毒を吐きたいお年頃…
さっそく、大腸菌の事を『日和見菌』にジャンル分けする間違いを犯している事に気が付いて文面を修正致しました。
いやぁ…
大分、大分お勉強したから、小説を進めようかなぁ、と思って再開したのですが、やはり、付け焼刃勉強+私のあまり性能が良くない脳ミソだと、抜け落ちている場所が沢山見付かりました。
参考にさんざんお世話になった本の著者さん、永田和宏先生の様には上手く行かないもんですよ。
足らないところは、ファンタジー小説と云う事で…
想像力と架空のお話である、と云うのを生かして、逃げ切るしかありません(笑)
「おーい、俺よ、聞こえっか~?さぁ、俺が手にした知識を受け取るがいい!」
俺のスキル【蛋白質の記憶】で共有されて、俺から流れ込んで来ていた、訳の分からない単語の奔流に ――訳が判らない単語の奔流なのは、恐らくはネットで検索して調べ上げているそれについて、俺自身が理解し切れていないからなのだろうな、きっと。―― 悪酔いしていた時に、それは不意に起こった。
今までさっぱり訳が分からなかった単語の数々が突如として有機的に絡まり合って、意味を持ち始めたのだ!
おお…判る、何か、判るぞこれ。
つい先程迄は、さっぱり理解が及ばずに、
「いーから日本語で説明しろよテメー、つまりどう云う事だよっ!」
って苛立っていた情報が、みるみる判る、理解が及ぶ様相に早変わり。
これは…さては奴が、調べ上げた資料をあらかた理解したから、俺も理解が及ぶ様になって来たと云う事だろうかな?
だが、おっかしぃな、俺の分身である俺には奴の事が良く判って居る、何にしろ長い付き合いだったのだからな。
奴がこんなに頭脳明晰である訳が無い!
知識を飲み込んで有機的に結び付ける ――理解が及ぶ―― までに掛かる時間が、早過ぎはしないかこれ?
「お前らの世界で一瞬なのかな?これは。俺の方では約二か月もの時間が流れててさ~、ずっと図書館だとかに通い詰めて、細菌や細胞の食事問題について、調べて猛勉強していたんだよね~、まぁ、俺なりのお勉強だからさ、判るだろ?猛勉強っつってもまぁ、それを他人が見たらば、弛い自習だよな。合間にかなりサボりが入ってるのはお約束だしね~。」
成る程なぁ…自習していたのか。
それなら納得だけれどもさ…
今、奴が、然り気無く、何か重要な事を云ったぞ!
≪俺の方では約二か月もの時間が流れててさ~(ててさぁ~…ってさぁ~…さぁ~…) ←エコー希望≫
おい、それはつまり…
俺の今いるこの世界の中で遭遇した可及的速やかなる判断が迫られる局面、例えばそれは、望ましくはないが、不意の戦闘だとかがおこった場合だとかに…何か問題が発生して解決策が見い出せないでいる場合、リアルな世界のお前が、検索して調べ上げて、それについて理解し切って俺にフィードバックする時間が殆ど一瞬で済む、と云う事じゃないのか!?
つまり、ファミコンだとかのゲーム機でシューティングゲームやってて、敵の弾丸が多い、やべぇ、このまんまだとやられるってタイミングでポーズボタン押して一旦停止させたからの、弾を避ける道筋をじっくりと選び直してからのポーズ解除みたいなもんでさ…
もしかして、それって、すんげぇ、アドバンテージ無い!?
チートってか、ズル技じゃない!?
「えぇ~、俺、お前のピンチの都度にお勉強するのかよ~っ、それはめんどくせぇ~」
うるせぇ、俺これからさんざ、お前を利用させて貰うからねっ!
「ちくしょう~、だから知らせたくなかったんだよな~、やっちまったぜ、トホホ…」
…今まで隠してやがったのか、こいつめ。
ふんっ!発動せよっ!
【精神攻撃スキル】っ!
「グギャー、馬鹿っ!馬鹿っ!あの頃の俺の馬鹿っ!死ね、死ね!輪廻転生を50回くらい繰り返して、その根本から構造を変えちまえっ!」
黒歴史でも見ているのだろうな、コイツ(笑)
…
……
今なら理解出来るし、何か、カウス・フォン・ゲルファウスト、あの元宮廷魔術師の隠者じぃさんが気を利かせて魔術を使って提供してくれた視界、その見え方も今では何だか変化して来ている。
理解が及ぶとは、こう言う、物の見え方すら、変化してしまう物なのだろうな。
カプセル状の身体の形には変化はない。
だが、そのカプセル状の身体の表面全体は、何だかひっじょうに細かい、人間で云ったらば、産毛みたいなモノでびっちりと覆われて居る。
恐らくは、これが『リポ多糖』と云う物だろう。
この産毛こそが、リポ多糖…
俺は今、腸炎ビブリオに異世界転生をしていて、その腸炎ビブリオは『グラム陰性菌』に分類されている菌である。
グラム陰性菌とは、
『その細菌がグラム陽性菌に属するのか、或いは、グラム陰性菌であるのか』
と言う、細菌の大まかな特徴から、細菌たちの種類を大雑把に二分して分類させる方法で、『陰性である』と判断された菌の事だ。
この分類方法は、地球の、人間である、
Christian・Gramと言う名のデンマーク人が考案した、細菌達を顕微鏡や何かで見た時に、見易く、可視化させやすくする為に、細菌達を染色物質で色付けした時に大別された染色結果から恐らくは出来上がった分類方法である。
【グラム陽性・陰性、判別方法】
↓
〈細菌達をガラス板上に固定…〉
ほら、小学生の時にやらなかったか?
理科の実験の時に、ガラスの板、『プレパラート』と呼ばれていたあれの上に、スポイトで、田んぼから採取してきた水やなんかをポタっと一滴垂らして、その垂らした一滴の上から、プレパラートよりももっと小さな、孫プレパラート的な細かいガラスの板を乗っけて、いわば、ガラスとガラスでサンドイッチにした様にしっかりと挟み込んでから、顕微鏡で覗き込むやつ。
ミジンコだとかケンミジンコだとか、ミドリムシだとかを顕微鏡で眺める学習でやった。
あれだな、それをやってから…
↓
〈クリスタルバイオレッド(青)を用いて染色〉
↓
クリスタルバイオレッドがどの様な物質で、どの様な仕組みでこの物質が細菌達を染色するものなのか、そこまでは奴は調べ上げなかったらしいが、この物質は細菌達を染色可能な絵具的なモノであるのは判るだろう。
この工程で細菌達は青色に染色されるのである。
↓
〈Nal+l2処理〉
↓
ヨウ素液(Nal=ヨウ化ナトリウム)をそこに作用させると、菌達の体内でクリスタルバイオレッドとヨウ素の複合体が形成されて分子量が大きくなる。
つまり、分子量が大きくなる事によって、色の元が細菌達の身体から抜けにくくすると云う事かな?
あれか、美術の時間に、木炭で画用紙に描いたデッサン、あれが仕上がった時に、描いた木炭の色がこすれて色が抜けたりしなくなる様に固定させる目的で吹き付けるスプレーあったじゃない。
あれみたいに、定着させる為の工程かな、これは?
正確な所は判らない。
まぁ、奴の膠付け焼刃的なお勉強ではわざわざ調べなかった部分なのだろうな。
↓
〈アルコールで洗浄〉
↓
これは脱色の目的でやるらしい。
アルコールで、細胞壁が損傷を受けて、薄い細胞壁しか持たない種類の菌は体内に形成されたクリスタルバイオレッドヨウ素複合液体が体外に流出する。
これに対して、細胞壁が分厚い細菌達は、少々のアルコール程度は防ぎ切って複合染色液の流出は起らない。
なので、細胞壁の分厚い菌の仲間達は青色に、細胞壁の装甲が薄い菌の仲間達はここで色が抜けてしまい、無色になる。
↓
〈サフラニンorパイフェル液で染色〉
この段階で、無色となった細胞壁の薄い種類の細菌達が赤色に染色される。
まぁ、赤い絵の具的なモノだなぁ。
…こうやって青色と赤色の二種類に染色された細菌達、青色に染まった細菌達を、『グラム陽性菌』と呼び、一旦着色された青色がアルコール洗浄によって脱色されてまた無色になってからの、そっから更に赤色に染色された細菌達を『グラム陰性菌』と呼ぶそうなのだ。
つまり、グラム陰性菌達はアルコールで脱色され、グラム陽性菌達はアルコールでは脱色されないのだ。
これは恐らくは細胞壁の分厚さが分厚いか、分厚くないかでアルコールを防ぎ切る事が出来るのか出来ないのかの違いで、考えて見れば、病院やなんかでは良く殺菌だとか言って、注射の前に布にアルコールを染み込ませて注射を打つ部分を擦る。
それなんかは、アルコールが弱点のグラム陰性菌を殺菌する効果が有るのだろうなぁ…でもさ、グラム陽性菌達は生き残っちゃうんじゃぁないのだろうかな、それだとさ?
まぁ、俺のこんな疑問に関して、明確なる答えが頭の中に入って居ないと云う事は、その辺は俺のお勉強の範囲外だったと云う事だよな。
細胞壁の装甲が薄くて、アルコールに弱い、そんなグラム陰性菌達にはけれども、グラム陽性菌達とは違った強みがあって、陽性菌達が持っていないモノがある。
「外膜」と言う奴である。
陰性菌達は、細胞壁が薄くてひ弱い分、細胞壁の更に外側に、この「外膜」と言う外壁を持っているのである。
これは例えば家屋に例えたならば、陰性菌達の場合、庭が有って、それを「外膜」と言う名の塀で囲っているのである。その分、家を構成している壁は薄いのかな、そんなイメージ。
これに対して、人間の家屋に例えたなら…陽性菌達の身体は、家全体が分厚い壁に囲まれてはいるけれども、扉さえ開けてしまえばもう、そこはダイレクトに体内なのだ。
あれだ、後で説明するが、陽性菌達の細胞壁の分厚さは、陰性菌達の細胞壁の厚さと比べてしまうと、まぁまぁ、ミクロの世界であるから、人間から見たらば等しく微々たるモノだとは思うのだが、こうして細菌に転生してしまった俺からの視点で見てみるとさ、これはもぅ、圧倒的であると言って良い位に分厚い。
家屋に例えたけれども、グラム陽性菌の細胞壁の分厚さは、これは家ってか、ちょっとした要塞といっても良い。
第二次世界対戦だとかでさ、要塞、トーチカやらブンカーやら、あったろ?
コンクリートが数メートル規模で覆っている分厚い壁、250kg爆弾だとか落とされてもそう簡単には降参しない要塞…グラム陽性菌達の細胞壁は、いわば、家ってか、要塞さながらだ。
ざっくり、陽性菌と陰性菌の特徴を比べれば、
グラム陽性菌…外膜無し、細胞壁、超分厚い重戦車装甲で、要塞で、その分厚さは250nm nmは、mmに直すと、0,00025mm、アルコールに強い。
グラム陰性菌…外壁有る、細胞壁、超薄い紙装甲軽戦車で、一般家屋で、その紙っぺらさは8nm、0,000008mm、アルコールで殺菌されがち。
そんな感じ。
マジかー、俺、アルコールで殺菌されちまうんだー
酒、飲めねぇーんだー…
ちょっとショック。
まぁ、まぁ、大分、話が逸れはしたのだが…
つまり、俺は今現在、『グラム陰性菌』の仲間達に属している腸炎ビブリオである、と云う事であるな。
細胞壁、薄いらしいよ。
その代わりに、外膜があるらしーよ。
そして、細菌の身体に転生したこの俺の、カプセル状の体表一面ににびっしりと生えているこの産毛に似ているリポ多糖、これは、グラム陰性菌達が持っているモノで、人間にとっては内毒素となる。
内毒素は、エンドトキシンとも呼ばれている。
内毒素=エンドトキシンは…
宿主つまり、今の場合だと、俺はどうやら、異世界中世ファンタジーのモンスターの定番の内の一種であるオーガの体内にどうやら今現在存在しているらしいから、このオーガがこれに当たる。
オーガ=宿主
俺=寄生生物
グラム陰性菌が持っている、リポ多糖/この産毛は、宿主/オーガにとっては、内毒素/エンドトキシンであり、この産毛状のリポ多糖は、毒物になりうるのである。
でもさ、ここで以って、今現在の俺のステータスを思い出して見ようか…
《ステータス・オープン》
【名前】 ヲヂサン
【レベル】 1
【種族】腸炎ビブリオ(非病原性)<憑依>
ガイスト(人間基)
《種族ランク ロイテナント》
【種族】腸炎ビブリオ(非病原性) ←ここ!
う~ん…
つまりは、病原性は無い。
病原性は無いにも関わらず、内毒素/エンドトキシンなんて、御大層な名前の 産毛/リポ多糖…
これは一体どういう事かと云えばこれは、恐らくは、奴が必死こいて頭に詰め込んだらしいお勉強の成果が頭の中に流れ込んで来たので、これは判る。
グラム陰性菌の外膜の外側をびっしりと覆っているのが、さっき言った産毛みたいなリポ多糖質な訳なのだが、この産毛みたいなリポ多糖達の、そのより先端に近い部分は、『O-抗原』と呼ばれている。
ほら、人間社会で一時期、ニュースで取り上げられた、O-157って言葉を知らないかね?
別名、病原性大腸菌、O-157の事だよ。
大腸菌って奴はさ、人間の腸内に普通に存在して、実は人間には作り出す事が出来ない栄養素である、ビタミンKを作り出したりして、ある意味、人間を助ける働きもしている腸内細菌の一種で、善玉菌・悪玉菌・日和見菌って人間の都合によってそうやって種類を大まかに分類されたルールの中では、悪玉菌に分類させられている菌だ。
悪玉菌に属する細菌達は、宿主/人間 にとって、一応は害が有る種類の細菌達のグループである。
腸内で善玉菌達と常に腸内の領域の土地を奪い合っているのが、善玉菌と悪玉菌達との関係だったかな。
戦国時代に、強い大名と強い大名に(さは)まれて、その都度、強い方の味方をして節操なく寝返っちゃう地方の弱小勢力の豪族的な立ち位置として、日和見菌なんて勢力もあったりするらしい。
まぁ、この『善玉菌』『悪玉菌』『日和見菌』達の腸内に於ける構成比率は、健康な成人を参考にすると 善20:悪10:日70 らしいので、一応地方の弱小豪族的な立ち位置の日和見菌達は構成比率的にはむしろ主力となっている。
有名な戦国大名たちだって、その勢力の中に多くの地方豪族達のを取り込んでいるし、そうして当てはめて考えて見れば、益々以って腸内細菌達が戦国時代の有象無象な大名・豪族達に見えて来る気がしてこないだろうかな?
そんな悪玉菌に分類されている大腸菌の中で更に細かくタイプ・種類分けされた内の一種が、病原性大腸菌O-157だったりする。
この病原性大腸菌O-157なんかは、人間の都合によるジャンル分けでは、悪玉菌の仲間に入っている菌だ。
名前と人間達に対する毒性の強さから判断するとこいつ等なんかは悪玉菌側の、さぞかし名が周辺諸国に響き渡り、日和見菌達地方豪族達からは畏怖されている、そんな強い戦国大名を連想してしまう。
この、病原性大腸菌O-157の名前にちょっと注目して見ようか。
O-157の部分だ。
O-157の『O』これが何を意味するかと云えば…
グラム陰性菌の細菌達が宿主に対して 内毒素/エンドトキシン としての働きをもたらす物質、『抗原』の、そのどのタイプの抗原であるのかを『O/抗原の種類』として表している。
上で述べた様に、この『抗原』には、何種類かあって、例えばそれは…
K抗原…グラム陰性菌達の莢膜
F抗原…グラム陰性菌達の細網
H抗原…グラム陰性菌達の鞭毛
O抗原…グラム陰性菌達の外膜のリポ多糖質
等の、いわば、グラム陰性菌達の身体そのものの一部が、宿主にとっては 内毒素/エンドトキシン と成り得る訳で、このO-157の『O』の場合は、つまりはこの、『リポ多糖』の事であり、O-157の後半の『157』は、その、リポ多糖質の種類を表している。
グラム陰性菌の仲間である大腸菌の外膜の外側にびっしりと細かく生えているこの リポ多糖質/産毛 には実は170種類程の沢山の種類が有って、それぞれに構造が違っているのである。
金髪だとか、茶髪だとか、黒髪だとかパーマだとか、ソバージュだとかドレットヘアだとか…髪質、髪型の個性的な種類が170くらいは有ると云う事を想像してくれれればそれに近いイメージだろうか。
つまり、病原性大腸菌O-157は、大腸菌の外膜全体をみっちりと包んでいる リポ多糖質/産毛/髪質/髪型/ のタイプが157番の型番のタイプ、そんな リポ多糖/産毛/髪質/髪型 を持った大腸菌、と云う事を表している。
O-157の 毒素/エンドトキシン は 宿主/人間 にとっては、それは強烈な毒素を持っているらしく、有害で有るのだが、このO抗原の別の番号の 産毛/髪質/髪型/リポ多糖 が全て、このO-157と同じ様に、宿主/人間 にとって明らかなる有害をもたらしている、と云う訳では無くて、むしろ、別の「O抗原」の中には、わざと人間の体に取り込んで、アレルギーが起こるのを防ぐ為に人間達が利用して、いわば、薬みたいに利用されているものもある。
つまり、腸炎ビブリオに転生した今現在のこの俺の状態は、先の大腸菌で述べたのと同じように、この体表面にびっちりと生えている産毛みたいなリポ多糖質、その種類が、別段、宿主にとって有害と成り得る可能性が無い、そんな毒を持たないタイプの 産毛/髪質/髪型/リポ多糖 の型番を持っている 腸炎ビブリオ/グラム陰性菌 だと云う事である。
ちぇ、何だか残念な気がするぜ…
毒を吐いてみたいのだぜ。




