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百八十話

 史華と優華の奮闘もあり、ある程度の実力を振り分けることができた。

 3人のチームを合計6チームというのは、はなみずき25とかすみそう25がアイドルカーニバルで良好な成績を収めているからの特典のようなものだった。いくら主催側が推しているアイドルがいたとしても、興行という面を考えれば既存の有名アイドルを多く呼ぶ方が客入りは良いのも事実。

 実力未知数であってもそのメンバーを多く招集できれば注目度も挙がる。

 ならば、この二グループにはどんなこじつけであっても優遇する必要があるのだ。

 もちろん、その上で自分たちの売り出すアイドルが勝つのがベスト。

 だからこそのeスポーツのイベントなのだから。

 しかし、彼らの誤算は事前にその優遇政策を出場者に漏らしてしまったことだ。

 勝負事に強いこだわりを持つはなみずき25。そして今回採用されたバトルロイヤルゲーム『ToTティーオーティー』をやりこんでいる江尻史華によって作戦として利用されてしまうこととなる。


 史華の考えた上達しなかった下位6人を2チームに固めて出場することが決定している。

 現在は事務所の会議室で少しでも上達するようにと集められて特訓をしている。誰にアドバイスをもらうこともなく。

 そして、はなみずき25の上位6人は史華と共に都内某所のeスポーツ施設で作戦会議と特訓をしている。

 かすみそう25の上位6人はというと、主の伝手で『ToT』が得意な人物の下に来ていた。

「どぉーも!! ゲーム配信をしている『Mrミスターあんぶれら』こと漫画家の傘部ランカでぃーす!!」

 主は、普段の傘部ランカとのギャップに絶句している。大半のメンバーも開いた口がふさがっていない。

 しかし名前に過剰に反応するメンバーもいる。

 美祢と優華だ。

「おっ! 僕のこと知ってくれてるのかな? よろしくでぇーす!」

「あ、あの『ゼロから始める魔法体系』毎月読んでます! お会いできて光栄です!」

「おっと、読者ちゃんだったか。よろしくね」

 美祢は個人的に知り合いになった今でも@滴主水の大ファンのままだ。その大好きな作家先生のコミカライズを連載している傘部ランカは、美祢にとって憧れの人の一人だった。

「こっちの娘も読者ちゃん?」

「いえっ! わ、私は配信の方で……っ!! いつも見てます!! 昨日も見ました!!」

「おおっとっ! リスナーちゃんだったのね、よろしくでぇーす!」

 そのやり取りを見守っていた主は、頭を抱えたまま傘部ランカの肩に手を置く。


「……先生、ランカ先生。昨日って確か、締切日でしたよね? 牧島君泣いて原稿落ちたって。来月休載だって謝られたんですけど」

「主水くん、原稿落してもクオリティーは落とせないんだよ。クオリティーのためには必要な配信なんだよ!!」

 真面目にそう言い放った大御所漫画家の目は、実に純粋な目をしていた。

 なるほど、『楽園少女』が30年も続くわけだ。この大御所は配信界隈でも大御所の20年選手。

 連載さながらに配信サイトを転々として、今や登録者数200万人というオバケ配信者なんだと佐藤に聞かされていた。移籍されないように配信サイトから公認まで受けるような配信者にまでなっているらしい。

 だがオバケ配信者となったおかげで、作中に担当編集が無残な死に方をしなくなったらしいので佐藤はいいストレス発散になっているのではないかとも言っていた。

 現傘部ランカ番の牧島には、何か美味しいものでも食べさせてあげようと思う主だった。


 ◇ ◇ ◇ 


「なるほどね、面白いよ」

「本当ですか!?」

「ああ、相手の度肝を抜くにはちょうど良すぎるね」

 優華は傘部ランカに自信の考えた作戦を相談していた。自分よりもゲームを熟知している人物に褒められたことで、昨日まで抱えていた不安が一気に抜けていく。

「だとしたら、保険でこれがあれば尚いいけどね」

 傘部ランカは、優華にToTの武器表を見せある銃を指さす。

「コンテンダーですか。……出現率かなり低いですよね」

 傘部ランカが示した銃は、ハンドガンに属する銃でありながら専用のライフル弾を使用することでゲーム内で最大ダメージを確約されている武器だ。ただし1発打ったらリロードが必要な点と滅多に見つからないという制約が掛かっている。加えて最大ダメージもハンドガンの射程に限った話であるため完全にロマン武器扱いとなっている。

 常識ではそれを戦略に組み込むのは愚行だと言える。

 だが作戦を立てた優華本人も不安を感じていたが、自分以上の上級者の傘部ランカのアドバイスにより有効かもしれないと思うのだった。

 優華も優華で、この大会をそれなりに真面目に勝ち抜くことを考えているのだ。

 その後ろでは……。


「ちょっと! 僕初心者なんだけど! 待って! えっ! 1発しか打てないなんて聞いてない!!」

 メンバーに誘われて、主がゲームをプレイして騒いでいる。

 その声に引っかかるものを感じた優華と傘部ランカは、主の画面を覗き込む。

「どうやら、見つかる人には見つかるみたいだね」

「しかもリロードしてますよ。銃一つに1発でしたよね? 付属の弾って」

「そうだね。意外と持ってるってことかな、主水くん」

 傘部ランカの言葉で主を見た優華。

「でも、また外しましたよ」

「あらら」

 傘部ランカの顔が締まらないなぁと笑っていた。

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