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ただ、おっさんが夢の中でどっかに旅立ってしまう、世間的には需要が皆無なお話  作者: 加工豚(かこうとん)
【第二章】惑星、恒星、命、輪廻、ヲヂサン、全部回転物です。
39/50

【三ノ宮貭典の異世界冒険譚】


「行きたい、生きて居たい、僕は生を愛する」

って言葉。

ハンス・U・ルーデルの著書かな?

確か『急降下爆撃』って本を昔に読んでいた時に、あぁ、いい言葉だな。

って、素直に引き込まれました。





【side・(さん)(のみや)貭典(もとふみ)



環境循環転生(かんきょうじゅんかんてんせい)コースとやらが、この様な過酷な道程(みちのり)とは、あの当時の貭典(もとふみ)は思っても見ないでいた…

あの日、彼は「転生勇者(てんせいゆうしゃ)候補生(こうほせい)適性診断(てきせいしんだん)」とやらに落ちて、更に続けざまに「通常転移適性診断(つうじょうてんいてきせいしんだん)」にも落ちた。

二連敗である。




折角、特に未練も関心も向かなかったあの世界――


高校を卒業したらば、普通の大学or普通の就職をして、普通の人生を歩んで、普通に人生の終焉を迎えるであろう…普通・普通・普通ばかりが蔓延していて、その事に対しても普通の態度で以って受け入れなければならない、極めてグロテスクなホラー世界だ、それは…と、彼は思っていた。

何れ、自分は「普通」に押し潰されて仕舞うのでは無いのか…貭典(もとふみ)は自分が客観的に見ても可も不可も無くて、至って普通で良い方にも悪い方へも特に目立ったモノが無い、と云う事を自覚している。

そんな己と云う「普通の存在」は、やがて如何(いか)にも彼自身との親和性が高そうな″この世界 ″と云うガスの雰囲気に包まれ飲まれて行って、次第に気化して完全に一体化してこの世界と己との境界線さえも失ってしまって消えて仕舞(しま)うのでは無いのか…

彼はその様な日常に対して、底知れぬ絶望感と、此処(ここ)からどうにかして逃れられないものか…と、己の中の大部分で蔓延している「諦観(ていかん)」の存在が占める事を自覚しつつ、その実己の内面では足掻(あが)いていたのかも知れなくて…

だからこそ、あのバーガーショップのトイレから始まった非常識なる非日常が彼を襲って、()の女神…ナタリアと云ったか、彼女の元にやって来ていて、そこでナタリアの説明を聞いて「新しい世界でやって行こう」と決断したのだろう。

その世界でやって行こう、とその決断こそが昨日まで彼が抱いていたその負の感情の呪縛(じゅばく)から解き放たれる切っ掛けとなってくれないか、と、期待していた事への証左(しょうさ)となっているのではないだろうか。


――から飛び出して、いざ往かん、と勇んだ矢先(やさき)、その最初の一歩、その幸先(さいさき)()(つまづ)いて仕舞(しま)った気分であったのだが、幸いにして、「環境循環転生(かんきょうじゅんかんてんせい)」の道は残されていたのである。

そして、どうやら彼にとっては相性が悪いと思われる『適性診断(てきせいしんだん)』と云う奴も、この転生には必要が無く、ただ、回転しているルーレット(てき)(まと)にダーツを投げるのみ。

そうしてダーツの刺さった先の(まと)に書かれていたのは…




カラ~ン♪

カラ~ン♪

カラ~ン♪




「おめでとぉ~御座いますっ、転生決定でぇーす!」









……

………


この周回の彼は、相変わらず逃げ回っていた。

「この周回」と云ったのは、彼はこの世界へと転生を果たしてから、既に何回か死んでは別の場所へとランダム移動を果たして、「その時の周回」の記憶一切を失ってまた新しい周回を繰り返して来たためである。

過去の周回の彼も、天敵から逃げ回るパターンの繰り返しであり、故にこの事象を客観視できる人物がそれを見て居たのであれば「この周回の彼も、相変わらず逃げ回っている。」と思うに相違あるまい。





…恐らくは自分は死んだと云う事なのだと思う。

今、(さん)(のみや)貭典(もとふみ)は現在、(おのれ)の思考の中に居る。

ついつい今まで彼を追い詰めていた天敵は彼を見失って探し回っている所である。

荒ぶる獣の気配が辺りに充満しており、彼はそんな天敵に気取(けど)られぬ様に気配を殺し、波打つ心臓の鼓動、荒ぶる呼吸の息吹ですら「治まれ、沈まれ!」とばかりに祈りたい気分である。

そうやって己の気配を消しつつ、彼は頭の隅で思考しているのであった。

自分は今、殺意と云う名の針の(むしろ)の上で正座している気分だ。

″今まで″何をやって、何に襲われて、″どうなって死んだのか″一切、彼には思い出せないでいる…

貭典(もとふみ)の頭の中では、ある恐ろしい考え、それが確信へと近づいてきている。





環境循環転生(かんきょうじゅんかんてんせい)コースのあの小冊子(パンフレット)に書かれていたあれ。





《③サービスキャンペーン中につき転生保証安心パック!

現在の所、環境循環転生(かんきょうじゅんかんてんせい)コースはサービス期間中につきまして、不慮の事故〖天敵等からの捕食による転生半ばでのリタイア〗に対しましては、一人頭(ひとりあたま)五回まで保障。

ガッチリガードで安心転生!

あなたの刺激的な第2の人生を強力にサポート致します。》



『五回まで保証』



の部分の文章が今彼の脳裏に思い起こされている…彼がこの世界に来て覚えたステータス・オープンで視界の隅に浮かんで来るそのステータスの片隅に書かれている一項目…

『安心パック保証プラン回数』の数字の欄、説明ではこれは見方としては『残り保証回数/保証回数』らしいのだが…



今現在のその数字、(すなわ)ち『0/5』



――この数値は、元々は『5/5』であった筈だ。――

この世界へと来て、不意に見知らぬ場所で目を覚ました時に、彼は今までに一体何が起こっている物か皆目(かいもく)見当が付かずに、不安になり、取り敢えず自分のステータスを確認した事が実は何度もあったのだが…

――彼は思った――恐らく、その合計回数は五回なのだろう、この数字が意味している所は当然、こうなのではないか…

(さん)(のみや)貭典(もとふみ)はその状況が当然の如くに示す太い思考の道筋、まるで国道線の様に当たり前に、自然と辿り着く蓋然性から一つの当たり前過ぎる、そして彼にとってはその回答は恐ろしい回答(それ)を導き出してしまっている。





――つまりは、自分は、今まで、五回、この世界で、何らかの、敵に、捕食、または、殺害されているの、だろうな…死ぬ度に、その間の、記憶が、消えて、仕舞っているのでは、無い、だろうか?――





そして、今彼はまさに、絶体絶命のピンチの最中に居るのである。


今回、貭典(もとふみ)が目を覚まし、それまでの前後の記憶が一切無く不安に駆られて無意識にステータス・オープンを開いたこの周回の彼が意識を取り戻した場所は、険しい二つの切り立った崖。

崖と崖の間の底には、河が流れており、崖と崖の間の距離、(すなわ)ちそれがほぼ川幅となるのであるが…地球の長さの単位を用いるとそれは10メートルも無いといったところである。

そんな河の水面から約30メートルばかり垂直に登った部分に存在している、辛うじて足場と出来る様な大変に心許ない木の柱を幾つも隣同士に連ねて細い幅の木製の道が続いていく場所である。

道幅は1メートル…有るかどうかで、その木製の細い道の片方の端っこ…河側には不慮(ふりょ)の事故防止の為の(さく)すら無い。


(しょく)桟道(さんどう)みたいだ…おっそろしい!

貭典(もとふみ)はステータスをチェックしてから周囲の風景を確認した時に、地球の古代中国の三国志と云うお話を漫画で読んでいてそのお話の中で出てきた侵攻するには大変に困難を伴う天然の要害たるその細い道の風景を連想した。


先程、彼は目を覚ました時にはこの細い道──木の杭を二本、斜めと垂直に崖に突き刺して柱とし、その直角三角形の空を向いた底辺側に木材の角材を渡して作られたその木材の道の只中(ただなか)に寝そべっていた所、意識を取り戻したのである。

一歩寝返りをうったならば、(たちま)ちの内に川へと真っ逆さま…川幅はそれ程でもないが、鈍く緑色の色彩の河の水は、その河底の姿を見せず、それが深い河である事が推察され、そして流れが速いのだ。


っぶねぇーーー!!

貭典(もとふみ)はそんな状態で寝返りを打たなかった己の幸運を感謝するよりも、一歩間違えて居たらば…と、細い木の道の隙間から垣間見える激しく深く流れ続ける川面(かわも)を眺めやって、全身が粟立(あわだ)った。

ぶわぁーっと、全身の毛穴が膨らむ感覚が静謐(せいひつ)を保つ水面に水滴が落ちた波紋(はもん)の様に広がって行った。


そうして周囲の安全確認をした時に、細い道のかなり向こうから、彼を捕食するであろう天敵の存在が接近して来て居る事に気が付き、貭典(もとふみ)は全力で走り出したのである。

崖に僅かばかり張り出している木で渡された細い道では選択は二つに(せば)まる。

敵に近寄る方向へ行くのか、或いは遠ざかる方へ行くのか。

隠れる場所など無く、二択(にたく)しか無かったのである。


その獣は明らかに此方(こちら)の存在を目視によって認識しており、細い桟道(さんどう)を走り寄って来ている。

殺意だか食欲だかを隠す事も無く、熱狂的に此方(こちら)へと走り寄っている。

貭典(もとふみ)はそんな恐ろしい獣がいる方向とは反対側へと走り出していた。


心許(こころもと)ない(しょく)の国へと至る桟道(さんどう)(ごと)き細い幅の木の道を無我夢中で走った先に…不意に細い道幅と視界が水平方向へと広がった。

崖の途上にテーブルの如く張り出した平地が見えてきたのだ。

草地と低木も広がっている…奥行き50メートル、幅30メートルと云ったところであろうか、それがその小さな森を乗せたテーブルの大きさである。

彼はその森の中に駆け込んだ、駆け込んで身を潜めて、呼吸が静まるのを願いつつ、奥に大きな岩がある事に気が付き、その岩の陰に身を潜めつつ、これまでの全力の駆け足で粗ぶった呼吸と鼓動、そして踊りまくる両の足の筋肉が落ち着く事にしばしの間、腐心(ふしん)した。


そうして、貭典(もとふみ)を追って来た天敵から、取り敢えずは隠れる事に成功し、さあ、離れるぞ、と彼が決断して動いた時に、不運がやっていた。

道の反対側、つまり、今まで彼が進んでいた進行方向から、別の天敵が彼の方へ、未だ彼を発見していないのであるが、接近してきているのである。

彼はその事に未だに気が付いては居なかった…

そして貭典(もとふみ)は隠れて居た大きな岩の陰から出て、彼を追って来た獣の方…(すなわ)ち後方を振り返りながら気配を消しつつ歩き出した。

未だ貭典(もとふみ)を発見してはいないが、(たまたま)々その方向…即ち、彼が居る方向へと歩を進めていた別の敵個体が居る方向へと。

そして貭典(もとふみ)は不運な事に、この切り立った崖と崖の合間に広がるささやかな緑のテーブルの足元に横たわっていた木の葉に隠れて目視が到底不可能であったろう、そんな小さな木の枝を踏み折ったのである。





「パキッ!」





決して大音量ではないが、気配を消し続けるには(いささ)か無理があるであろう、そんな小気味が良い乾いた音が辺りに響き、そのタイミングの少し前に貭典(もとふみ)は後方から進行方向へと頭を戻して前方を向きつつあった。

前方に視線を移し替えて真っ先に彼のその赤く鈍く光る眼球が捉えたのは、彼の方へと向かって来ていた敵である。

その敵と目が合った。

お互いの白眼(しろめ)までもが見える距離、と云う奴だった。

まぁ、相手の眼球は全面鈍く赤く光る眼球で、その表現は(いささ)か的確さに欠けているのではあるのだが、そして、この世界へと転生を果たした彼の眼球も同様に鈍く赤く光るものであるのだが、幾らテーブルが濃密に育んだ緑の森林に覆われて居るとしても、気取られずに身を潜めなおすには無理が有ったのである。


彼にとってはそれは不幸な遭遇戦であろう。

ゴブリンへと転生を果たした(さん)(のみや)貭典(もとふみ)にとっては、このオーガと云う名の個体は、彼を襲って捕食する天敵であったのであるから。





「ぐるぅうぅうぅうぅうぅうぅ~…」





このオーガはさぞや空腹であったのだろう、まるで「ごはんみつけた!」と云わんとするかのようなテンションの高ぶりのうなり声をあげて、そうしてそんな声に、元々 貭典(もとふみ)ゴブリンが隠れる原因となっていた後方の別個体のオーガも気が付き、接近してきている…

前方に敵、後方にも敵…

貭典(もとふみ)ゴブリンは最初の天敵を撒いて、このささやかな緑のテーブルが次第に細まって、そこから更に奥へと続いて行く木で渡された桟道(さんどう)が見える位置に居る。

つまり、前方に敵、後方にも敵が存在している最中(さなか)に、今現在彼が立っている場所の道幅はせいぜいが3メートルと云った所なのである。

前方の敵は5メートルの距離に立ち…後方の敵は10メートル有るだろうか…




今彼はまさに、絶体絶命のピンチの最中に居るのである。

ここで彼、(すなわ)ち、(さん)(のみや)貭典(もとふみ)のステータスをご覧頂こう。







【名前】 (さん)(のみや)貭典(もとふみ)


【レベル】1


【種族】 人間(転生者)


【性別】 男


【年齢】 17


 生命 100

 魔力 120

 SP  110


 Str(力)    93

 Dex(器用)   223

 Vit(物理防御) 63

 Agi(速さ)  100

 Int(知力)   96

 Mnd(魔法防御)250

 Luk(運)    92

 Cha(魅力)   37


【所有スキル】


ステータスオープン        Lv ―

霊視       〈個人特技スキル〉 Lv 3/10





これは彼がゴブリンへと転生を果たす前のスキルである。

能力面では凡庸で平均的な数値の中で、器用さが目立っている。

これは写真撮影やら、楽器の演奏を複数こなす事で培われて行った器用さであろう。

彼の霊体験、「霊が見える・声が聞こえる」能力も反映されているように思う。

そして、ゴブリンへと転生を果たした今の彼のステータスはこうなっている。

なお、( )表記の内部は同じレベルのゴブリンの雄個体の参考能力値である。

【 】表記は元の能力値からの能力の増減を表している。





【名前】 (さん)(のみや)貭典(もとふみ)


【レベル】1


【種族】 ゴブリン(転生者)


【性別】 男


【年齢】 17


 生命 20(20) 【- 80】

 魔力 10(10) 【-110】

 SP  30(30) 【- 80】


 Str(力)    53(10) 【-50】

 Dex(器用)   173(15) 【-50】

 Vit(物理防御) 13(10) 【-50】

 Agi(速さ)   50(15) 【-50】

 Int(知力)   96(15)

 Mnd(魔法防御)250(10)

 Luk(運)    92(10)

 Cha(魅力)   10(10) 【-27】


【所有スキル】


ステータスオープン          Lv ―

屋根裏部屋の散歩者〈ユニークスキル〉Lv 1/30

霊視       〈個人特技スキル〉Lv 3/10






生命(いわゆるHPヒットポイント)

魔力(いわゆるMPマジックポイント)

SP(基本的な運動継続力・スタミナ値)


この三つが基本的な種族の数値に準じてしまっている事がこれを見ると判る。

他の能力値の増減には無い特徴である。

そして他の能力値も、肉体を使用する分野の能力値に大きくマイナス補正が働いている事も判るだろう。

そして、精神面を使用する能力値には大きな補正が無く、若干、見た目の容姿等の影響を受ける部分はこれはゴブリンと云う種族に準じてしまっているのではあるが。



そして、増えているスキル。



【屋根裏部屋の散歩者〈ユニークスキル〉Lv 1/30】



これは彼が以前の世界の中で、中肉中背で不細工でもなく、格好良くも無く、大人しくて目立たずに存在感が薄く、陰で彼に付いていたあだ名が『ステルス』だった事に由来する彼個人のユニークスキルなのだろう。

彼が後方を向きながら森の中でとは言えども、幅3メートルの狭い範囲の中で、正面からやって来たオーガが貭典(もとふみ)ゴブリンが足で小枝を折る音を響かせるまで彼の存在に気が付かなかったのは、或いはこのスキルの恩恵なのかも知れない…


だが、彼は小枝を踏んで気配を悟られてしまった。

彼の能力値、『Luk(運) 92』でも、フォロー出来なかったと見える。

尚、人間の平均的な能力値はレベル1の成人前後で大体はオール100前後である。


貭典(もとふみ)が異世界転生を華々しく「ゴブリン」で果たした時、このステータスの大幅減、特に『SP(基本的な運動継続力・スタミナ)』が大きく失われて居る事によって、彼はその逃走に必須であるAgi、素早く逃げ続ける継続力を失って居るのである。


異世界転生に際して自分の能力にその様な変調が起っているにも関わらず、それを自覚しておらぬが故に、そして死んだ時に記憶が継承されず次の周回へと否応なしに送り込まれている事によって、経験による知識の集積、『学習する』と云う事が叶わずに、彼は今までの周回も、そして今回の周回も己の能力、即ち、スタミナと素早さを人間の頃の様に用いようとして上手く行かず天敵に捕食される事を繰り返している、恐らくはその様な状態で有ろうか。


未だ、脈拍も、呼吸の粗さも回復せず、更に下方修正されてしまっている己の体力や素早さを理解せずに全力を込めて走り続けた結果として見事に踊り狂っている彼の大腿筋(だいたいきん)、捕食されて仕舞うのは時間の問題であったが、己のステータスを見て、『もう後が無い、残機(ざんきゼロ)0』を言い渡されている貭典(もとふみ)も必死である。


晴れて新しい世界で生まれ変わった種族がゴブリン。

一介(いっかい)の弱い低級の妖魔(ようま)に過ぎない。

恐らくは何度も逃げ回って来たのだろう…それも今回で終わりだが。

貭典(もとふみ)ゴブリンは己の心身(こころみ)に問うたのだ。




『お前は此処(ここ)で終わって良いのか』




彼の内面はそれに対して即座に反応した。




『断固としてそれを拒否する。』

『生きたい、生きていたい。』

『僕は生を愛する。』

『例え生存が無理だとしても…

『このまま(いい)(だくだく)々と素直に退場してなるものか!』




その感情は貭典(もとふみ)(かつ)()った、彼が籍を置いていた元々の世界で暮らしていた頃には惹起(じゃっき)して来なかった類の感情であろうか?


生きる事。

今存在していると云うその事…

その事について、『死ぬと云う事』を意識して、新しく何かが目覚めたのだろう。

それは貭典(もとふみ)の今までの周回の死に際とは明確に違っていた感情の惹起(じゃっき)である。

前後に天敵と云う危機に際し、決してそれが相応しい行動では無い筈だが、彼は一瞬、目を瞑った。

そうやってから、目を開いた。




死を意識したこの場面で、不思議と心の波打ちは静まって、一秒が一秒では無くなって行く感覚が呼び起こされた。

鼓動・呼吸・ダンスする下半身はその(まま)なのであるが、何かが変わった気がする。




後方からやって来たオーガの個体が貭典(もとふみ)の前方に立っている別の個体を視認した時、この2体の妖魔にとある感情が引き起こされる。

それは野生の野蛮な感情。


このお話を見ている読者は、この様な場面を見たことは無いだろうか?

野良猫が2匹居て、片方が餌を咥え込んで、もう片方が近寄る事を唸って牽制する状態。

今まさに、この2体の妖魔は、捕食すべき餌を前にして、お互いにその様な感情を互いに抱き始めている次第である。

そこに付け入る隙が生まれて来るのであるが、貭典(もとふみ)ゴブリンは果たしてその事に気が回るのだろうか?




ザックリ自分の為メモ設定です。

お気になさらず。


レベルが上がる毎に能力値の十分の一の能力上昇。


【ザックリ強さ比較】レベル1の時。


人間  =All≒100

コボルト=ゴブリン×0.7

ホブゴブ=人間×2

スライム=この世界では雑魚ではなくて、中級モンスター、奇襲特化。

イノシシ=人間×2

オーガ =人間×2


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