【side久遠&亜莉莎】彼女と彼女の二乗
二人組のエピソードが膨らみ過ぎた。
その分、残りの三人のエピソードのアイディアに詰まってます。
これから主人公と敵対する事になるのか、逆なのか、未だに書いている本人も判らない。
けれども、悪役になるかも知れない人にもきっと、人生があって、全くの悪人なんか居ないと思う。
そんなまだ量子的揺らぎみたいな狭間の存在の一人一人を掘り下げていく事は、決して悪くは出ないと、自分なりの考え。
ジャック・ヒギンズの「死に行く者への祈り」に出てきた悪役だって、何かそんな感じだったと思うんだ。
【side・鷹嘴久遠・迎岾亜莉莎】
彼女と彼女の二乗
鷹嘴 久遠と、迎岾 亜莉莎は、幼なじみである。
どちらとも女性で、共に15歳だ。
彼女と私の関係性を端的に表したとしたらば果たしてどうなるだろうか?彼女は考える、恐らくそれは「彼女と私」と云う、通り一遍の関係性では無いのであり、つまりは「彼女+私」ではなくて、恐らくはきっと、「彼女×私」なのだとこう考えており、故に、私と彼女は足し算ではなくて、掛け算な関係であるように見受けられる、と、迎岾亜莉莎はそう考えている。
更には、それだけに留まらず、私は彼女が存在する事によって私自身を二乗する事が出来て、彼女は或いは、私の存在がある事により彼女自身を二乗出来て、そうやってからお互いに掛け算をしたような関係性に、彼女にとっての私の存在は斯くありたいものだ、と、お互いの存在が己にとって、圧縮機と増幅器の機能を併せ持つ働きをしている、そんな関係性に私はなりたいのだ、と、こう思っている次第であった。
鷹嘴 久遠、幼い頃からその表情が少々乏しい面があるとは云え、活発で天衣無縫であった彼女に巻き込まれるかのように、何時も迎岾亜莉莎は、そんな彼女を中心にして回る友誼と遊戯の、二人だけの小さな世界で育った。
それと云うのも、彼女、鷹嘴久遠の不思議な魅力故であろう。
鷹嘴久遠は、少し…いや、相当に変わり者であったが、その端正な面立ちの中に、時々垣間見えるそのイノセンスなる表情や感情の流れにはどうやら、悪魔か天使かが潜んでいるのではないか、そんな風に彼女、迎岾亜莉莎は鷹嘴久遠の事について思っているのである。
例えばそれは、ある晴れた日の二人が幼稚園に入る前の午前10時頃の日差しの中で、何時もの様に「あーそぼ!」と、玄関のチャイムを鳴らした久遠と共に外へと繰り出し、普段通っている公園の途中にある場所で不意に足を止めて、久遠がその白くしなやかな陶器の指を「此処に行きたい…」と指した場所…墓地で二人で遊んでいた時の事。
今となってはそれの原因が思い出せぬ迎岾亜莉莎ではあったが、久遠が何らかの拍子に負傷していて、その陶器の先から朱い様な液体を出して、それが陽射しに照らされるのを見ていた時に。
「久遠ちゃん、指から血が出ているよ!」
そんな亜莉莎の指摘を受けて、初めて気が付いたかの様に己の白堊のごとき小さな手を見詰めて、指摘の通りに血が出ているのを不思議そうに眺めやってから…
───普通の子供であったらば、「己が出血している」それはとても痛みを伴い、同時にまた、驚きを伴うが故に、多くの場合は泣き出してしまうのではないのだろうか?しかし、彼女はそうではなかったのである、彼女は一瞬、普段の無表情なイノセンスの世界の中で、その久遠の世界のルールを一瞬だけ放棄して「にやり」と笑ったように亜莉莎には見えたのだが、その血を己の形の良いぷっくりとした下唇に塗るのだった…鮮やかな血が、元々鮮やかだった久遠のイノセンスな唇に広がった時に、亜莉莎にはそれが、そのシーンが余りにも鮮やかに記憶に焼き付けられた。
『まるで朱と赤が競っているかのようだった…』
時を経た今でも尚、それは記憶に焼き付いている光景であり、あの頃を屡々回想する亜莉莎は、その時のその映像に対して、そう思っていた、そして、それだけでは終わらずにイノセンスでエキセントリックな彼女行動は続いて行き…───
彼女は思い付いた様に、墓石の上面
──早朝の雨で水が貯まっており、蚊が産卵をしたものか、ボウフラが游いでいた。───
の表面張力が張る小さな水溜まりに、躊躇なく指を漬けて、彼女の朱色が水の中で赤色に変化して、水の中でも色が散らない様子を見るとそこから更に渦巻き型に指を走らせて、その小宇宙内に赤い彼女の痕跡のオブジェを残したのである。
『鮮やかな紅い蚊取線香みたいだった…』
午前10時の陽光を存分に受けた白い墓石の頭頂部にある水溜まり、そこに突如として発生した果敢無い芸術事象、目撃者は製作者と彼女の二人だけで、其処に鮮やかに赤い渦巻きのラインを描く製作者は、その瞬間、確かに浮き世を逸脱して美しかったのである。
そしてそうやってから、それを眺めるその横顔に、何とも言えぬ恍惚とした余韻を燻らせたかの様な、危うげな
───この子はこんな感じで次の瞬間にはこの小宇宙を恣にして、一瞬で中の生物を殺戮する悪魔か、または慈悲深く見守る天使か、そのどちらかに違いない、果たしてそれはどちらなんだろうか?───
そんなどうしようもない無防備なる色気を見せており、それを至近距離で見ていた亜莉莎はその一瞬で心を穿たれたのである。
至近距離から、放射線の如くに放射する、彼女のカリスマ性を、彼女は、それに、あっさりと、被爆してしまった。
今にして思うと
──彼女は思った──
それが私の最初の性の意識の胎動であったのかも知れず、目覚めぬまでも、寝返りを打つかの如くに、その感覚は不意に彼女の身の上に惹起して、その時に確かに彼女は、彼女の奥がゾクリと疼く様な、針で一瞬胎の奥を刺された様な痛覚を覚えたのである。
痛覚とも快楽とも感じられる、その、気配。
それに戦きながらも、それを受け入れてしまった彼女。
気が付けば少し下着を穢していた。
鷹嘴久遠、そんな危うげなバランスの上で、まるで生と死の境界で鼻歌混じりに綱渡りを楽しむ無邪気、其処にはきっと、天使か悪魔かどちらかであるに違いない、そんな彼女に、魅了されていた。
つまり、鷹嘴 久遠と、迎岾 亜莉莎の、それが関係である。
久遠が主で、亜莉莎が従の、それはあるいは思春期の中でありがちだけれども、何か特別な関係なのかもしれない。
それは少しだけ特殊であり、倒錯に溺れつつある、二人だけの小宇宙であった。
…
……
………
その日も、亜莉莎は久遠に呼び出され、近くのバーガーショップで二人だけの時間を過ごしていた。
亜莉莎は、無難に、何の特徴も飛び抜けて突兀した魅力等も無い、至って普通の高校へと進学し、久遠は所謂ところの、「特殊な学校」の特殊な学級へと進学していたのだが、二人の友誼は時間の流れに侵食される事もなく、昔の儘変わらず続いており、最近は久遠は家庭用ゲーム機にはまり、中でも「最後の幻想」シリーズに耽溺していた。
学校が終われば、寝ても覚めても、時間を忘れたかの様にゲームにのめり込み、亜莉莎はそんな久遠がのめり込む姿とゲームを客観的に眺め、それで充分に満足していた。
屡々夢中なあまり、
「時間を忘れすぎ、常軌を逸した集中力を発揮させてしまう」
そんな久遠の特性であるそれを宥めるのに亜莉莎が一役買っていて、幼なじみ故の両方の両親
───亜莉莎の方は母親のみの片親なのではあるが───
双方からの理解もあり、相互に泊まり込む事も珍しくはなかった。
ある日、久遠がポツリと呟いた。
「亜莉莎ちゃん、これ、演奏したくない?」
それは、最後の幻想のオープニング曲、主題曲である。
陽光を受けて様々な角度から様々な反射をして、その美しい色彩を留める事なく目まぐるしく色彩を変えてゆく水晶その鮮やかに美しい、言葉を失うかの様なそれを表現したかの様なハープの澄んだ音色が静寂の中で凛とした音を響かせて…
やがてそれにフルートの音色が何時の間にか然り気無く加わって、何とも幻想的な世界の扉を、その入り口を眺めているかのような心持ちへと誘うそのメロディー。
亜莉莎にも、それを演奏してみたいと云う気持ちもあり、また、久遠の言辞に対して否や等はある筈も無く。
二人は別々の学舎で、別々の吹奏楽部に入って、本格的にそのゲームのメロディーを吹奏楽部の部活の時間の合間に学び始めたのであった。
久遠は両親からハープを買い与えて貰い、それを自宅でも練習として使っていたが、亜莉莎の方は母親のみの片親と云う事もあり、経済的な事情で個人で楽器を所持する事が出来なかったのではあるが、彼女の真剣な吹奏楽に対する姿勢に好感を覚えた部の担当教員が週末に彼女にフルートを貸与する事を許可したため、二人でこれから久遠の自宅へと赴き、いざ、二人で演奏してみよう、と云うこれからの予定である。
その前に、と、二人で待ち合わせた場所がこのバーガーショップであったのだ。
…
……
………
二人が異変に気付いたのは、程なくしてからだった。
久遠の嗜好はブレない。
必ず、エビバーガーとオレンジジュースとポテトのセットを頼む。
そうして、ポテトには一切手を付けずに「亜莉莎ちゃん、食べて。」と云って手渡す。
セットの方が安くつくからである。
そうしてそれを亜莉莎は何時も内面で、聖人から直接に血と肉としての触媒の象徴、ワインとパンを受け取る心持ちで恭しく受け取るのだった。
あの日見たシーン…
下唇に縫った朱色と上唇の赤を競わせ、墓石の頭頂部の小宇宙に己の血で螺旋を描き、「光在れ」なのか「闇よ、誘え」なのかは判らないが、その日に降臨した姿を目撃して被爆した彼女の特別な存在から、それを頂くのである。
そして、亜莉莎はアップルパイとレモンティーを頼む。
或いは、照り焼きバーガー、またはフィッシュバーガー。
さながらそれは金曜の二人の礼拝である。
ルーティンワーク化している。
久遠がエビバーガーをすっかりと平らげて、無表情な満足顔を見せ
──久遠は基本的には無表情である、しかし、長年の付き合いで、亜莉莎は彼女の内面の表情のような物を感じられている様に思っており、それは或いは多分な勘違いなのかも知れないのだが。
久遠の内面は…いや、他人の内面は…いやいや、己の内面ですらも一見アナログに見えて、限り無く突き詰めて行けば、デジタルであり、量子的揺らぎですら在る様に思うのだ。
と、最近の亜莉莎は宇宙や物理について夢想したとある真夜中に久遠を考えてそう想っていた。──
お花摘みへと出て行った。
何時に無く、久遠の帰りが遅く、亜莉莎はまた久遠が、その彼女独特の感性で以って感じられる、彼女にしか表現できない一種の芸術的活動
──それは或いは、暑い刺すような日差しの中、延々と蟻の行列に思いを馳せて、ずぅーっっと、日が暮れるまで見ている事であったり、兎に角、彼女は、何か興味の対象を見付けると、時間の感覚を忘れてしまって、彼女の時間は彼女だけの物になってしまい、誰かが声を掛けるまで、それは終わらない。──
の関心の対象を見付けてしまっているのではないのか?
と、そう思い、トイレへと足を運んだのだ。
彼女は果たして、手洗いスペースの前で佇んでいる。
彼女の関心の対象をずっと見続けて、…嗚呼、矢張り彼女は芸術活動を見いだしていたのか、そう思い、彼女は彼女の肩に手を置こうと、彼女より背が高い彼女の肩に手を伸ばそうとした時に不意に彼女が魅入っている視界に視線を向けた時に…それは、亜莉莎にとっても関心が向く…いや、人間であれば、例えそれがどのような人間であったとしても感性が壊死している類の人間で無ければ誰もが関心を向けるであろう、これは。
蛍光灯の様な光度で光る、青い色の、半円形の、複雑怪奇な模様を持ったそれ。
そんな物が手洗いスペースから見た奥、個室へと向かう通路一杯にちょうど、恐らくは壁の向こう側は男子トイレがあるに違いない場所の地面から出現して居たのである。
ほぼ、綺麗な半円形。
そしてそれは、久遠が最近ずっとはまっている家庭用ゲーム機のソフト、「最期の幻想」シリーズに出てくる、「魔法陣」と云うそれと酷似していた。
亜莉莎も彼女とのお泊り会の際は、家庭用ゲーム機の世界の中でしばしば目にしているそれ、彼女は微動だにせず、若干、光度が揺らいで明るくなったり、暗くなったりしているそれを見ている。
そっと、亜莉莎は、そんな久遠の制服の袖を握る、過度な集中に陥った時の、それは彼女への処方箋である。
果たして、久遠は己を取り戻して、その芸術的活動を停止し、しかし、そんな今回の久遠は何時もと様子が違っていた。
そのアーモンドの眼に決別とした決意を漲らせて、その二日月の如く、細く端正なる両の眉の真ん中、眉間を強く結ばせて、袖を掴んだ亜莉莎を見やり、…それはイノセントな巫女の様な普段の佇まいとは明らかに一線を画していて、彼女のその様な様子に呑まれた亜莉莎は息を飲み込む。
「亜莉莎ちゃん―――この世界の事を、どう思う?私は、何だか嫌なんだ。」
不意に、袖を掴んでいた亜莉莎の手を振りほどき、逆に、亜莉莎の手を握り返すそのしなやかな陶器は、湿り気を多分に孕んでおり、その湿気にイオン化された金属があって、弱い電力が久遠の細腕から亜莉莎へと、感情と言う名の微弱で無垢な感情が伝わって来るかの様だ、彼女の彼女に出来る精一杯の握力で握りしめ返されたその汗ばんだ掌の体温に、亜莉莎は悟ってしまった、久遠は「行く気」なのだ。
亜莉莎とて、此の世界に別段、深い思い入れは無い。
嫌いと云う訳では無い。
彼女次第。
概ねは、彼女の小さな宇宙は、それによって統べられている。
久遠と云う、恒星。
その基に彼女は成り立っていた。
成り立ってきたのである。
「私は、久遠と一緒にいたい…かな。」
彼女は再び、驚く。
その言葉を聞いた途端、張り詰めていた表情を一瞬にして崩して、ちょっと泣きそうな表情になった後に、満面の笑みを、彼女が彼女に向けたからだ。
「私、此の世界、いちぬーけたっ!」
久遠はそういうと亜莉莎の手を握りしめたまま、半円の魔法陣へと入り込んだ。
「せんせぃ、さよぉーならっ!」
久遠はまるで授業が終了した後の小学生のルーチンを発する。
全員で頭を下げてお辞儀する、その儀式。
微笑んでいた。
穏やかに。
あの久遠がである。
「みなぁーさんっ、さよぉーならっ!」
小学校の時は、そのお辞儀が終わると、みんなうわぁーっと、或いは駆け足で、或いは出入り口が混むのを見越して、のんびりと、蜘蛛の子を散らすのである。
蜘蛛の子の生き様全てを見る学校などは無い。
飛び出した蜘蛛の自由だ。
久遠の儀式はそれで終わった。
満面の笑みの儘で、汗ばんだ手を亜莉莎にぎゅっと握ったまま、もう片方の白い艶やかな陶器で、久遠は亜莉莎の唇を、その外周を一回りさせてから、亜莉莎の左の頬の下…頤に指を差し込んで、まるで金魚の鰓をくすぐる様にして久遠の元に寄せてから…
久遠は、亜莉莎の唇を奪ったのだ!
亜莉莎の思考は停止してしまった。
それは長い接触であった。
亜莉莎は、その時の出来事を後になって記憶を手繰っても、正確な時間が思い出せない。
その瞬間に於いて、相対性理論が破綻をきたしたかのようである。
何処かで、小さな悲鳴が聞こえてきた。
そんな些細な事は、この際、気にならなかった。
今、二人の時間は、二人だけを主人に、二人は時間を完全に掌握していたのである。
「ずっと、知ってたから、亜莉莎ちゃんの気持ち。」
無表情に戻った久遠はそう言った。
はにかんでいる様に見えてならない。
「これからも、よろしくね。」
これだから、彼女はたまらないのだ。
亜莉莎はそう思った。
接吻はエビバーガーの香りがした。
牡丹海老の様に艶やかに光る唇に、その鮮やかな紅に。
亜莉莎はもう既に目覚めた衝動、性を疼かせた。
ぬめる様に接吻の終わりに己の舌を己の唇へをしならせて舐めた久遠のそれを見た時に、それは漏れ出た。
奥が蠢いて、蛞蝓の這う気配。
その様な中で、半円の幾何学模様はその光度を加速度的グラフを描いて二人の周りで飽和して行った…
…
……
………
眼を開くと、一面が白い空間に居た。
久遠の様子を見ると、彼女はその汗ばんだ陶器を彼女の手に繋げたまま、亜莉莎の顔をまじまじと見て、周りを見て、また、彼女を見やった。
そんな彼女らの付近に、見知らぬ人間が居た。
久遠と亜莉莎、それを抜かして、三人。
小学生だろうか?
活発そうな・・・恐らくは男の子…だろうか?
そんな子が女性に抱き付いている。
女性の方は、男の子を宥める様に、その背中をさすっている。
社会人であろうか?
随分と長身で、何と言うか、男性的な包容力のある女性であると亜莉莎は思った。
少年とその女性は、周囲を不安そうに眺めている。
少し伸ばし放題の髪の毛を掻き上げて、ずっと一方向を見入っている男子が居る。
高校生の上級生っぽい。
制服も着ていた。
この彼には見覚えがある。
バーガーショップの隅で、スマホを弄って、時々メモを走らせ、その集中力で独自の世界を形成し、只でさえ他人とは話し掛けないであろう、バーガーショップのイートスペース、そこで更に外の世界の侵入を完全に拒否して居るかのような雰囲気を醸し出していた男子に見えた。
青白い肌をしている。
やがて、高校生の上級生っぽい彼がじっと見つめているその視線の先から、誰かが近づいて来た。
社会人の…役所の職員みたいな恰好をしている長い髪をミディアムに巻いた感じの…そんな女性だった。
ゆっくりと急ぐ、と云った感じの歩様で近付いて来ると、その女性は彼等五人全員に視線を巡らせた後に、おもむろに口を開いた。
「ようこそ、おいで下さいました、転生勇者候補生の皆さま方、私わたくしあなた様方がこれから先、訪れるであろう惑星―――コルネリウス―――を管理しております、ナタリアと申します。」
間違い無い様だ。
あれは魔法陣で、そして私と久遠は、あの世界と決別したのだ。
「私、此の世界、いちぬーけたっ!」
「せんせぇー、さよぉーならっ!」
「みなぁーさんっ、さよぉーならっ!」
久遠の言葉がリフレインする。
不安は無かった。
まるで、不安の無い、それは皐月の、雪が溶けて春が香る様な色彩を伴った余韻と似ている。
つまり、これから何かが始まる気配に満ちた、あれは何と云ったか?
ウィリアム・ワーズワースの詩の一篇の気配と似通っていたのである。
ちゅ!ヽ(o´3`o)ノ(*'ω'*)ハァー!
よしよし。(。・ω・)ノ゛(゜`ω´ ゜)゜ピェー
男子( ᯣωᯣ )ジィー…
駄女神(๑ÒωÓ๑)確保っ!




