羊(めーめー)
随分とまぁ、冗長とチュートリアル編を書いておりました。
もうすぐチュートリアル編、終了します。
閲覧されている皆様方、気長に付き合って頂いて感謝しております。(-人-)
これからも気長に付き合って頂ければ幸いです。
今度はじじぃ三人衆からの質問攻めの番だ。
俺は俺の生まれた彼等にとっては未知である地球と云う惑星について語り始める事にした。
まぁ、宇宙については未だに解明されていない部分が多く、地球はリング状である、だとか、地球の内部は空洞で…なんて、俺から見たらば荒唐無稽に思える説については、彼等には話さないでおこう、自分が信じていない説を饒舌にかつ真面目に話す情熱は俺には無い。
先ず、その説明の前に世界は丸い球状である…と云う、そこから説明せねばならなかったのだが、それに関して云えばどうもあの元宮廷魔術師だったじじぃこと、カウス・フォン・ゲルファウスト、このじぃさんは何かそう云った知識に詳しくて独自の、「世界に対する考察」を深めていたらしく、残りの二人のじじぃであるドワーフ王、ザイグーヌ・ファテマハトと国王、フェルディナント・ディ・ザイモス三世への説明の捕捉に回ってくれて助かった。
やがてうずうずと、もう我慢できないとばかりにドワーフの王様…ファテマハトが切り出す。
「そんな事よりもだ、お主が先程にあの壁に穴をぶち空けたあれはもしや…『火薬』を用いた『銃』ではないのか?であるなあれの説明をせぃ!わしはな、嘗て銃を試作兵器として開発した事が有った。お主のあれは、わしのその作り上げた製品の数段上の技術じゃ、火薬一つからして、性能が違うであろう。硝煙の匂いがまるで違うのじゃ。悔しいがのぅ…あれへの関心の矛先が収まらんのじゃ、ほれ、はよう説明いたせっ!」
恐らくは、知性的な生き物ならば、一生の内に屡々過るであろう、「この世界って何なのだろうか?」と云う問いの真理へと至る答え、その扉が今ゆるやかに開かれつつ有ると云うにも関わらず、これを聞いておいて返す刀でバッサリとこれである。
技術野郎…恐るべしであろう、目玉が爛々と輝いている…
きっと彼にとっては、「この世界って何なのだろうか?」は些末な問題に過ぎず、むしろ先程の俺隷下20両の戦車がぶっ放した火薬を用いた砲撃に対する出来事の方が優先されるべき関心事なのだろうなぁ…
俺、知ってるぞ、こういう顔をした時の技術野郎のしつこさを…けれどもさ、俺は今異世界の精神体の身体なんだよな、本体と違ってだな、説明なんか求められてもさ、そんなミリヲタ知識なんて説明出来る程には無いぞ、これは困ったなぁ…
< だぁ~いじょぉ~ぶだよぉ~、のぉ~○ぃ~太ぁ~くぅ~ん♪ で・で・で・でっででぇ~ん! 本体がスマホでしぃ~らぁ~べぇ~るぅ~♪ 地球あぁーかいぶぅー! ポカパカンッ☆ >
俺の頭の中で本体が出しゃばって来た。
この馬鹿、精神攻撃からの復活早くね?
…今地球アーカイブって言ったか!
確かに今現在、肉体を地球に縛ったまま意識だけこっちにやって来た本体は今ネット環境に有るんだろうな、アイツ、スマホ持ってるし…だとするならば確かにある意味、本体の存在を介して意識のやり取りをしたらば、それはまさに地球アーカイブ状態に有るのかも知れないな、奴がネットで全て調べれば良いのだからなぁ、これは…使えるのではないか!?
それと並行してもう一つ…調べなければならない出来事があって、俺の予想が正しければこのスキルはそう云った俺が対した相手、その間のやり取りなどに於いて何か革新的な役割を果たすスキルである可能性が高いのだ。
今まで一切使って居なかった特異点スキル【蛋白質の記憶】そう、これ、今までは一切俺以外の生物らしき生物が存在していなかったのだから試しようが無かったんだよな。
蛋白質の記憶(特異点)LV-
(有機生命体の体、及び、その残滓に触れると…)
触れると…どうなるんだよっ!その先が大事なとこだろっ!って当初思っていたこのスキルは、俺と云う精神体以外に死体も何も見当たらなかったしな、試す機会に恵まれなかった次第だよ。
今、色々とこの世界に於いて試したりなんかしてきて、多少は意識と云うかそんな物がこの世界に向いてきて和合して来ている状態の筈なんだよな…その状態で今新たに【鑑定】を使用して試してみよう。
蛋白質の記憶(特異点)LV-
(①有機生命体の体、及びその残滓に触れると、その対象が生体または、死んで間もない新鮮な肉体であった場合、スキル使用者が望めば、その生体に入り込み、その生体が死ぬまでの間、生を全うする事が可能になる。
②有機生命体の体、及びその残滓に触れると、対象となった生命体の記憶を、一瞬にして理解可能になるしまた逆に、その対象が望めばスキル使用者が持っている情報を対象へ向かって流す事も可能である。何処までの情報を流すのかは、スキル使用者の加減が可能。
③対象が望めば、対象の意識・魂・記憶──その存在を、スキル使用者の内部に収納して置く事が可能になり、その際は、被収納対象とスキル使用者の精神内部での交流等が可能になる。
元の状態へと戻す事も可能であるが、生きた生体に対しては、魂を取り込む際に魂が肉体を離れるので仮死状態となり、然るべき保護を施さなければ肉体が死ぬので注意が必要。
④収納した対象は、スキル使用者が任意の生物に触れる事で、その触れた生物へと、存在の器を移す事が可能になる。)
気になっていたスキルの謎の一端がついに解けた。
『名前の無い者』が、やたらと重要視していたスキルなのだ、気になっていて当たり前だろうが!
物凄い当たりスキル、来たぁーーー!
つまり、俺はこのじじぃ三人衆に触れる事でその存在を保護して俺の内部に収納して置く事が可能であり、また、そうやって収納したじじぃ三人衆と内部で俺の許す範囲で俺の知り得る情報を一瞬で説明できて、このじじぃ三人衆のその存在を俺が今後触れるかもしれない他の生物に移し替える事が出来るのである。
他の生物に俺が収納している別の存在─魂を移し替える事が出来るとは…これは、他の生命体への魂の部分での『乗っ取り』が可能であると云う事だろうかな、少し、使用するには倫理的なモノが必要になるのかも知れないな。
俺は例え異世界に来たのだって、最低限は自分の中でのルールは有って然るべきだと考えていて、何故ならばそうしないと俺と云う存在は無制限なる欲望や堕落の渦に忽ちの内に落下してしまい溶解してしまう事だろう、とこう思っているのだ。
俺は俺の精神が容易くそれ等に染まってしまう危うさを俺の中でずっと体験して見てきているからなぁ。
まぁあれだ、取り敢えずスキル【蛋白質の記憶】を使って、
「②有機生命体の体、及びその残滓に触れると対象となった生命体の記憶を一瞬にして理解可能になるし、また逆に、その対象が望めばスキル使用者が持っている情報を対象へ向かって流す事も可能である。何処までの情報を流すのかは、スキル使用者の加減が可能。」
この性質を利用して、
①俺の自称「地球アーカイブ」によって俺が今某動画サイトだか情報サイトだかで出しているであろう、第二次世界大戦時代のドイツ軍の戦車、パンターG型の情報をドワーフの王に流し込めるのかどうか。
②「対象となった生命体の記憶を、一瞬にして理解可能になる」性質を活かして、このドワーフ王が信頼に足るしっかりとした人物なのかどうか。
その二つを試して見ようかと思っている。
「あのさぁ、ちょっと、こういう方法が有るんだけどもさぁ。」
俺は徐に、ドワーフ王に近付き、その手を握って、特異点スキル【蛋白質の記憶】を発動させつつ、本体へと交信する。
ちょっとこのじじぃにパンターG戦車の砲撃している映像を見せる様にと俺に向けて念じつつ、更に指示を続けた…
──思えば俺の中での分隊達との「高度な情報共有」は、このスキル、【蛋白質の記憶】に依るところが大なのかも知れないよな、いくら俺の内面でも、露骨に早すぎるもの…各分隊達がそれを知り、俺の指示する内容に対しての理解が伝わる早さもさ。──
余計な知識、徹甲弾、弾芯にタングステンを用いるだとか、火薬の成分だとか、腔線だとかの説明は無しにしてくれ、こう云った兵器なんか簡単に知識なんて持ってしまわない方が良いんだ本当はな。…以上が俺が俺へと出した指示の内容である。
<りょぉ~かいしたよぉ~☆、俺くぅ~ん!>
この知識はそれを知った人間のモラルに一任されてしまう性質のものであり、もしかすると大量殺人に向かってしまうかも知れない危うい知識なのであって、今現在俺達がいるこの世界に於いて、恐らくはこの知識は最先端であるし、そういった新しい考え方、知識、そう云った物で作り上げた製品、それら一連の動きが、旧来その位置を占めていた製品をすっかりと覆滅してしまって、新しくその地位に取って代わるなんて事象は地球に於いてざらに見て来ただろう?
戦車には無線通信が必須だと確信していた無線課部隊勤務経験のあったハインツ・グデーリアン、彼が指揮した戦車部隊は、鋳造一体型の強固な装甲を持っていたフランス軍戦車が、未だに手旗指揮で鈍重な動きをしているのを尻目に、無線でやり取りして連携し、自在に戦場を疾駆して、すっかりと翻弄して覆滅してしまったよな。
アルデンヌの森を装甲部隊で突破して迂回攻撃を可能にしてしまったハインツ・グデーリアンと、マンシュタインの描いたマンシュタイン・プラン…それは旧来のシュリーフェン・プランを駆逐して、その地位の交代を促した結果となったよな。
結果的に連合軍の描いていた青写真、シュリーフェン・プランを意識した予想に対しての布陣を、予想もしなかった方向からの奇襲によってマンシュタイン・プランは席巻して、エヴァン・エマエル要塞すら無用の長物とさせてしまって大成功を納めたよな。
軽量化の極みで身軽に宙返りして、熟練したパイロットの技量も相成って旧来の戦闘機をすっかりと駆逐してしまった零式艦上戦闘機。
他にも無数に例はある。
この様なファンタジー世界に於いては、この、戦車・砲撃と云う技術は、危うい知識だろうさ、いわば、それを知っている社会の人間は、それを知らない社会の人間に対して、一方的に有利で何処までも無制限なる暴力を伴い、攻撃された側は予想外故に何らの対策さえ出来ないままで、その一方的な奇襲攻撃を受ける羽目になってしまって、延いては其処から更に延々と続く殺戮へと容易く発展してしまう事だろう。
相手だって、ただやられるだけの馬鹿の儘では居られず、必ず何時かその夥しい血の理を乗り越えて、物理的な地の利も血糊で乗り越えて来て、技術、人力、経済力を総動員して対抗して来るに違いないんだ。
それはクラウゼヴィッツなんかが述べている、無制限なる暴力の応酬へと誘う、救い難いトグルスイッチだし、夥しい血糊のドクロスイッチでもある。
そのような状態を手に入れた事を理解して、彼等が蛮行に及ぶのか及ばないのか…それは俺は知らんけどもな、兎に角、俺はそれへの引き金になってしまうなんて事は御免被りたいのだし、まだ、このドワーフのじじぃの倫理だとか、モラルだとかが一切不明だ。
安全策で行こう。
〈 りょぉーかいしたよぉー、のぉーびぃー○ぁーくぅーん☆ 〉
誰がのび○だこの野郎っ!
あとその口調もやめろっ!
ばーかっ!
「ぬぁっ!お主、この能力は一体…しかし、判ったぞ。この様な物が、先程そこな壁に風穴を穿ったのか!動く…装甲のこれは…何とも云えぬ。うむぅー。」
ドワーフ王に俺の世界の戦車、ドイツ軍のパンターG型の砲撃シーンだけを見せ、その映像を見たファテマハト…ドワーフのじじぃは一瞬で大人しくなり、どうやら思考の迷宮へと挑戦したようである。
技術野郎はこれで、数日だか、数か月だかは判らないが、大人しくなるだろうな。
そう言う性だ。
そして、このドワーフ王、ザイグーヌ・ファテマハトが、果たして過ぎたる技術と云う技術屋にとっての至宝なる叡知の一端に触れて、何か邪なる欲望が鎌首を惹起させぬか、を然り気無く読み取ってみたのだが、…結果として、このザイグーヌ・ファテマハト、ドワーフの王は、その種の物騒な野望を持たずに、
「どうやれば、私にもあれを作れるのだろうか?──自分がやってみたい・研究してみたい・作り上げてみたい」
と云った思考に終始しているのみに見受けられた。
じぃさん、立派だよ、あんたは一廉の技術屋であって、王の方の当然の義務であろう、「力」による権力の強化にあの技術を自分が用いる事に対しては、己に対して固く戒めている思考の流れまで読めたよ。
実験は成功であるし、また、このドワーフの王の人柄も信頼に足る。
「お主…今何をしたのだ?あのファテマハトが一瞬で大人しくなっておる。」
人間族の王、フェルディナント・ディ・ザイモス三世が何やら瞠目して此方を見やっている。
この王様には…そうだな。
俺が元居た地球の文化・民主主義・社会主義、その様な政治体制を軽く、ざざっと見せて見よう。
それで納得してくれる筈だ。
「では、王様にも、口頭を用いた説明よりも明確な説明を。」
王の手を握る。
これって、礼儀的にどうなんだろうなぁ?
「いや、いや、この様な国の在り方、文化…私は…これは…この上ない知識の源泉に触れたのであるな、感謝するぞ。――その、そなたの名前を聞き及んでおらん。」
ぁー。そうかー。
俺、俺の名前を名乗って居なかったな。
だがなぁ、名前を名乗るのは…うーん。
因みに、この人間族の王、フェルディナント・ディ・ザイモス三世もまともな思考の持ち主…いや、どちらかと云ったらば「王らしからぬ王」なのだろうな、二人とも。
まともな「王らしき王」であるならば、目の前に現れた新しい叡知…兵器や政治体制の知識を、その己の権力の強化へと活かす筈なのであって、この二人がかなり風変わりなのだろうさ。
しかし…名前なぁ…参ったなぁ。。。
「王さまさぁ、うーんと、事情が有って本当の名前は名乗れないんだよな。名乗ろうとするとさ、何か不可思議な力が働いて、名乗れないみたいなんだ。多分、こうやって手を触れて伝えようとしても――」
そう、今現在、俺は地球にいる俺の名前を発音出来ないのだ…俺が地球の俺の名前を名乗ろうとすると、うまく言葉に出来なくなっていて、別に滑舌が悪いわけでは無くて、その俺の名前を発音しようとしても、それができない…何て言えば良いのか、それを言おうとすると、頭の中に霞がかかったみたいになって、言えなくなっているのである。
だから、王様に直接、蛋白質の記憶の力を使って俺の名前の情報を流し込もうとする…しかし、何かに弾かれる感覚が有って、それは叶わなかった事を悟る。
まぁ、正直、自分の名前を名乗れない事はどうでもいーや。
それよりも、今後、名前が無いと不便じゃないのかな、どうしようか?
と思い、
個体名称、ヲヂサン…
ヲヂサン…
wodisan…
ウォーディセン だとか、どうだろうかな?
王の手に触れたまま、ウォーディセンの部分だけが相手に伝わった。
「ふむ…此方の世界では、そなたはウォーディセンを名乗るか。では、僭越とは思うが、私に姓を授ける事を認めてはくれまいか?なぁに、これは臣下に対して授ける家の家名とは違う。そうだな、この様な面白き出会いに対して、お主と私との、それに対しての、私のささやかな感謝の気持ちの現れであり、私がそなたに名を授けたとて、私に対しての忠誠を誓う必要の無いモノだ。『ウィリアム』其方にその姓を授ける。もし構わないのであれば、其方は今後、ウィリアム・ウォーディセンを名乗るが良い。」
…何かその場のノリで、名前が決まっちゃった。
まぁ、そんな名前も良いんじゃないだろうかなぁ。
何時までも名無しのゴンベイちゃんではいられまいて。
「お主ならば、或いは…また惑星を巡る事も出来ようなぁ。」
何か国王とドワーフ王の二巨頭に挟まれ、いまいちその存在感が乏しいカウス・フォン・ゲルファウスト、元宮廷魔術師であり、フェルディナント・ディ・ザイモス三世に遣えて居て、引退後は気楽なる隠遁生活を謳歌していたこのじじぃが、ぽそりと、物寂し気に呟く。
「此の世界は、終末が近いのじゃ。ワシはそれを察しておった。故に、何とかそれから、生き物達を救う術はあるまいか、と、国に尽くした後にな、その術を探っておった。この世界は、お主の言葉で言ったらば、この─惑星─はもう終末なのじゃよ。陽の神様、お主の言葉を借りたらば、─恒星─じゃな、あの陽の神フレイア様は、もう余命幾ばくも無いのじゃ。」
さらりと今のこのタイミングで何重要な事云ってんだ、このじじぃは…それは…あれか?恒星としての寿命が近いってか!?
何かこの惑星の太陽はやたらと赤く、やたらと大きく、そして昼間であっても、夕方の如く赤い光を発するなぁ、大気が分厚いのかなぁ、または、あの恒星自体の質量が重くて、重力赤方偏移でも起こっているのかと、思っていたが…もしかして、あの恒星が赤色巨星となった頃合いに、この惑星の環境が生物にとってちょうど良い具合の気温になっていって…ってパターンなのかな?
だから、文明としてこれから発展するぞ…と云うタイミングで、赤色巨星は挙動が不安定であるから、そのようなリスクに苛まれてしまった、とかなのかな?
「ワシの考察が正しければ、近い内にのぅ、陽の神フレイア様─恒星─だったか、あのお方は爆発するのじゃ。そうして、この世界も─惑星─じゃったかな。それと共に恐らくは終末を迎える。…現在のあのフレイア様の光は、少し特殊になっておって、精神体になったワシらですら、その存在を蝕むからのぅ。こうして籠って何か…何か解決策は無いものか、と毎日考察に暮れておったのだが、その進捗は牛歩の如しでのぅ、一歩進み、一歩戻り、三歩進んでは、二歩戻り…その様な繰り返しの日々を過ごしておったわい。」
な、な…ナンダッテー!!
それを早く云いやがれっ!!
俺、ずぅーっと、此処何ヵ月も、無心に外で色々とやっていたんですがねぇ、じじぃ、大切な事は早く言えよー、もぉー!
俺は改めて、自身の体を見てみた…
以前より薄くなっとる!!
どうしよう…
このままこの惑星に居たらば…ヤバイぞ。
これ以上薄くなったら、俺、あれじゃん。
村上龍さんじゃないけども、限り無く透明に近いをぢさんになっちまうじゃないか!?
挙句の果てには、存在が消えちまうよ!
ってか、話を聞くにさぁ、あの恒星、超新星爆発一歩手前っぽいらしく、やっぱ「ヤバイかもっ」て、当初この惑星に来て初めて見た、この惑星から見たあの恒星の印象は気のせいでは無くて、赤色矮性なのか赤色巨星なのかの謎は解決しましたよ。
あれは赤色巨星と云う奴でした!
ヤバイな。
真剣に考えよう。
この惑星を出る方法。
そんな事を考えていたタイミングではあるのだが…悪夢とは、それがそれと気付かぬ内にその空気を回りに侵食させ、雰囲気をがらりと変えており、その悪夢に包囲された対象がそれと知った時には既に手遅れな状態となっている事がしばしば世の中には散見されている様に思うのだ。
今の状態がまさにそれだろうな。
パンターGがこの空間と外とを繋いだ細い穴──そこからほんのりと漏れていた外の陽光、真っ赤な、血のような赤い赤方偏移の光が…明らかに強くなっていた。
例えるなら、アナログアンプで音楽を再生していた昭和の頃のオーディオ機器。
あの、丸いメタリックなボリューム調整つまみ。
今まさに、あれをゆっくりひねった感じに、音が次第にでかく耳障りになっていく様に…いや、もはや既に耳障となっている様相だろう。
即ち、眩しいではすまされないレベルの目障りな、真っ赤な暴力が飽和して、空洞内部へすら──か細い外界への道を通ってすらその蔓の触手を貪欲と伸ばして、遺憾無くそのカロリーでもって、煌々(こうこう)とした昼間の如く、空洞内部を遍く照らし出していた。
狂った血の様な赤。
真夏の夕陽のクリムゾン…
音は、光より到達が遥かに遅い。
これから何分かかって音と衝撃波が到達するであろうか?
超新星爆発の衝撃波は、何分後だろうか…
恐らく、我々がそれを五体満足にて、天真爛漫と眺める事は叶わないのである。
「お前ら、説明は後だ、取り敢えず俺の手を握れ!──疾くだっ!バカヤロー!急げっ!」
Ꮚ•ꈊ•Ꮚ{命名!
この惑星の文化に於いては、姓・身分・名前のシステム。
つまり、主人公はウィリアム(姓)・ウォーディセン(名)
となりました。
ウィリアムをぢさん。




