3爺形態(さんじーけいたい)
立ち上るモワァーっとした煙と、それと同時に漂ってきた焦げた硝煙の匂い。
真っ白で何も見えない。
俺は今、本体とその隷下の装甲集団が派手にやらかした場所に来ている…
…いや、ちょっと待て!?
何故に火薬の匂いがするのか!?
あれは、俺が新たに呼ぼうとしたらばやって来た俺が、恐らくは相互に緊密にリンクしているであるから可能である、俺の魔素を利用して編み出した魔法的な存在だった筈だぞっ、現に俺には奴の頭が想像していた筈の戦車なぞ見えていない。
おいっ、分隊、俺の戦車が見えっか?
「うーん…見えないよ?」
と、野球少年の分隊。
「…見えねーな、ってか、戦車かぁ…俺の事務所にゃーダンプまでしかねーよなぁ、何れ俺も戦車を手に入れて武装力を…」
と、ヤクザの分隊。
「いやぁ~ん⭐️そ・ん・な・おーきなもの入らな…なぁ~んちゃって、みえないわぁ~ん⭐️」
と、オカマ野郎の分隊。
「…あれじゃない?理屈はどうであれさ、敵からは物理的な攻撃を受けない一方、こちらは、魔素を物質に変えられるって事はだよ、一方的に物質的な存在に対して攻撃可能って事だよね、これはさぁ。」
と、引き籠もりの分隊。
そして…
「俺の存在がさぁ、現実世界の存在だから、結果が現実に則したのかもな…今回の場合、戦車が反撃を受けなかったから、結果を必要とせずに物質化しなかった、しかし、『戦車の徹甲弾が命中した対象』に対しては結果が必要だったから、お前から借りた魔素が物質化した…なんて、仮説を立ててみるよ。」
くっ!
俺、馬鹿の癖に何か俺も腑に落ちる様な仮説を…
ピコーン!
<個体名称、ヲヂサンのスキル【ゲシュタルト思考】の…(略 >
<個体名称、ヲヂサンに新たなスキル【魔素物質化(特異点)】が発現しました! >
しかも、何だか正解っぽいぞそれ!
更に何か新しいスキルが発現している。
このスキル…ダークエネルギーとリンクして物凄い魔力を持っている俺にはチート過ぎるスキルなんじゃないのか!?
何だか凄くなってきたなぁ、おいっ!
…
……
俺は今、本体とその隷下の装甲集団が派手にやらかした場所に来ている…
20両の戦車が一斉にぶっ放した徹甲弾、その集束した着弾点に、である。
野球少年が投擲を行い、回転の向こう側に至る際に、大きな半円形状のクレーターをほぼ垂直に切り立った崖の岩肌に穿ち、更に先程俺が分隊を呼び出そうとしたら出てきた俺の、奴が投げた野球少年のそれと寸分違わぬ投擲を受けて更に深さが倍になり、そして今その場所は、第二次世界大戦時代に存在していたドイツ陸軍の戦車20両の徹甲弾の集中砲火により、とどめの一撃とばかりに、そのクレーターの奥行きをより深く、収斂させた牙によって改めて穿たれ、今はもうもうたる硝煙に苛まれてしまって奥行きが見えない程の洞となっている。
しかしこれ…容赦なくぶっ放したなぁ。
この火力、一体何号戦車だ?
「機動性にも優れて火力もある5号に決まってんじゃん~」
「赤外線暗視機能装置つきだよっ!」
5号戦車・パンターG型か。
こだわっている。
これで夜間も攻撃可能だというわけだ。
硝煙により、相変わらず、奥が見えない…
しかし、先程言った俺の偵察結果。
生体反応は無いけれども、精神体の存在が有ると云う。
…良く考えてみ?
その精神体がだぞ、もしも知的な存在であったとしたらば、いきなりこんな野蛮な攻撃を加えて来た相手に、一体、どのような反応を返すものか。
取り敢えず、お前は食らっとけ!
精神攻撃っ!
ふんっ!
「ぎゃぁー!」
ふんっ!
「のわぁー!」
ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!
「ブッシュ!」
「ベロッキョ!」
「ヘップバーン!」
「ドビッシィー!」
奴は大人しくなった。
よっしぁ。
今日はこの位にしといたろ。
俺は取り敢えず、当たり障りのない、無難な選択に気を使って、洞の奥へ声を掛ける。
「おーい、誰か居ないかー?生きている人間ではない、精神体の存在を感じたから、そこへ行くために壁を爆破したんだが…もしかしたらば、驚かせてしまったのかー?そうであったなら、申し訳ないなー。」
これであの本体のフォローになれば良いんだけれどもな。
あの分隊――俺分隊――の隷下戦車長20名を呼び出して、お前らの上司の暴走を良く引き留めろ、と念を押して置こう。
「…貴軍等に、敵意が無い事は判った。先ずは此方に来られよ。」
返事があった。
どうやら知的生命体で間違いないだろう。
朗々(ろうろう)たる、堂々(どうどう)たる声である。
そして、言葉遣いが古めかしい。
相応な齢を重ねた声だと思う。
で、何と無く気品みたいな物がある。
あれれ?
何で俺は異世界(?)に於いて、相手の言語を理解して居るのだろうか?
今の返答の言葉は、直接に頭の中に直接響いてくる物では無かった。
ちゃんとした、生体の声帯を響かせて、そうやって空気に振動を伝わらせて空気の波に乗ってやって来た、そんな感じの声だ。
まぁ、相手が『精神体』で有るらしいから、肉体を持った生体では無いのだろうけれどもな。
因みに、よくよく考えて見たらば、俺の方だって精神体なのに、声帯を響かせ、空気を振動させた類いの声を先程発している。
まぁ、これは此処に来る以前に、『名前の無い者』との邂逅でも俺は空気を振動させる類いの声を話していたのではあるが、だがしかし、今思えばあの場所って…そもそも空気有るのだろうかなぁ?
…あの時は色々と頭が混乱していて、事態の移り変わりの激しい展開に、こうやって冷静になって今現在の己の状態を把握出来て居なかったのだがなぁ…今こうして冷静に考えてみたら、そうなのである。
俺の派手なぶちかましに接した後でこんな思考へとスムーズに移行できる様になったって事はあれかな、俺もようやくこの異世界に慣れ始めて来たのかなぁ。
良く異世界転生の小説だとかである『頭の中で自分が云おうとした日本語が、私の知らない言語になってよどみなく声を発する不思議な感覚』なんて感覚も無かった。
ただ、自然に話しているのである。
感覚的には俺は全くの日本語で今現在話している。
そして、相手の声が、やっぱり、日本語で聞こえて来ているのだよなぁ。
何なのだろう、これは?
そして、相手の返答。
最初に俺が洞の奥に向かって言った言葉に対する、ちゃんとした返答的な答え方でもある。
つまり、相手に対しても俺が発した俺の言葉が聞こえており、また、その言葉の云わんとする事をちゃんと理解している。
(どんな異世界に行ってもさ、)
(そこに存在している現地の生物と)
(コミュニケーションを取れる力はね、)
(実は、この場所に来たら手に入るんだよねー。)
(ってか、この場所に入れる事自体、)
(その資格があるんだよねー。)
『名前の無い者』の、
その言葉を思い出す。
この言葉の真意は理解できない。
即ち、何故、そうなのか、と云う意味に於いて。
しかし、今はそれを置いておこう。
悩む時間ではない。
今は他に悩む事が目の前に転がって来ている。
そしてそれは、もしかしたらば、敵意が含まれている手榴弾なのかも知れないのである。
それは『先ずは此方に来られよ。』と云う返答に感じる、罠。
──手榴弾のピン──
中に入るのか…
これは、怖いな。
主に、あの本体のせいである。
このようなぶしつけなる先制攻撃を受けておいて敵が反撃を試みる場合、まずは相手を欺き、そして相手を地の利が無い場所に誘い込む事だと思う。
俺が穴の奥に入った瞬間に、一斉に取り囲んだ配置からの十字火線から炸裂する火力による復讐劇…
そういうのは味わいたくないな。
俺はどう応じたら良いだろうか?
そもそもに於いて、日本人は往々(おうおう)にしてその様な事態に際した対応策など考えていない。
平時に戦時のやり取りを常に考えている奴など、それはちょっと変わり者である。
バカとも云うかも知れない。
けれども、この世界、いや、いま返答を返した彼はもしや、その戦時中の意識が高くならざるを得ない、そんな剣林弾雨の世界の価値観を持っている可能性が有るのだ。
「愚かな、それこそ敵の計略よ…クックック」
「だ、騙されないぞっ!僕を殺す気なんだっ!絶対にそうだ!」
そんな感じの、所謂処の中二病、或いは被害妄想とも云えるのかも知れないそんな対応…それがもしかしたらば、そっちの警戒心の方が、あるいは未だに正体が知れぬ『彼』と云う存在に日本人である俺が対応するには相応しいのかも知れないのだ…
うーん…
あの俺(メイン=≒バカ)のせいでなぁ。
どうやら選択を狭まれたなぁ。
俺の逡巡の時間が長かったのかも知れないな。
穴の中から、声が響いてきた。
「おーい、お主、何をしておるか!はよう顔を見せに来い。わしはその、お主の岩壁を突き破った…それは魔法ではなく、『火薬』ではないのかのぅ?実に関心深いものじゃ。気になって仕方がないのじゃ。その仕組みを此方に来て説明せぃ。良かったら、実物を見せてくれんかのぅ?」
…警戒心が一気に薄らいだ。
技術野郎だ。
技術野郎が居る。
別の人物の声である。
どうやら、「精神体」は一人…一体かな、では無かったらしく、先程最初に聞いたような、一種気品と威厳が織り混ざったかのような、なんだか聞いていると背筋をピシッと伸ばしたくなる様な声では無かった。
こちらも、齢を相応に重ねた男の声だ。
少し甲高く、それでいて癪に触らない声である。
堂々としていて、媚びる事が無くて、実質豪気な雰囲気であるのに、何だか迫力の様な物を感じる声である。
しかし、その声の主はどうやら…
技術野郎。
何か新しい発見、新しい機械…
そんなものが有ったらば、取り敢えず買って来て、その動きをつぶさに観察し、分解して中身を調べて、それでは満足せずに、今度は自分で材料から何から、作って、組み立てて真似して見て、更には旧来のモノの弱点を洗い出して改良する、その一連の課程に於いて、目玉が爛々(らんらん)と輝き、その時間の流れを何よりも尊い物だと、至上だと思って生きている、何かそんな感じの人が居るのである。
昭和の日本のとある人物を連想する。
やがて、F-1の名門イギリスチームに、エンジンを供給するにまで至った、そんな会社の社長さんだ。
彼等が作り上げたターボエンジンは強すぎてしまい、やがてF-1のレギュレーションさえも変えてしまった。
そんな偉大なある日本人の社長さんみたいな精神体が…
この洞の内部に。
硝煙の幕…
それはようやく終息へ向かいつつある様だ。
…
……
洞の中に足を運ぶ。
「足を運ぶ」とは言ったが、精神体である俺だ。
既に足を使わずに、スーッと移動する事を覚えた。
…それが昨日の思い付きであった事は内緒である。
20両の戦車の主砲、そいつが打通・開設させた通路が終わり、いよいよとその本来元から存在していた空洞である──洞内部へと踏み入れた時に、不意にそれは起った。
俺の身体が、服の袖を掴みかかられた感覚の後に、宙に浮き、地面へと叩き付けられたのである!
柔道の技に似ている、それを…背の低い、がっしりした体型の筋肉質
──髭を長々と伸ばした──
の元気そうな老人、耳の形が少し尖っている、そんな老人が、そいつが出合い頭に、俺に投げ技をぶん投げて来たのである!
背中を痛打した!
超痛い!
ってか、この俺に今ダメージ通った!?
俺チート、ここ迄なのか…
「仕返しは、仕返しじゃからのぅ!はっはっは!」
髭面の、その男は悪びれも無く、此方を見てそうごちた。
ファンタジー世界のドワーフっぽいぞ。
その、少し奥で、そんな俺達を頭を抱えて眺める初老の男も居る。
さっき最初に話しかけた来たのはコイツかな?
見た目は中世ヨーロッパの、王族っぽい。
「…お主、面妖な格好をしておるのぅ。」
俺をぶん投げたちっさくて筋肉達磨の、ファンタジー世界で言ったらば、ドワーフに似たそいつが口を開いた。
眉毛を互い違いに上下させて、それは見ていて見事に『怪訝』な表情と云う形容詞を具現化させる事に成功しているように見えた。
「ファテマハト…お主は…何故にいつもそう性急で在るのか、先ずはお互いの身の上を互いで以て語り合い、相互に理解する事が肝要なのではあるまいか。」
うん。
この普通のナリをした見た目の、中世ヨーロッパのなんか身なりが高そうな人間みたいなおっちゃんの云う事こそ尤もだと思うぞ。
ファテマハト君とやら。
俺はようやくぶん投げられた痛みが引いて、立ち上がった。
派手にぶん投げられたにも関わらず、痛みだけはあり、服に瓦礫の埃が付く事も、よくよく考えて見たらば、ぶん投げられて地面に叩き付けられた際に巻き上がるであろう、粉塵も巻き起こらなかった。
これが精神体の特性なのであろうかなぁ?
「そなたは、何者であろうか?見たところ、私の大して及ばぬ知識ではあるが、実際に私が諸国へと赴いた際に見聞し、また、或いは資料を見て覚えたこの世界に於けるどの様な民族・部族・文明にも当てはまらぬその姿格好よ。」
あ、あー。
そりゃそうだわなー。
俺の見た目は、カーキ色の長袖の軍服、下は同じく、カーキ色の厚手の軍ズボンである。
どうも、このドワーフに似たじいさんと、今話している人間みたいな見た目の奴と、二人を見ていると、明らかにこの服装がこの世界の人間から見たとしたらば、『異端』に見えてしまっても、それは至極尤もな話だよな。
変だと思われて仕方がないよ、うん。
「私の名を名乗ろう、私は嘗て、この付近を治めていた人間族の王国、『フェルディナント』王国の国王、フェルディナント・ディ・ザイモス三世である。」
王様っぽい人はどうやら本当に王様だったらしい。
人間族ってこたぁー、殆(≒ほぼ)んど人間って解釈で良いだろうな。
「して、そなたを今しがた投げ飛ばした此方は、嘗てのドワーフ族を束ねていた王、ザイグーヌ・ファテマハト」
…あのじじぃも王様だったらしいよ!?
しかも、ファンタジー世界でのお約束な種族のドワーフで合っていたみたいです。
嘘から出たまことではなく、助動詞から出た正解。
「え、えーと、王様二人かなー、先ず、俺は率直に云うとな、此の世界の生き物では無いんだよな。ちょっとなんつーかこう…色々とあってさぁ、この惑星に飛ばされて来たんだよ。うん。俺が元々存在していた惑星、つまり世界は、だから、あんたらの世界とは違った文化とかがあってさぁ、なんつーか、色々と違う訳なんだよな。」
「──何と!お主、惑星を渡る術を得ていたのであるか!」
唐突に今まで聞いたことがない新しい声が響く。
そいつはどうやら洞の奥側で此方の出来事に聞き耳を立てていた様だ。
盗み聞きか、じーさん。
そう、こいつも年配である。
服装はみすぼらしく、髭と髪の毛は延び放題に延びており、それでいて、不潔感が感じられない、一種の隠遁者の気品の様なものがあり、そうしていて、その気品が取っ付きにくさにはならないような、何かそう言った不思議な老人である。
「こやつは昔は我が王国の宮廷魔術師であった、カウス・フォン・ゲルファウスト、宮廷魔術師を引退した折りに姿を隠し、どうやら山奥にて隠遁生活を謳歌していた様な風変わり者よ。」
しかしまぁ…揃いも揃ってお前ら…
じじぃ三人じゃねーかっ!
普通さぁ、こぉ…異世界転生だの、異世界転移だの云う小説とかさぁ、もっとこぉ…著者の欲望を反映したようなさぁ、または、読者ウケやら、何か売れやすさとか考えてさぁ、美少女とか入れるじゃん。
それ、一切無しかよ!
やってらんねーよ!
じじぃばっか!
俺の回り、じじぃばっかだよぉー!
なんだよもぉー。
つまんねー。
ハーレムとか無しなんだー。
…
……
………
俺達は、互いに互いの身の上を説明しあった。
嘗てはこの惑星──世界では生き物がおり、色々な話から判断するにいわゆる所の剣と魔法のファンタジー世界があったらしいのだ。
それが、今からざっくり50年前かな?
この惑星──世界の太陽、それが何か暴走して、その熱と魔素
──元宮廷魔術師のじーさんの説明が詳しくて助かった。放射線みたいなもんなのかなぁ、聞いた話を想像したイメージだと──
それが暴走したようで、地表に熱と魔素
──放射線だな、やっぱ、話を総合するに──
の影響で焼き払われて、そして、そのタイミングで一斉に現れて生き物達を次々と襲った火の使いに長けた悪魔によって滅亡してしまったらしい。
そうして、精神体になってしまった彼等三人は、嘗て宮廷魔術師であった、カウス・フォン・ゲルファウスト、引退してからは世間から隠遁して第二の人生を気楽に謳歌していたこのじーさんの手引きによって、
──どうやらこのゲルファウストじーさん、そんな混乱した世界中を巡って、独自の生命体・精神体探知の魔法を使って、生き残り(死んでも魂を残している者も含む)をこまめに全部回って回収して、この場所に避難させていた様なのである。──
悪魔の来襲や、太陽光線によるダメージや放射線的なアレコレを受けぬ様に、嘗てゲルファウストじーさんが有事の際には、と、個人の魔法を用いて作り出したこの場所、さながら、巨大避難ブンカーへと、人々を集めていたらしい。
最初の内は無数に存在した生き残り達も、軈てはその精神体を薄くさせて行き
──因みに、避難させてきたメンバー達の中で、生命体の方は皆無であったらしく、只の一人も、どの様な動物さえ、生きて避難出来た生き物は居なかったとの事であり、そして魂と云う物は、魂の力が強ければ強い程に、また、何らかの思いが強ければ強い程に、霊魂は此の世へと残留するものらしいのだと、そして助けた他の精神体には然程の強さは無かったらしく…──
輪廻の輪を潜ったであろうとの事である。
そうして、今ではこのじじぃ三人衆を残すのみとなっていたらしい。
最近ではこの三人すらも、何ら代わり映えのしない、死の世界になってしまった此の様な世界に於いて、遣り甲斐も刺激も無く、何れそう長くない内に、その己の精神体が輪廻の輪へと潜るのであろうかな?
そんな思いを抱いていた長い時間のそのタイミングで、俺(メイン≒バカ)の号令一下ぶっ放したパンターGの主砲が爆裂を起こし、籠っていた空洞へと風穴を開けたのだとさ。
その前に、野球少年の俺も同じ場所にあの必殺変化球をぶん投げ更に呼び出した俺も同じ場所へとそれをぶっ放して居たのではあるが、その衝撃はこの空洞内に無数に描かれていた術式魔方陣の一つ、衝撃・騒音吸収の効果によって、気が付かなかったらしいのだ。
ちょっと迂闊じゃないのか?
その…悪魔とやらの敵襲があって気が付かなかったら致命的だぞ?
そう思ったら、どうやら接敵を察する索敵の術式を描いた魔方陣が作動して居ない不具合が、今更俺の指摘によって判明した。
そして、衝撃・騒音吸収の術式が描かれた魔方陣、まさにその場所に於いて、あのパンターGの主砲が炸裂して、その術式もろともに、風穴を開けたらしいのである。
衝撃・騒音吸収の術式が戦車の徹甲弾により、それは爽やかに破壊された瞬間からものっっっ凄い轟音が響き渡り…
すわ!
敵襲かっ!
いよいよ以て、悪魔達が退屈し、本格的で徹底的な生き物狩りでも始めたのか?
あれだけやっておきながら!
とか思って、もう、最期に華々しく魔法をぶっ放しまくってせいぜい、可能である限りに於いて暴れまくり、それを辞世最期の大運動会にしてやろうかと覚悟した時に、俺の呼び掛けが聞こえてきたらしいのだ。
しかし、『名前の無い者』さんよぅ…
話が違わねぇですかぃっ!?
俺がその…悪魔族か?
そいつらに遭遇しなかったのってさぁ…
ひとえに、運だけだったんじゃないのかなぁ。
オリャッ!ヽ(╬•ω•)╮(°_°)!ぐぁー
あちゃー。(ノ∀`)
こっそりと|д゜)チラッ




