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ただ、おっさんが夢の中でどっかに旅立ってしまう、世間的には需要が皆無なお話  作者: 加工豚(かこうとん)
【第二章】惑星、恒星、命、輪廻、ヲヂサン、全部回転物です。
38/50

酒と女神と龍と太陽


章のタイトルはあれですよ…

呑んで、呑んで、呑まれて…

げふっ!







ヲヂサンこと、ウィリアム・ウォーディセンの『適当な微生物』への転生が無事に確定したその時から少しばかり時間は遡る。







【side・転移五人組&ウィリアム・ウォーディセン陣営隷下(じんえいれいか)




安田安兵衛(やすだやすべえ)とカウス・フォン・ゲルファウストの偵察二人組は焦っていた…それは駄女神(だめがみ)ことナタリアが、小冊子(パンフレット)『転生勇者コース』と『通常転移コース』の二種、一枚ずつを二枚、それを五人の転移者へと都合10枚滞りなく配り終わると踵を返して彼等の主人であるウォーディセンの元へと向かって行ったからである。


――或いは、時間が差し迫っているのかも知れない――


その様な懸念が二人の胸中に共通し出し、彼等は術式の解析にかかる時間をそれは長く永い時間の如くに感じていた…延頸挙踵(えんけいきょしょう)と云う奴であろうか。







《むむ…この術式の解析は…困難じゃ…(さなが)ら迷路の様に入り組んでおって…うむ、これは明らかに『解析される事』を意識していて、それに対し露骨に対策を講じておる術式じゃな…この短時間で、解けるのかどうか…》





カウス・フォン・ゲルファウストは己の全力を上げて解析を進めては居る様ではあるのだが、どうやらその進捗(しんちょく)っぷりに現在の所は(かくかく)々たる成果は無いらしく、そして安兵衛の方はどうかと云えば、そんなゲルファウストの試みが(はかばか)々しくはないものであるから、当然、『最初から存在する物として見ていないと判らない文字』だとか、その辺りを見つけ出す事が出来ず、また、読める範囲での文面に良く詐欺業界で使われている様な『怪しさ』を感じる箇所も見付からず…はっきり言って手持無沙汰(てもちぶさた)であり…





《『転生者認定書式(てんせいしゃにんていしょしき)(いちがた)』が未だ出て来ない事も気になりやすぜ、あれがどうやら(あね)さん


――どうやら安兵衛(やすべえ)はヲヂサンの内部に存在している惑星アルヴィスの現身(うつしみ)である彼女の事をこう呼んでいるらしい―――


が云うには、相当にえげつない制約の術式が練り込まれているらしいんでさぁ、…あの姐さんじゃねー方の駄女神(だめがみ)…先に大叔父貴(おおおじき)


――どうやら安兵衛はヲヂサンことウィリアム・ウォーディセンの事をそう呼んでいるらしい――


んとこの要件済ますつもりでいるみてぇだし、これは急がないとならないってぇ~時に…歯痒いですぜっ!》





と、その様な事を呟きながら二つの小冊子(パンフレット)に書かれている文章に何らかの詐欺的な部分が見いだされないのか、と、繰り返しつつ一応は目を通しているのだが…しかし、当然、巧妙に魔法の術式によって隠蔽された文章は彼には見付けられないでいるのである。





と、その時…

彼等二人の現在の所の宿主であるウィリアム・ウォーディセンが彼等に対して、火急なる撤退を促してきた…





《おい、安兵衛(やすべえ)急いで戻って来いっ!》

《ゲルファウストは…意識だけを飛ばしたから大丈夫だな。》





それに続いて、



「ピィーーーーーーーーーーっ!」



(ホイッスル)の音がこの白い空間中に響き渡り…



「はぁーい、しゅぅーーーーりょぉーーーー!」



あの駄女神(だめがみ)の張り上げた声が響き渡る。

何だかやり慣れた司会者感が強い。



「何か、適当な『微生物』へ転生ーーー!」



安兵衛とゲルファウスト…

二人にとっての宿主に、

何だか(ろく)でもない決定がなされたようである。



《こりゃ、ヤスベエ、急いで戻れ、『風になれ、風に乗れベシュレウニーゲァ!!』》



安兵衛(やすべえ)に、ゲルファウストが補助魔法を展開、加速の魔法の様だ。



《ほいきた、飛ばしやすぜぇ、ご老人っ!》



意識体の更に分隊の分隊である故に身体が無いのも関わらず、安兵衛のイメージの中では球児(きゅうじ)進塁(しんるい)目的の盗塁(とうるい)をするイメージが先走ってしまって、安兵衛はさながら一番打者(あしがはやい)の如くにダッシュして、宿主の手前で無意味にヘッドスライディングを決め、頭だけ見上げた格好で彼の主人を覗き込むと…宿主のウィリアム・ウォーディセンの様子はおかしい、正体を失っている様子であり…安兵衛(やすべえ)がそんな宿主の身を案じ始めたタイミングで、何かが彼の意識体全体を『ヒュッ』と引っ張る感覚が生じて、次の瞬間には無事、宿主の内部へと回収されたのである…







《ちょ…アンタ、微生物なんてなにチョイスしてくれてんのよっ!アタシがアンタの内面に存在している時にそんなもん選んでんなぁ~~~この、はげえぇえぇえぇえぇ~~~~~~!》







宿主の精神体の一部である武闘派の右腕である安田安兵衛(やすだやすべえ)には現代的な知識が有るのであるし、かの惑星…アルヴィスに居た頃から先駆的な知識を収集して研究し、学んでいたゲルファウストにも『微生物』なるものが目には見えない微細な生物であろう事は頭の中で理解でき…二人そろって


『この莫迦(やどぬし)、碌なもんじゃねーもんに転生しやがった!』


とお互いに大変に似通った感情を抱いた頃…少しだけ宿主に遅れて二人は意識を喪失して行ったのである…











……

………




【side・名前()()い者】




…いやいやいやいや。

世の中、大変に良く出来ているって云うか。

うん、まさにそれだね。


あの暗黒龍(ワザリング)太陽神(フレイア)が向こう側から、あちら側へと向かったタイミングで、全てが見渡せる私の視界の中、とある乱数的なモノが変化して、それも実は昔から―――いやいや、そもそも此処は『何時か、または、時間の無い場所』だから、昔からだとかは無いのだけれども―――見えているのだけれども、その事象が確定する前には朧気で、判然と区別が付かなかったのだ。


私があれらを(おいしくいただ)いた後に、ただちにその朧気であった事象の輪郭がはっきりして見えて、変化した。

因果律(いんがりつ)と云う物が、ちょぉーっと…

そう、野球?

地球の文化で例えたならば、それは魔球…

ナックルボール


そんな感じに予測不可能な鋭い変化を見せたもので、流石の名捕手たるこの私の捕球テクニックですら混乱させたのねー。

「全てが見渡せる」視界を持っていて、『何時か、または、時間の無い場所』に居るのに、何故に変化に対応出来ないのかって!?

説明がむずかしいなぁ、もう。

人間に私等の様な存在の感覚を説明するのって…

限界を感じてしまうよね…

全てが見渡せるのに、見落とすのかって?


…私、今誰に説明してんだろ?

まぁ、良いか。

誰にとも無くて、自分が判りやすく噛み砕くために、私は今現在、私自身が取り込んだ思考と云う名の牧草を咀嚼(そしゃく)し終えて、暫く時間を経た後に反芻(はんすう)している様な状況なのだ。


つまり、私が暗黒龍(ワザリング)太陽神(フレイア)を反転させて反対側へ送ったタイミングで、今度は「あちら側」の第一種惑星から二人…まるで失ったバランスを保つかの様な魂の性質と質量の人間が「向こう側」へと向かっており、私はその二名に大変なる関心を抱いたのである。


ま、世の中は大変に良く出来ています事!


死なんて事象は、それこそ秒単位で無数に起こっている、現在進行形でね。

何度も言うけども、そもそも私の居るこの場所は『何時か、または、時間の無い場所』なのであるから、「秒単位」だとかの表現は決して妥当では無いのだけれども。


私がその二名の第一種惑星から来た人間に関心を持ったのは、それが少しだけ大きな因果律に関わっていたから。


ちょっとこの二人、呼び出して話を聞いてみましょうかね~♪

覗いて見ましょうかねぇ~♪





へぇ~。

あの二人組のじじぃ。

そのモノズバリじゃんか、


だって、私が何時もの如く、彼等の魂を覗いて見た結果、戦闘スタイルでさえも、かたや「双刀(双頭)の龍」みたいに刃物の二刀流で、かたや「無手」で、相手が描く殺意の五線紙の上を散歩でもするかのように戦う奴。


かたや暗黒龍(ワザリング)と同じ『龍』繋がりで、かたや太陽神(フレイア)と同じで、『素手』の戦いがメインで…まぁ、恒星君(フレイア)は扇子でも戦っていたけれどもね~。


戦闘スタイルも魂の質と量とも…

大同小異の二人がこっち来ちゃったよ!


これ、云うの三度目だけどもね…

世の中は大変に良く出来ていますよ。

もう、それしか言葉、浮かばないよ。

何これ、あちら側と向こう側に架かる「質量保存の法則」の橋梁(きょうりょう)でも存在するのだろうか?

そうして、この二人の第一種惑星からやって来た人間二人はその法則と橋梁を渡ってやって来たとでも云うのだろうか?





ほぉほぉ。

お互い、命を懸けた死線の世界でこそ、「本当に生きていると言う実感」を伴えたので、定期的に待ち合わせて殺し合いに明け暮れて、或る日、ついにハッスルし過ぎてしまい、相打ちで死んでしまった…と。



個性的な趣味だこと。



それで、お互いの「善/悪」比も、二人とも極端な善でも悪でも無くて、無手の老人がちょっと善寄りで、双刀(双頭)がちょっと悪寄り…となると、まぁ、これから彼等が赴くあちら側では反転して、双刀(双頭)の龍が(やや)善寄りに反転して、無手の殺意の五線紙の散歩者が(やや)悪寄りに反転するのだろうなぁ、よっぽどに変な…さっきみたいな「因果律ナックル」でも起こらない限りはね…


それにこの二人…魂を覗いてみた感じの記憶と、今現在、惑星(アルヴィス)ちゃんの魂の断片を埋め込まれているかのおじさんの状態がね、『魂通信』を使って、椅子に座って相変わらず眠りこけている惑星ちゃん本体へと届く微弱な情報波を傍受、みたいな遣り方で『盗撮・盗聴』しているんだけれどもさ、覗いて見るに…この二人のじじぃども、あの惑星で転生だか転移だかするであろう五人の内の一人

―――背の高いハンサムな彼女―――

と、何らかの縁が有るみたいだし…


面白くなってきているんじゃないかなぁ。





うん、あの人間二人組もね、

あの惑星に向かわせようか!

そうしよう!

そうしましょう!





や~、

やっぱ私って…

天才っしょ!?

素晴らしい発想力よこれ!





よっ、

さーすがっ…

クールビューティー美少女っ!

自画自賛、自画自賛。






ね、惑星ちゃん。

相変わらずぐっすりと寝ているけれども。

私の髪の毛の先っぽ、熟睡中の惑星ちゃんの鼻の穴に入れて…

コチョコチョコチョコチョ…

ムズムズムズムズ~






「ぶぇきしょい、あ゛~ちくしょうぃ~、おやじぃ~、タコキムチ早く持って来いよっ!注文したろうがっ!」






大変におやじ臭い惑星ちゃんの寝言が響き渡った…

何その夢!?

居酒屋?

居酒屋で荒れてる夢なの!?

ぷっ!


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