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ただ、おっさんが夢の中でどっかに旅立ってしまう、世間的には需要が皆無なお話  作者: 加工豚(かこうとん)
【第一章】限り無く透明に近いをぢさん
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をぢさんになって自動車学校とかでさ、授業みたいなの受けるとさ…びっくりする位、眠れた経験ない?





<誰っすかって…>

<うーん、私は…>

<『誰でも無い者』としか、>

<言いようがないかなぁ…>




祭壇を見る、

天井を見る、

床を見る、

比較的近くにある柱を見る…

結果として、今の俺の挙動は第三者的な視点から見たらば、


きょろきょろ。


残念ながら、声はすれども、姿は見えず。

頭の中に響く声は、答えに成っていない答えを返す。

うん、不毛だね。




<君の現在のアバター?>

<とりあえず、表層を形作っている…>

<いわゆる処の…>

<視界と言う可視光線を>

<映像として認識する感覚器官…>

<それを用いて、今現在、>

<私が君を対象として見て認識する、>

<君を君たらしむ像を結ぶ姿形…>



<つまり、私から見た、君の見た目かな?>

<それも文字通り、『不毛』だよねー>

<髪の毛、剃ってるもんねー。>

<えっと、君の言語だと…>

<「スキンヘッド」ってやつだもんねー、あははっ!>




男の様な、女の様な。

声変わり前の児童の様な、そんな雰囲気の『声』がそう返答する。




<性別はー…知りたいのー?>




多分、表情が有ったら、ニヤニヤしてるな、こいつ。

そこはかとなく、Uzeeeeeeeee~




<此処は、君達の概念で…近い表現だったら、>

<時間の無い場所で、特異点で、>

<私は、『誰でも無い者』なんだよ。>

<うん。それで納得してもらうしかないよー>




……………Wi…Wie bitte?

この、頭の中に響く声の主、

不思議ちゃんは、何言ってんだ?




<どうやって説明すれば良いかなぁ…うーん…>

<君は…ちょっと失礼、覗くよ~>




その声が聞こえて来た瞬間…

俺の頭の中に…

何て言えばいいのかな、

脳みそに、氷水をぶっ掛けられた様な、なんか怖気が走った。

で、これ、歯医者とかで、麻酔掛けてもらっていても感じる、ぐぅりぐぅりと、色々と口ん中で施しているのが判るような感覚。

全体的に言えば、ろくなもんじゃない感覚に支配された。




<ごめんねー、入り込むのは得意なんだけど、>

<覗くのは下手なんだよ。>

<こないだも他の私みたいな>

<『誰でも無い者』仲間にねー、>

<さんざ、言われたわー、>

<やー、へこむわー。あ、でもねー、>

<でもねー、わたしは、覗くのは下手だけども、>

<対象の魂的部分へのダメージはね、>

<殆ど無いんだよ。>

<それは褒められた!えっへん!>




不快感は、スゥーっと、抜けて行く…




<なるほどねー、君は、半分の状態、>

<その、どちらかと言えば、『私たち側』の>

<存在だったんだねー、だから、>

<その存在象が曖昧模糊然(あいまいもこぜん)としていたんだねー、>

<あっ!許可無く見ちゃったねー、>

<ごめんねー、でも、このまんまだと、>

<話が進まなそうだったからさー>




こ…この野郎…




<まぁまぁ、そんな怒んないでよー、>

<私も君を理解する必要が有ったしぃー、>

<また、それは同時に、君だってそうだろ?>

<だからさ、今から、ざっくりと、>

<此処がどういう場所であるのか、>

<それを説明するからさー。興味、あるでしょー?>




イラっ!




<あんま根に持つとぉー、>

<今度は落ち着かせるためにぃー、>

<干渉ぉー、しちゃおっかな~♪>

<手をワキワキさせてねぇー♪>




…すみませんでした、自分、ちょーしこいてました。

ワタクシの我が儘で時間を取らせましたね。

あれだけは…

あればかりはご勘弁願えないでしょうか?

さぁ、現在のこの場所について、

蒙昧暗愚(もうまいあんぐ)なるこのわたくしめに、

(くらき)を開く説明を頂けますでせふか?



正直、あの寒気は嫌だ。

黒板に切りたての爪を突き立てて

引っ掻くような不快感だ。

ちきちょー、覚えとけや、ワレ、

いつか寝首かいちゃるけんのぅ!

ワシも、男じゃけぇ。

やられっぱなしは嫌じゃけぇのぅ。

首、洗って待っとれやゴルァ!




<君って…かなり、あれだよねー…>

<はぁ…ま、まぁいいや、>

<説明、行くよ~♪行くよぉ~♪>

<えっとねー、此処は、>

<君達の概念でざっくり言うとね、>

<『死の世界』であり、>

<『イメージの世界』なんだよねー。>


<それ故かな?>

<いや、正直な所ね…>

<私にも不明なんだけれどもね…>


<君は君の本体から離れた…>

<いわば、仮想の存在になっていて、>

<本体からは半ば独立した存在>

<そうなってしまっている事に対しての>

<自覚は有るかな?>

<精神体みたいになっているんだよ。>


<今の自分自身を良く観察したかな?>

<ちょっと、体とか、>

<身に纏っている服だとか。>

<透けているのが判らないかな?>







…exactly!

じゃねいわ、アホ。

ザックリし過ぎだろうが!








俺は手を翳してみる。


…確かに、確かに透けている!

(サブ)は、おれ自身が、いわば、

(メイン)の夢の中や、頭の中にしか存在しない、いわば仮想の存在である、と云う自覚は今までにもあった自覚であるし、そしてそれは今も現在進行形で認識している。


だからこそ変だと云う事に気付く。

一体これはどう云う事だろう。

今俺(サブ)は、確かに、(メイン)から切り離され、それなのに、こうして存在している…


よくよく考えて見たらば、

夢の中ではそんなには印象には残らないから気付くのが遅れたが、こうやって今、自分の姿形を見てみると、確かに、夢の中で見る(サブ)自身の姿なんて、今までは大して印象に残らない朧気な姿であった筈だった。


(メイン)は、(サブ)――今ここでこうして考えを巡らせている、今は何らかの事情により、独立した存在となってしまっている暫定的な俺――に対して、つまりは夢の中での、自分自身の姿形に大した頓着はしていなかったのだ。

そのせいなのだろうな、夢の中のこの(サブ)の姿形を結ぶ像は、かつて、こんなにも鮮明であった事は過去に前例が無い筈なんだよ。


それが、今はどうでしょう!

あら、不思議。


薄っすらと透けているとはいえ、

しっかりとした像を結んでおり、

服装だって、

現実世界の俺が普段着にしている、カーキ色の軍服である。



…うーん。

これは尋常な事じゃねーぞ!

良く良く考えてみたらば、

これは、尋常な事じゃねーぞ!

非常に薄っすらと透けているもんだから、気が付かなかった。

全裸でも無かったしな。


そう。

服を着ている!!

正直これはとても大事な事だろう。


精神体っても、別に素っ裸とかじゃないんだな。…正直、素っ裸だと救いようがないから、それに対してはホッとした。


現実世界の(メイン)が昔読んでいたファンタジー小説、ロードスの島の戦いの記録とか、そんな感じのタイトルの本の中の世界だと、

風の精霊の世界へ行った主人公の彼女的なポジションのハイエルフの子とかさ、その時は全裸だったもの。


あれは、妙齢(みょうれい)の女性がさぁ、

あーだから需要があるわけで。

俺は俺がそうだったら…


引き込もって、その晩は、

少し泣きながらシャワーを浴びると思うんだ…


もしも本当に今の状態が、(サブ)(メイン)から独立した状態だったとするならばさ、今、(メイン)の馬鹿な行動を逐一突っ込んで、多少はまともな常識を持った状態に仕上げて、社会で何とか通用するように、そんな風にする(サブ)――内面的な突っ込み役――が不在って事なんじゃないの!?


ヤバくない?

それって、かなりヤバくない?


(メイン)は…ヤバイ奴だぞ。

ほんと、はち切れんばかりのアホだからな(メイン)…今度は何やり出すか判ったもんじゃねーぞ!


馬鹿の放し飼いになるんだぞ。

それってかなりヤバくない!?


はぁ…

とても心配だが…

まぁ、連絡手段の取れないアイツよりも、今は自分の心配だよな。


(サブ)――内面的な突っ込み役――は

どういう訳だかは知らないが、

今は(メイン)から独立した。

独立、してしまった次第だよな。

それは認識しておこう。

しっかりとな。




…しかし

それにしても、だ。


今、俺に話し掛けてくる、

(メイン)とはまた違った意味で

ヤバい奴。


姿形が見えなくて

その癖どっかから脳に直接話し掛けてくるヤバい奴…

うん。


こいつぁー一体、

なぁーにをゆぅーとるだぁー?


「此処は死の世界」だとか、

「イメージ」の世界だとか、


本当に、

コイツは、何を、云ってんだ?


もっかい、突っ込んどこ。







…exactly!

じゃねいわ、アホ。

ザックリし過ぎだろうが!







<うーん、君は、もしかして、頭…>

<そんな良くない?>

<参ったなぁー、オバカチャンカー>









…はぁっ。

色々と、有った日だったなー。

ブラックホールに飲み込まれて、

変な空間で目が覚めて…

おまけに姿が見えない上に、

男か女かも判らんような、

こぉーんな姿も見えねーような、

脳みそに直接語り掛けて来る、

良く考えたらかなり不気味な、

こんな変なちんちくりんに初対面から罵倒されて…








もういい!

何か疲れたわ。

クールダウンだ。

寝るべ。

正直、やってられん!

後、スペック悪目な俺の脳みそが追い付けねー。






<君、事この期に及んで、ふて寝かい?>

<色々とびっくりだよー>

<いやいや、馬鹿は悪かったよー>




馬鹿って言う方がバカー

おたんちん、へそ噛んで死んじゃえー

うわぁーん!









<落ち着いたかぃ?んじゃ、改めて、説明するねー>








……

………



<現実世界に居る君の、所謂処の、>

<イメージ部分を司っている君なら、>

<ある程度は、>

<この説明ならば理解できるはずだ。>


<現実世界の君は、実に想像力と言うか、>

<妄想力と言うか、>

<その辺の領域が豊かな人物だ。>


<これは、並行して作業をする事が苦手な反面、>

<一つの事に集中すると、>

<どんどんと独自のイメージが浮かんできて、>

<そして、その世界をとても大切に思っている>

<そんな現実世界での君の方の資質と、>

<また、現実世界の方の君を…>

<イメージの世界の君、すなわち、今、>

<私の目の前でこうやってやり取りしている方の君だね。>

<こっちの君があっちの君を補佐しているから、>

<あっち世界の君は、大変に豊かに、>

<その想像の翼をはためかせる事が出来ている。>



<現実世界の君は、ブラックホールや、>

<宇宙について、独自の見解を持っていたね。>


<その独自の見解は、ある意味で正解であり、>

<また、ある意味で、間違いでもあるんだよ。>


<箱の中の猫が放射線によって死んでいるかも知れないし、生きているかも知れない、>


<答えは、箱を開けて見ないと、判らないって、>

<君達の世界の中で、誰だったか、>

<物理学者だったかな?>

<そんな誰かが言っていたね。>



<現実世界の方の君は、>

<『数』『メビウスの輪』『論理的ではない妄想』>

<この三つの点を結び付けて、>

<宇宙に対して、独自の答えを持っていた。>

<特にね、『数』と『論理的ではない妄想』>


<この2つの点の交点に、『メビウスの輪』をチョイスしたのは、お見事だったんじゃないかな?>


<偶然にしろ、何にしろ、>

<一つの正解の形として、>


<今、君は私とこうやって邂逅している次第なんだからさー。>


<2つの点から、3つ目の点に向けて、>

<定規でラインを引いた訳だ。>

<交点である、メビウスの輪に向けてね。>

<いや、実にお見事だよ。>



<現実世界の君は、>

<どうやらそれを、>

<その考えを他人に話すことは無かったけど、>

<随分と根拠の無い、>

<それでいて妙な類の確信を得て、>

<その考えが、本当だったら、>

<面白いなぁ、と、感じていた。>



<さぁ、答え合わせと行こう。>



<その妄想が現実になった世界…>

<その特異点が、今、此処なんだよ。>


















「くかぁー。んごごごごぉーーーー」
























<ってか、本当に寝てるーーーーーーーーー!!!!>



















( ˘ ﹃ ˘ ){スヤァ…


Σ(๑°ㅁ°๑){まぢかよ!?

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