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ただ、おっさんが夢の中でどっかに旅立ってしまう、世間的には需要が皆無なお話  作者: 加工豚(かこうとん)
【第一章】限り無く透明に近いをぢさん
12/50

踊ったり、進まなかったりした。





寝転ぶ。

そうして目を瞑る…


(メイン)も、

此処で、今、まさに思案している(サブ)でも、

矢張り、考え込むときには、

寝転ぶのだよな。


どうやら、(メイン)の内面に(サブ)が居た様に、それと同じようにして、更に(サブ)の中にも、幾つかの俺が居るらしいのだ。


多分、(メイン)から(サブ)が分離・独立を果たした際に、(メイン)の中に元来備わっていた、(メイン)が育んできた妄想体とも云うべき、そんな感じの幾つかの疑似人格…そいつらも此方の世界へと渡って来たらしいのだよな。


(サブ)は今から、そいつらを脳内で呼び集めて、会議を開こうと思ったのだ。

今回のスキル進化の選択…【形而上思考】と【ゲシュタルト思考】どちらを選択するか、その何方(どちら)が良いのか、だ。


(サブ)には俺の考えが有って、正直言うとそちらを選択したいのだけれどもな、どうせなら、この際、こうやって話し合いの機会で以って、(メイン)が頭の中で育て上げてきた幾つかのその大変に個性が豊かなキャラクター達と、じっくりと話し合ってみても良いのではないのか?


そう思った次第だ。

だって、こんな不測(イレギュラー)の事態に(おちい)って、中々無いだろ?

ブラックホールに落ちて、(メイン)から暫定的な独立体になった幽霊みたいな精神体になった(サブ)、そしてそんな(サブ)の中には、(メイン)か昔から妄想で育み上げてきた幾つかの個性的なキャラクター達がついてきたみたいで…って、そんな展開はさぁ。


こいつ等は、(サブ)のこの異世界でのこれからの運命を共にするんだぞ、一蓮托生(いちれんたくしょう)と云っても間違いない、そんな間柄だろうさ、だったら、これから(サブ)が決断しようとしている事に口を入れて来ても、(サブ)は文句を言えない立場であろうし、また、(サブ)は彼等、幾つかの個性的なキャラクター達が、何を思い、どう考えて、どうしたいのか、それに関心があるしな。


さぁ、俺よ。

今から、俺は、俺の内面へと向かうぞ。

幾つかの俺達と会議を開くのだ。


思考のダンジョンの扉を開け。

静謐(せいひつ)を保つそのダンジョンを、

寝ぼけ眼のその間抜け面を…

戦いの太鼓で以って、叩き起こしてやるんだ。


馬引けぃ!

狼煙を上げよ!









……

………



「はぁーい、これより、記念すべき第一回、『(メイン)からの独立を果たした栄えあるそんな(サブ)、脳内会議』を初めまぁ~す!司会は私、(メイン)の中の(サブ)、突っ込み担当の俺です、よろしく~!(勇ましく宣言したは良いが、最初は矢張り、低姿勢が一番っしょっ!)」


《おい、俺、飲みもんねーのかよ、出せよ、みんな忙しい中集まってんだからよ!》


「これは、俺脳内武闘派担当の俺、失礼いたしました。ジョッキビール、カクテル、ワイン、ブランデー、揃えときましたよ。(こいつは兎に角、酒のましときゃぁ正解だよな。)」


《おぅ、それは豪勢だな、有難く頂くぜ!ごちなー。》






《俺ちゃぁ~ん、し・ば・ら・く♪(ハート)どうしたのよぉー、最近、お店来てくれないじゃないのよぉーぅ!》


「これはこれは、俺脳内ネカマ担当さん、いやぁ、色々と此処最近、立て込んでおりましてねぇ。今度同伴しましょう。またカラオケでハモって下さいよ。(このオカマ、掴みどころがないんだよなー、正直、苦手だぜっ!まぁ、カラオケでハモれるから、また今度そんな気分の時に顔つなぎの意味合いも兼ねてあの店行くかな~、何だかんだで料理上手いから、美味いもん食えるんだよな、あそこ。)」


《いやぁ~ん!うれしぃ~☆俺ちゃぁ~ん、今度デュポンの万年筆買ってよぉ~☆アフターでぇ~っ!》


(こっ…この野郎っ!デュポンの万年筆だとか…安い奴でも10万円コースだろうがっ!限定品だと最低30万とかだぞっ!殺す気かっ!)








《あの…ぼっ、僕は何故呼ばれたのかな?かっ、帰りたいんだけども。。。。。》


(リアルがどうしようも無いレベルで落ち込んだ時に出現するキャラクターだったよな、コイツは確か、常に布団に籠っていて、寝転びながら真夜中にラジオを聴いたり、詩を書いたりしている、そんな奴だが、リアルのインテリな部分って、大体はコイツが源泉だったりするから、何か良い意見を出す事に期待しよう。)







《脳内引きこもり担当の俺よぅ、んなダサいイモ引いたような下らねーこと言うなよ。ほら、お前も呑めや!》


(こいつ、その対応はあの引き籠りキャラには悪手なんじゃねーのか?ってか誰にでも気安く絡むよな、コイツ…面倒になったらオカマの店に脳内会議の場所を移してカラオケでも歌わしとくかな…)


《ちょっ…まっ…脳内武闘派さん、僕、酒は胃が痛くなっちゃうから…ンゴフッ!エゴフッ!》


(…吐きやがった、どうしよう、俺、触りたくねーぞあんなもん!)


「きゃ~!ちょっとぉ~!この子吐いてるじゃないのっ!スタッフー、スタッフー!おしぼりぃー。」


(スタッフなんていねーじゃん、所詮は俺の脳内会議で、会場はなんか、昼間の開店前の高級クラブ的な場所なんだから!昼間のそんな場所にスタッフなんかいねーし、せいぜい業者が納品に来るくらいじゃんか…あ、オカマちゃん、何だか率先して片付け始めてくれたぞ!サンキュー、助かるぜ!)





しかし…それにしても…なぁ?

俺、今後、毎回このメンバーまとめんのかよ。

今回出席しなかったメンバーとか含めたら…

判るだろ?

そこはかとなく、

…面倒くせぇーーーーーーーー!










……

………





《そんで、そいつ、その生意気な奴を放課後に校舎の裏側に呼び出したんだよな、で、俺は見物だよ、タイマンの。この呼び出しかまされたルーキー君がよ、実は柔道部やめた直後だったんだよな、たまにあるんだよ。俺らの世界だと、わりかしスポーツ崩れとかがデビューしてきて、旧来の勢力をぶちのめすだとか、そういった大番狂わせがな。で、そいつがまさにそのタイプでな、呼び出した奴が逆にボッコボコだよ。でもな、ぶちのめされた奴もな、男らしい、潔い奴だったんだよな。一週間ばかり入院した後にな、そいつに向かって逆に頭を下げてな、そうやってあっさりと丸く収まって、でもな、奴の敗因はやっぱさ…喧嘩は瞬発力なんだよな。スポーツ崩れは瞬殺しないと、長期戦になったらまずいって、だってあいつ等毎日毎日走り込みだとか筋トレだとかやってんだもん。俺らはサボって毎日毎日、タバコとか吸ってたじゃん、その時点でもう心肺機能とスタミナで負けてんだよ、んで、その上更によぉ、週末はズベ公との楽しいイベント放題でさ、ビシバシとセックスとかしてたじゃん、そうなるともう、メンタル面のハングリーさでも負けてるじゃんか…どっか生き物として、油断しちゃってんだよな、それをよー…》


《だけどもね、俺ちゃん、その子は偉かったんだよね~、そっからの切り返しが秀逸(しゅういつ)だったのよっ!もぉ~、あたしが女だったら濡れてるよね、もぉ~あぁ~ん☆早くあたしもお金ためてさぁ、「切っちゃいたい」のよねぇ~…話が飛んだわ、戻す。そんなね、そんな風にね、本来はその子の心の中だけだったものが、衆目(しゅうもく)の前に発露(はつろ)しちゃう、そんな瞬間は確かにあってね、その子の奥ゆかしさだとか、清らかさよねぇ~☆そんなね、その子の宝物みたいな輝きが見えて来て…確かに私はその時に、世の中に埋もれている美の景色を見せられたみたいに感じてね、嬉しくなった。嬉しくなって次の日までそのテンション寝て起きた後でも続いちゃってさぁ、お店が始まる前に立ち寄ったラーメン屋でね、隣に座ってた近所の野球部少年ボーイと、そのお友達にね、ラーメン奢っちゃった☆きゃはっ!『おねぇ~さんが、今日はスポンサーよっ!ちょっと、店員さん、この子たちの支払い、私に回して~☆』ってさ、それでラーメン屋の帰りに上り始めた月が奇麗でね、つまり人生って、それでいいのかもな~なんて何か悟りを開いちゃったみたいでねっ!何て言うか…そう、あのシーンは宝物よっ!これから、多分、一生、きっと、わすれない。…》


《そうやって僕は、見ていたんだ。そう、ただ見ているだけだったんだよ。何も出来なかったよ。傍観者(ぼうかんしゃ)さ、路傍(ろぼう)の石だよ。だって、こんな僕に一体何が出来る!?矮小(わいしょう)で、卑屈(ひくつ)で、冷血で、我が強くて、愚鈍(ぐどん)で、怠惰(たいだ)で、暗愚(あんぐ)で、蒙昧(もうまい)で…世の中なんて、機雷(きらい)が敷き詰められている悪意の地雷原の中さ、悪意は飽和してやがて殺意の雨となってとなって僕に降り注ぐんだ!一体僕が何をしたっていうのさ…しかし、けれども、僕だってそんな不条理を受け入れるつもりは無いからね、精一杯回避して回っている。けれどももう、避ける事に手いっぱいなんだよ!そればかりに労力のその殆どを消費してしまう、それは考えれば考える程に、ほとほと下らない事さ…だから正直言うと、何もしたくないよ!弱い者が更に弱い者を弄り倒すって、何かの音楽の歌詞に有ったけれどもね、奴等、本当に自分のすぐ一個下しか叩かなくて…でも、考えて見てよ、そんな僕達がさ、みんな一斉に、『じゃ、僕達、生きるのやーめたっ!一抜けたっ!』ってやったとしたらね、今度はその、我が物顔に今まで叩いていた立場の奴等が、途端に慌てだすのに違いないんだよ。下らないヒエラルキーのさ、底辺だけが膨大に広い、そんなピラミッドだよ。考えてみなよ。あいつ等は、あいつ等だって全体的に見たらさ、底辺側なのにさ、何を偉そうに!…》










……

………



その昔、地球のとある場所にて、とある会議が開かれた。

ウィーン会議だったかな?

各国の利害・思惑が複雑に絡み合って、会議は平行線、千日手(せんにちて)

けれども夜には贅を尽くした宴が夜な夜な開かれて華やかであり、その実、昼間にはその花達は何ら果実を結実(けつじつ)する事も無く、ただただ、夜に咲かせたその宴は、実を結ぶには、その華やかさに反してささやか過ぎた、そんな会議が有ったらしい。


(サブ)の脳内会議はあれみたいに、各国の利害関係・思惑が複雑に絡み合って進捗(しんちょく)しないのではない、みんなが勝手に、関係の無い事を主張するだけだから、その会議の中身の性質は違うのだけれどもな…

結果は同じだよ。


メッテルニッヒさん…


あんた、偉いよな。

こんな事、よく我慢できたよな。


そう。

会議は踊った。

されど、進まなかったのである。











……

………



(サブ)とは、一体何なのだろうか?

(メイン)の突っ込み役、形容詞、『~みたいだよな』を提供する存在。

そして、第三者視点である程度、冷静に現実世界での(メイン)を見られる存在…


そうやって考えるとさ、なーんか…

自ずと、見えてきた気がするよなー。


あれだよ、

銀河の未来の戦争を描いた長編アニメと長編小説。

スペースオペラでな、帝国側の、皇帝になったばかりの、イケメンの金髪男がこう言っていた。


進まない会議の中で、部下の一人の一言…

武闘派で、攻撃能力が馬鹿みたいに高く、

防御力が紙装甲な感じの部下の、

そんなそいつのとある一言を聞いた時に、

白昼夢から覚めたみたいにな、

こう言ったんだよな。


「余は考え過ぎていた。」


そうなんだよな、本来元々(がんらいもともと)は、

俺が考えて決めなきゃならない事だったし、それを、柄にも無く…何か変な会議なんか開いたりなんかしちゃったりしたもんだから、事態がややこしくなっただけなんだよ、今のこの流れは。


俺は俺らしく、役割を継続していけば良いだけだよ。

慣れないけども、良い武器持ったって、仕方が無いんだよな。

(メイン)は多分、奴だったらきっと、【形而上思考】を選択するのだろうな。

だが、(サブ)は違うぞ、(メイン)をずっと第三者視点で見て来て、「まるで~みたいだ」って、例える表現を本人へと提供してきたこの俺に、それは相応しい武器では無いんだよ。

例えそれが安くても、慣れてる武器なら、

こん棒持って叩きのめせ、だよな。


【ゲシュタルト思考】だろ、

やっぱ。

これが一番俺らしい俺だ。









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