの方、FPSレジェンド! 元プロゲーマーのブーターマイン!!」

「ど~も~、ブーターです」

「さぁ!! ブーターさん。いよいよ始まりますが、どのようにご覧ですか?」

「そうですね。普段配信しているV3の3名の実力は把握しているんですが、他のアイドルさんの実力が一切不明なもので……ただ、やはり最有力はV3の三人なのかなと」

 実況と解説の声は、会場にも響いている。

 その声を聴き、それはそうだろうと思っている者が多数だった。

 それは大会の配信を見ている者も同じだ。だからこそ、現場にはV3のファンが多いのだから。

 熱心に現場を追い続けているファンですら、この日の参戦を見送る者が多かった。

 それはどのアイドルグループであっても同じだ。

 28組のアイドルグループが参戦するこの大会、会場での一大派閥はV3のファンである。

 次に多いのは、熱心なFPSファンたち。彼らはFPSだけでなくアイドルにももちろん興味を持つそうなわけだが、広く浅く自分の聴きやすい楽曲を提供しているアイドルを認知している程度。

 特定の誰かを追っているのかと問われれば、普段配信も行っている実況のアクマイヤー野明と解説のブーターマインのファンと答える層だ。


 多くのアイドルグループにとって、アウェーと言っていいこの大会。

 なぜ28組ものアイドルグループが参加したのかと言えば、答えはその優勝賞品のなかにある。

 この大会は、協賛にテレビ局が付いている。そしてその局が時流を逃さないために新しくeスポーツを取り扱う番組をはじめるのだ。

 その番組のレギュラーが約束されている。

 イベント運営側にとっては、V3という新しいアイドルを売り出すための番組だという認識ではあるが。

 そこは賞品としているからには、確約ではないのだ。

 番組でこの大会の様子を放送するためには、アイドル達の真剣な表情も欲しい。

 ただ大方の予想はやはりV3で間違いはない。


 そんなこととはあまり関係ない解説のブーターマインは、参加者のプレイヤー名を見て一言零す。

「ただですね、何人かは僕がランク回しているときに見たことある人もいるんですよね」

「ブーターさんと同ランク帯のプレイヤーがですか!?」

 その言葉に野明は驚いたように言葉を返す。

 ブーターマインといえば、国内で3番目にプロゲーマーとなった凄腕。近年まであまりなじみのなかったFPSというジャンルをけん引してきた、この業界の王者なのだから。

 その腕が衰えたから引退したわけではなく、増え始めたゲーム配信者を育成するために会社を立ち上げるために第一線を退いたに過ぎない。

 ブーターマイン自身も未だに配信を続けているが、その実力は今が全盛期なのではないかと噂されるほどだ。

 そんなプレイヤーとマッチングするプレイヤーが、こんな大会に出場していることにも、まして本業がアイドルなことにも驚きを隠せない。

 それを理解しているのは、野明だけではない。

 会場の半数は、ブーターマインの言葉にどよめいている。


 ブーターマインの言う何名か。その中には、はなみずき25の江尻史華も入っている。

 だがそうとは知らない史華は、ブーターマインの次の言葉に警戒心を高くするのだった。

「それとですね、僕の知人で、配信者友達の『Mrあんぶれら』が入れ知恵したチームがいるらしいんですよね。どのチームか教えてくれなかったんですけど……だいぶ面白いって聞いてます」

「み、『Mrあんぶれら』って、正体不明のゴリゴリのFPSプレイヤーですよね!? ブーターさん、お知り合いだったんですね!!」

「はい、正体不明とは本人も思っていないでしょうけど。よく配信外で遊んでますね」

「え~~~!! なんで一緒に配信しないんですか!? 同接500万いくでしょそれ!?」

「いやぁ~、彼は本業忙しいから」

 会場の多くは、ブーターマインと謎の配信者Mrあんぶれらが知り合いだったことに驚いている。

 だが参加者で両名を知っている者、史華を含めた全員が参加チームのどれかににMrあんぶれらが関わっていたことを驚くのだった。

 Mrあんぶれらこと傘部ランカは、配信界隈だけではなくFPS界隈でもその名前を轟かせている。

 ブーターマインが一躍名を上げたFPSの世界大会の最終候補まで残っておきながら、諸事情により辞退したという過去がある。

 FPSシーンでは、ブーターマインとどちらが強いのかなど今でもよく話題に上がるプレイヤーだ。

 そんな有名人が、こんな大会に関わっているとは誰も予想さえしていいなかった。


 そんな落ち着かない空気のまま、大会の幕は上がっていく。

「あ、ではでは! TOTアイドルマッチ!! やっていきましょう~~~~~~!!!!」

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