とあるメカ生体のサラマンダーが偵察とか得意だったよね、ファミコンソフトだと、敵ホイホイになってたよね。
んー。
しかし…
「転生勇者候補生」ねぇ?
胡散臭い。
何か、即座に、本能的に理解した。
《アンタ、直感やたらと鋭いのよね…前にアタシの『罰ゲーム』当ててるし…何なの?ハゲの特殊スキルか何か?アタシでも解析出来ない、高度に暗号化されたスキルなの!?》
ゼンデレ…
お前…本当は口悪いよな。
ってか本名何だよ、名乗れよっ!
余計な事を言わなかった無機質アナウンス時代が懐かしいぜ。
それはそうと…分隊、誰か、奴等の会話一部始終のやり取りを、聞いて置いてくれないか?
誰か、俺の分身、出来ればある程度時間が経っても、記憶を失わずに、要点を的確に覚えて置ける人間が良いな。
誰か居ないか?
リトマス試験紙女、自称女神ナタリア。
そいつの方はそいつの方で、優雅かつ、無駄のない動きと云う、相反するそんな要素を見事に両立させて、俺からちょっと離れた場所のデスクの向こう側から、あの五人の対面に位置して相手に座るよう促している。
五人が座った後のタイミングで、ナタリアは座った。
つまり、キャバ嬢の対応みたいなもんである。
まぁ、日本の社会的な儀礼みたいなもんなのかなぁ、格上を先に座らせて、格下こと、己は後から座る、だとか…そう言った儀礼は、現実世界での俺が恐らくは最も関心が湧かない事の一つで、では何故これを知っていたかと言ったらば、それは中学生の時に受験の為に高校へ面接に行く際に受けた教育をたまたま覚えていただけなのである。
他には、たまたま何の気なしに見ていたテレビで、
「キャバ嬢は、乾杯するときに必ず接待する対象に対して、低い位置からグラスを当てる」
と言った内容を目にして、以降、必ずその手の店に飲みに行く際には、グラスをわざとキャバ嬢よりも低い位置から当てようとする悪戯をやっていたくらいで、つまりは奴の分身体である俺も、そう言った地球の日本での社会的な儀礼とやらには、とんと頓着はしていない。
因みに、グラスをわざと下から当てようとすると、きちんとキャバ嬢教育を受けているらしき女の子は、必ずさっと、更に俺よりも下の位置にグラスを当てに来るし、きちんとしたキャバ嬢教育を受けていないらしき女の子達はそれに気が付かないで普通にキャバ嬢の持っているグラスの高さが、俺が持っているグラスの高さより高いまんまで乾杯をする。
話が少々逸れたな…
つまりは、先に相手方を座らせた自称女神ことナタリアは、アイツらに露骨に媚びて、下手に出ているのである。
俺は覚えてるぞ。
俺ん時お前、ツカツカ無造作に歩いて、先にドカッと座ったよな、あれは今思うと路傍の石扱いだった訳だ、どうでもいい存在だったんだろうさ、奴にとって、俺の存在はな。
まぁ、俺みたいな社会の末端辺りを常に漂っていたような、そんな人間はさ、そんな対応を公の場面に於いて屡々されてしまうよな、俺はその辺、一切気にしていないけれどもさ。
だが、奴等に対する態度は違ったのである。
それは恐らくは、奴にとって、彼等五人が、何らかの利益を齎す存在である、または、自分にとって、都合の良い相手である、そんな所だろうかな、そう分析して奴等を眺めている、…何方にせよ、情報は引き出しておきたい。
奴や、あの五人の…転生勇者候補生とやらか、彼等がどのような立ち位置になっているのか、今後はどうなって行くのか、それをこれからの為にも知っておいて損は無いように思うのだ。
《私や隠者、ドワーフ王は、其方からは離れられぬ様である。》
《色々と試したのじゃが…今の所は無理じゃな》
《ぅぉ!…此処は何処じゃ!?何故こうなっておる!?》
《おはなしーおはなしー》
《ききみみききみみー》
《でんごんげーむー》
《わたしはえーじぇんとぉー!》
《いしんのあらしー!》
《にんむをこなすー》
それぞれ順に、フェルディナンド王国国王、フェルディナント・ディ・ザイモス三世、フェルディナンド王国の嘗ての宮廷魔術師であり引退後に隠者となっていたカウス・フォン・ゲルファウスト、ドワーフ族の王国の国王、ザイグーヌ・ファテマハト、そして恐らくは星ぃーず三人のキッズ達の言である。
キッズ達の言は答えにはなっていないのだが…戦車の思考からようやく落ち着いたファテマハトが、例によってスキル【蛋白質の記憶】の情報の共有ですでに情報は彼の中に入っていたので、後は落ち着いて彼なりに情報を整理するだけなのであって、そしてそれをやったらしい後にようやく立ち直ったこのドワーフのおっさん、意外と子供の面倒見が良くて、星ぃーずキッズ三人達に詳しく話を聴いて辛抱強く確認を取って見て、この子達には出来ない様であるとの返答が帰って来た。
…この子たちの説明を受けて、俺が理解できるかの問題だな、子供の説明って…難しいらしいのだぜっ!
それにしても…
誰だ維新の嵐とか言った奴…
それを云うなら『以心伝心』ぢゃね?
ってか、どっからそんな言葉覚えるんだ?
俺の分身体とは違って、彼等三人+キッズはどうやら俺から離れる事が不可能となっているみたいなのだ。
スキル【蛋白質の記憶】で、再び元の状態に彼等を戻す事は可能では有るのだが…ゼンデレ、惑星女曰く…
《 あの駄女神に見抜けないなら、彼等の存在は隠して置いた方が良いに決まっているじゃない、あんた馬鹿なの?折角誤魔化したアンタの経歴と齟齬が生じるじゃない。
あと、あの「転生者認定書式Ⅰ型」って書式だけども、何だかとんでもない魔法的な介入を魂に結び付けるトラップで、相当にえげつなかったからねっ!
「相手側」の監視と、書き込むと作動するチェック術式を相手側に気取られないように成立させない偽装で誤魔化して置いたけども…それで、この「相手側」が何者なのかは判らないけれども、厄介な連中だとおもう。
流石に短時間での魔術的偽装処理の限界って事で、その小冊子の「環境循環転生コース」を選択するしか無いからねっ!
そのコースの書式のその手の術式的なクオリティーが一番粗雑だから偽装しやすいのよ。
恐らくは何らかの制約がかかって、今までみたいな自在なスキルの発動に一部制限がかかるとは思うんだけれども、仕方が無いと思って妥協しなさいよねっ! 》
だ、そうである。
いつの間にそんな術式処理を…
ゼンデレ、惑星女よ。
お前…罰ゲーム女の癖にかなりのやり手じゃね!?
《 あの駄女神が「転生者認定書式Ⅰ型」と重ねて持っていたのを覗き込んだのよ、その環境循環転生コースと、通常転移コースと…転生勇者コースの三つね。
抜きん出て、環境循環転生コースの書式がね、縛りの術式が粗雑だったのよ。
つまり、アンタ…どうでもいい存在としてあの駄女神に見定められているみたい。
あっはっは!ざまぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!
それはそうと…他の6人、人間の王様、隠者、ドワーフの王様、それと、私の妹たち三人と私自身、合計7人ね。
7人は、アンタの精神体から、あんたの世界の──地球──の単位だと、1mは任意の方向へ動けるみたい、それが限界でそれ以上は離れられないみたいだわ。
今の所、あの「駄目な」と云う形容詞が付くにしても、その女神すら気が付かないレベルに私たちの存在は「見えない」存在であるみたい。
どうも、何だかおかしな惑星管理状態よこれ、胡散臭さが私にも判って来た。
長らく惑星を管理していた私には何となく判るんだけども、アタシもたまに異世界人の転生手続きとかもやったし、でもね、アンタ、それを一瞬で「胡散臭い」って見抜いたの、あれ、どうやったの!?
やっぱあれなの?
その頭皮の無駄なテカリっぷりに何か秘密が有るのね!?
教えなさいよっ! 》
…色々助かるけども、色々とうぜぇー!
やはり、この惑星の管理の怪しさが露呈したな…
人間の王様・宮廷魔術師兼隠者・ドワーフ王・星ぃーず・惑星女…
こいつらのどれもが俺から1m以上は離れられない…
そして、あのリトマス試験紙女、駄女神、惑星コルネリウスの管理者ナタリア。
この短時間で三つのあだ名が付いたんだな、大したもんだ。
そいつは俺からは現在、ざっくりと10mは離れて例の五人とすべてが真っ白なカウンターと座席でお互いに対面座りをして話をし始めている、それをこっそりと聞き取るにはこの様な状況ではその手の役回りは必然と、俺の分身達がやるしか無いのだ。
だって、俺の分隊以外は俺から1mしか離れられないしな。
…いや、隠者だ、隠者ならなんとかならないかな?
あのおっさん、仮にも元宮廷魔術師、一線を引退してからは隠者になったけどもな、さっき、視界の魔法も使ったのだし、何かベストな集音・盗聴の魔術なんて無いもんか?
《 無理じゃな、先程はお主と一体である故に可能であったのだ。
発現魔素に距離を置く時点、つまり、相手方へと魔素を飛ばす時点でじゃが、無理じゃ。
この場所一帯に何らかの術式を霧散させる…魔素かの?
何かその様な力に満ちておる。
実は先程の視界提供の術式が成功したのも、もしかしたらば、まぐれなのかも知れんて。 》
…はい、駄目でした。
俺の分身って、所詮は俺が雛型な訳で…前頭葉皮質つまり、短期の記憶力の部分がとても残念な奴等が多いのである、一対一の人間同士のやり取りですら、覚えて置くのが結構大変なのに、恐らくは書面の契約内容だとか、文章だとか、紙にサインだとかをなぁ、それをあの異世界に来たばかりらしき五人と自称女神ナタリアの合計6人がやり取りするであろう状態に、対応出来る俺の分隊だととても無理そうで、人材が見当たらないのだ…どうしようかなぁ?
《 それならよ、俺の事務所の構成員によ、うってつけな奴が居るぜ! 》
武闘派が出てきた。
少し話を聴いてみようか。。
《 ウチの若頭補佐だよ、コイツ、法令関係だとか、契約書類関係、ばっちりでな、ホラ、主に不動産のやり取り方面なんだよ、あれは上手く引っ掛けるとでかいんだよ、金額がな。
ほら、お前、挨拶しろや。
「へい、早速、お控えなすって有難う御座んす、手前、粗忽物ゆえ、前後間違えましたる節はまっぴらご容赦願いやす、向かいましたるお兄さんにゃあ、初のお目見えと心得ますればさて…手前、生国は…」
相手方は堅気さんなんだ、んな素人さんにゃ訳の分かんねぇ俺達業界の本格的な挨拶すんな!(どかっ!)
「へぇ、すんまへん、若頭補佐やっとりやす、安田安兵衛と申しやす、以後お見知り置きを。」
んで、コイツにほら、そこの隠者さんと、惑星さんか?
二人がよ、コイツがあそこに接近するから、で、コイツに賢者さんの視界共有の魔法をかけて、二人は此処に居ながらにして、あの6人の動向や書式にかかっている魔法術式をチェックするんだ、そんで、書式自体の穴は奴に読ませてチェックする、奴は法令の穴を見抜くのが上手いからな、相手側がどのような意図を持ってどんな条件で拘束したいのか、その辺はコイツに任せて大丈夫だ、だから、隠者さんと惑星さんか、二人が魔術的なトラップだとか、縛りをチェックしてみるのはどうだ? 》
何その完璧な方法は!
お前…
本当に俺の分身なのか!?
しかし…この安田安兵衛さんか、そいつに、何らかのお前らの意識みたいなモノを魔法的な何かを使って乗せる事は可能なのか?
つまり、安田安兵衛のと云う船に、カウス・フォン・ゲルファウストと惑星女、お前ら二人が視界だけ乗船した格好でもって、その船から景色を見られる様な、そんな魔術が可能なのか?
《この、何らかの魔素かわからんが、この場所に満ちておる『力場』の介入が気になるところだがのぅ、安田安兵衛に直に接触している今であれば、こなせるだろうて。》
流石は元・宮廷魔術師だな。
《私は不可能。どうあってもアンタから1m以上は無理ね、視界や五感の共有は出来ないみたいなのよ、今のアタシは本来はシステムを運用する存在だから、それでも、他の人間との接点よりもあんたとの接点はよっぽどに強力なものになっているんだけれどもね。ほら、アンタ、惑星を丸ごと飲み込んでいるじゃない。それもあるし、『名前の無い者』ちゃんが直接、アンタに私の魂埋め込んだもんだから、道が強いのよ。私が管理している他の生命体と比べてみても。》
こっちが居ればより楽勝だったのだがなぁ。
まぁ、安田安兵衛、ゲルファウストじいさん、さっき言った魔法で『五感の乗り込み』出来るのか、ちょっと試してみ。
《ふむ。どうやら、成功したようじゃの、視界と…ヤスベエに指示を出す意志を乗せる事に成功した様じゃ…こりゃ、ヤスベエ、少し此処から離れてみよ!》
《へぇ、ご老人、わっかりやした!》
《ふむ、問題ない、成功じゃの!ほっほっほ!》
《成功だそうでごぜぇやすぜ、若旦那!》
首尾よしだな。
俺のこの一連のやり取りは、勿論、頭の中で行っており、その時間の経過はごくごく、短時間のものである。
故に、10m先の駄女神と五人の会話は殆ど進捗をみせてはいないのだ。
今軽くお互いに会釈をしつつある状況で、駄女神が会釈を済ませて、他の五人が頭を未だ下げていない状態にある。
じゃあ、早速だがな、安田安兵衛、ゲルファウストじいさんよ、二人で奴等の元に赴いて、あの連中のやり取りを聞いて来て、何か発見が無いか調べて来てくれ。
《がってん、承知致しやす!》
《ふむ、行くぞ、ヤスベエ、ハイヨォー!どぅどぅ!》
《ご老人…あっしゃ、馬や篭屋じゃありやせんぜっ!》
《ほっほっほ!なぁに、似たようなもんじゃろうて!》
そんなやり取りをして遠ざかる二人…
まぁ、大丈夫だろ。
さてと、俺はあの駄女神が俺に手渡した小冊子の中身でも見てみっかなぁ。
ハイヨーシルバー!}ヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ `Д´)ノ{ブヒヒン!




