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ただ、おっさんが夢の中でどっかに旅立ってしまう、世間的には需要が皆無なお話  作者: 加工豚(かこうとん)
【第一章】限り無く透明に近いをぢさん
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寝る確率が高いをぢさん。








ピコーン!


「個体呼称、『ヲヂサン』が新たにスキル、

 【並列思考(特異点)】を取得しました。」


…何か…特異点スキルゲットだぜっ!


あれか?

俺脳内会議の結果か?

そう考えたらば、あの不毛な会議もやってよかったと思える。

しかしこの新スキル、どうやって使うんだろう。

ちょっと鑑定してみっか。


【並列思考(特異点)】Lv-を鑑定。

並列思考(特異点)…

精神内面に於いて、独立した存在を創造し、

本体とは別のタスクをこなす事が可能。


優秀スキルっぽいけどなー…

何かこのスキルって、確か昆虫に転生しちゃった女子高生の小説とかではすんげぇ良いスキルで、主人公が戦って戦い抜いて苦難の生存競争の末に成長してようやくと得たスキルだったよな。

あれ、(メイン)が好んで見ていたぜ。

続編が待ち遠しい…


しかしなぁ。

俺が作る独立した存在って、

恐らくはさっきの会議みたいなメンバーなんだぜ…

役に立つのかは(はなは)だ疑問だよ。

しかし、こいつは確かに有難いな。


リアルの世界の俺の社会適正が厳しかったのって、その部分が多分にあるからなー。


マルチタスクが全くダメで、一つのことにしか集中出来ないシングルコアCPU内蔵っ!

しかも、そのCPUは、自分が疑問に思ったり、興味が沸いたりする事象が起こった場合、何よりもそれを優先してしまうと言う、厄介(やっかい)なる性質を持っており、それに更にターボ効果をもたらす機能、『我が儘フォーカス機能』搭載っ!

見た目も180cm超え3桁体重だっ!

靴のサイズは30cm!

まさに傍若無人(ぼうじゃくぶじん)っ!

君も買ってみないか!

そんなをぢさん()(まま)システム!

近日発売乞(きんじつはつばいこ)御期待(ごきたい)っ!

って、そんなもん要らんわっ!


実際、これがなぁ、

(メイン)のこの資質は、(サブ)にとって今は遥か遠い異世界となってしまった地球の現実社会の中で生活するには本当に問題でな…


例えそれが社会に()ける常識的な対応を厳しく求められる場面、或いは、難しくて、理解する事に過度な集中を求められる説明・作業の最中に於いても、常に自分が気が付いた、気になったモノを第1位としてその処理を優先的に行ってしまう、そんなCPUを持ち、更に奴のそれはシングル・コアであって、多くのことを同時にはこなせないタイプなのである。

つまり、そんな場面に置かれたとしても、(メイン)は一切ブレる事無く、その説明やら社会的な常識やらを、いの一番に放り出すのである、放り出して、己が感付いた気になった出来事に対して没頭し始めちゃうのである。


(はなは)だ、致命的な欠陥(けっかん)であろう。

自分の興味が向く部分を優先させ、社会的な部分を躊躇(ちゅうちょ)なく放り出してしまうのだからなぁ。


そんな(メイン)という頭脳のCPUに、そっから更に馬鹿を加速させるかの様な作用をもたらす『我が儘フォーカス機能』これがすっげー()る意味はもうこの際才能と云っても良いと思うんだけれども、多くの場合は、社会で失敗する要因となりかねない、致命的で余計な機能なんだよなぁ、この機能はさぁ…


『我が儘フォーカス機能』これは説明すると、なんつーか、奴は、そう言う、関心が向いた対象を見付けた場合、真っ先にそれに突撃する。

猪突猛進(ちょとつもうしん)である。

ただただそれに邁進(まいしん)するのである。

馬鹿丸出しで、無防備である。


で、その時はしばしば周りの状況や、声や、視界等…情報が一切認識不可能な状態になってしまう。

最悪、すぐ側で話し掛ける人間が居たとしても、それに気が付かず、結果としてその話し掛けてくれた人間側から見たらば、(メイン)が「無視している様にみえてしまう」のである。

これは、実に問題なんだよな。





最近の若い世代なんかには、馴染みが無いのかも知れないが、例えるならば、そうだな。昔、携帯式のカセットテープの音声再生機械、Sの会社の「歩く人」って商品。

現実世界の俺も、高校生の時だとかに、通学する時にそいつを持って通学し、イヤホンで当時流行していた音楽を聴きながら通学していたもんだった。

当時は著作権やなんかも、そんなに厳しくなかったそんな大らかな時代だったな…

みんな、それぞれ自宅でCDや音楽番組等から好き好きに収録したそんな音楽を思い思いに聴いていたな。


で、お互いにCDやら、収録したカセットテープなんかをこっそりと学校に持って来ては交換しあったりしていて、時にはそんな音楽の嗜好が共通する異性と話題が深まって、仲良くなってって、そんな要素も有ったりするもんだったから、当時の思春期少年少女達にとっては結構大事な事であったのかも知れないなぁ。


まぁ、そんな中で高いオーディオ持ってて、良い音質で収録が出来ちゃう奴なんかが学校に居たらば、そいつは大変な目にあっちゃったりしてな。

みんながみんな、頼んでカセットテープと音源を持ってきて「ダビングしてくれよ~」なんて頼まれたり、タチが悪いとさ、そいつん家に直に攻め込む強者とかが居たりしてな。

カップルやなんかは、片っぽずつイヤホンで聞いてみたりしちゃってさ…俺も…いや。


学校帰りが近づくと、みんながみんな、再生機、「歩く人」に内蔵されている四角い充電池の充電が少ないもんだから、教室のプラグに充電器を差し込んで、たちまちの内にクラス中のコンセントのプラグが埋まってしまったりして。

そんで、それを解決すべく、マルチコンセントプラグとか持ってきちゃった奴とかも出現していってさぁ。

懐かしい、セピア色の思い出だよなー。





話がそれたな…

(メイン)の脳内回路『我が儘フォーカス機能』の説明だ。


現実世界の(メイン)が興味のある対象に接触して、あれこれと考察を繰り広げている間、奴に起こっている現象、『我が儘フォーカス機能』…それは「歩く人」等に搭載されていた回路である、『ノイズリダクション・システム』のスイッチ入れた状態の効果と、とても似ているのであった。


アナログで収録・再生するカセットテープという奴は、ノイズって奴が入ってしまうのだよな、「スゥーーー」って、小さく常に、音楽だけではなくてノイズをも発生させて、それが収録した音に乗って混じって耳に聞こえてしまうのである。


据え置き型のスピーカーではそんなには気にはならないのであるが、「歩く人」等のイヤホンで聞いてみると、このノイズという奴は結構目立って耳障りとなるのである。

それを改善しようと編み出された回路がノイズリダクションだと思う。


『ノイズ・リダクション機能』は、事前に音楽全体のボリュームを大きめに収録する。

特に、ノイズの甲高い「スゥーーー」の音に比較的近い高音域…周波数の高い音域を、特に大きめに収録する。

そうやって収録したカセットテープをノイズリダクションのスイッチを入れて再生すると、今度はその大きめに収録した音と一緒に、ノイズもカットしてしまう。

厳密には「低減」されているのだが…


ノイズリダクションシステムには、弱点もあって、とくにオーケストラ等で、大音響の場面からいきなり何かのパートのソロになった時等は、いきなりノイズがガツンとカットされてしまい、相対的にそのソロパート等の音の部分も籠ったように、鈍った様に感じてしまって、そんな中、ノイズだけが綺麗にカットされた音を聞いていると、何だかこう…軽い乗り物酔いにも似たような独特な酩酊感(めいていかん)・不快感があったりした。


懐かしい記憶のせいか、本来の説明に必要な以上に随分(ずいぶん)とまぁ冗長(じょうちょう)に語り過ぎた様である。

(メイン)の『我が儘フォーカス機能』それは、ノイズリダクションシステムみたいに、興味が向いた事象以外の他の余計な情報やら周囲の音声やらを、綺麗にカットしてしまうのである。

まるで、存在していないかのようになるのだ。


(リアル)の資質、「気になった事にまっしぐら」シングル・コアCPUと、この『我が儘フォーカス機能』回路は、相乗効果をもたらす。

感覚的には、この二つの相乗効果は、足し算ではなくって、掛け算なのである。

御理解頂けたであろうかな?

(リアル)の厄介さ。





それに加えて…

奴は「主語」が欠落した言葉で話しかけられた場合に極端に弱いのである。

まぁたまに、それが奇跡の様なギャグを(もたら)すんだけれどもな。


20代の頃、奴はケーキ屋で、ケーキを大量に買い込んだ。

当時の奴は、限り無くDQNに近い怖い見た目な男であった。

昔も今も変わらねーな。

ブレなく、見た目が怖い奴だ。

迷彩の軍ズボンに、金髪、長髪、カラコン…

そんな見た目と見事に背馳(はいち)したかのように、

猫とかスウィーツとか大好き男子である。


大量のケーキはでかい箱に包まれ、

奴がそれ以外にも他の場所で買い物を済ませて荷物を沢山持っていた為なのか、若いその女性の店員さんが、こう尋ねた。









































「持てますか?」








































奴が何て返答したと思う?





































「えっ!んーと…モテるって訳ではないけれどもさ、モテないって訳でもないよ。普通かなー。」







…想像してみて欲しい。







その瞬間、その女性店員さんがちょっと、「ふっ!」っと、笑う、その姿を!








(メイン)はその晩、枕に顔をうずめて悶絶しながら恥ずかしがっていた。

(サブ)がそんな状態になったアイツに対して、マウントポジョンからの一切容赦の無い無慈悲なる言葉の追撃の突っ込みを入れた事は云うまでも無いだろ?



つまり、奴はそんな馬鹿なのである。



(物理的に、物体を)持てる

(状態的に、異性に)モテる



そう言った、何種類かに捉えられる言葉を唐突に投げかけられた場合、普通の人間なら、今の状況やら、周囲の状況やら、相手の表情やらから合理的な情報を抽出して、何とか「ズレた理解」をしなくて済む。

あれも何らかの補正機能なのだろうなぁ。

だが、奴はその能力が皆無である。


なんつーか、こんな感じで、奴は割と頻繁(ひんぱん)に、相手の言葉を「拾えない」のである。

野球で言ったら、守備力Gランク位なのであるよな。

言葉って硬球(こうきゅう)を上手にグローブで捕球(ほきゅう)出来ない、捕球できる範囲も狭い、だから話しかけて来る相手や説明してくれる相手なんかをイライラさせてしまう事が多い。


「言葉のキャッチボール下手くそかっ!」である。


さっき例に挙げたケーキ屋のくだりの場合は、それがクリティカルなタイミングで、奇跡的になんかこぉ…面白い感じにはなったのではあるが、そんな奇跡は滅多には起こらない。

こんなハンデは、特に世間一般の仕事の場面に於いて、人間の社会活動に於いて、とても重い不利だったりする。


競馬で表現してみようか、その不利っぷりを。

周りは馬に乗る騎手と(おもり)の合計の重さが48kgとかでレースに参加する中で、奴だけが58kgとか背負ってレースしている感じである。

通常はそう云ったハンデは、「実力がある競走馬に掛けられる」のだが、(メイン)にはそんな実力も無いのだ。

しかも、本来ダート向きな馬(スピードが無いタイプ)が、スピードを求められる芝のレースにでも出されたかのように場違いに残念な感じなのである。


で、そんな状況にも関わらず、何とか必死にやっていても、そうした、「言葉を拾えない」感じと、「些末(さまつ)な勘違い」に翻弄(ほんろう)されてしまってすっかりと混乱してしまい、結果大変に自信を喪失し、萎縮(いしゅく)して、それが原因で変な空気になってしまい、相手の人間に失望されたり、見下されたりなんかして…そうやって奴は大体凹む。


ウエィスって云う心療内科で受けた診断結果でも、診断結果の文面には


「言葉が大変に雄弁なもんだから、初対面の相手方には『コイツは仕事を任せても大丈夫だろう』と誤解されて、けれども、それは(メイン)が興味のある事だけに詳しくて雄弁なのであって、所詮は仕事に関しては通暁(つうぎょう)している筈も無くて、当然、仕事は残念な結果になるし、そんなときに相手方が仕事を教えようとしてくれていても、『言葉を拾えない』感じで本人(リアル)がどんどん自信を失っている時に、それを客観的に見ている相手方には『コイツは手を抜いている』と、そんな誤解をされてしまいがち」


…と記述されているのである。


で、それを引き摺ってしまい、仕事以前に、人間関係が嫌になって仕事を辞めてしまう。

大体、そんな事の繰り返しの人生である。

(メイン)が仕事に関わる人間関係を嫌うのはこの為でもあるのだ。


奴は兎に角、仕事の人間関係を嫌い、交流を深める事を避ける、けれども、初対面の相手、仕事が絡まない相手と例えば温泉等でであった初対面のあらゆる人間、老若男女構わず話す事は大好きであった。


流石の俺でも、そんなアイツの姿は少しばかり気の毒に感じてしまうな。






(サブ)は、(メイン)の意識の一形態である。

故に、その社会的な能力に関して言えば、(サブ)の基本的なスペックはつまり、


「奴の能力をほぼそのまんま、踏襲(とうしゅう)した格好」


になる筈なのだよな。

つまりはこれからは、(メイン)のそんな痛々しい勘違いを後方から客観的に見ているだけで、時たま(メイン)がもたらす奇跡的に面白い勘違いとかかました時に突っ込みを入れたりするだけで良かった気楽な立場から…


…これからは(サブ)がその矢面に立たされてしまうという次第だ。

考えて見たら、それはとても厳しいなー!


そんな(サブ)に、突然降って湧いたかのようなこの特異点スキル…

使えるのかどうか、判断が難しいよな。

俺みたいなのが複数表れてタスクをこなしてもなぁー…

大して役には立たないような…


まぁ、でも、無いよりはマシだろうな。






今日は何だか思考が逸れがちだな。

さて、本題のスキル進化だ!

今はスキルの進化で【形而上思考】【ゲシュタルト思考】そのどちらを選ぶのかで、結局、(サブ)の特異な資質に似ている【ゲシュタルト思考】を選択したと云う談であって、かなり盛大に思考が逸れてしまったなぁ。


俺は俺のステータス画面を呼び出した…




<ステータスオープンが発動しました。>


【名前】ヲヂサン


【レベル】1


【種族】ガイスト(人間基)


【性別】男


【年齢】44


 生命  135/135

 魔力  287/287

 SP   76/ 76


 Str 127

 Dex  84

 Vit  61

 Agi  40

 Int  72

 Mnd  88

 Luk  72

 Cha  30


【所有スキル】


 ステータスオープン LV-

 蛋白質の記憶(特異点) LV-

 重力魔法  (特異点) LV-

 並列思考  (特異点) LV-【new】


 精神攻撃耐性    LV 3/10

 精神攻撃      LV 5/10

 考察        LV10/10→進化可能

 推論        LV10/10→進化可能

 描写        LV10/10→進化可能

 鑑定        LV 8/10



<考察・推論・描写の3つのスキルを統合して、新たなスキル、【ゲシュタルト思考】へと進化します。宜しいですか?>







はい

いいえ









はい▼

いいえ












<個体呼称、『ヲヂサン』のスキル、考察・推論・描写が統合され新たにスキル【ゲシュタルト思考】へと進化致しました>


<条件を満たしたので、個体『ヲジサン』の種族が、上位種族、『ガイスト・ロイテナント』へと進化を開始致します。>







な…何だ何だ!?

ちょっと待てよおい!

何だよそれ、不意討ちかよっ!

聞いてねーぞそんなシステムはっ!

まだ心の準備が…







<フォーマット/インストール開始まで、5、4、3…>








ガッ!

な、何か眠いぞ…

抗えないぞ…








<2、1、0、…作業を開始します、作業終了まで、地球基準重力時間で、28時間37分46秒…>









すやぁー( ˘ω˘ )















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