おっさんの不思議な大冒険
こんちゃ。(˙◁˙)ノ
加工豚と言います。
三國志だったかな?
あれに出てきた武将の名前の響きと、
「書こう」って響きと重なるし、
なんとなぁーく、ね。
深く考えずに、そう名乗りましたー。
初めて小説を書いてみました。
自分でも、どうなるのか、未知数だったり、どう話を持っていくのか、だとか、こう伝えたい、だとか…
軸みたいなものが、未だしっかりと出来ていません。
試作の段階ですが、物好きな方々は、お付き合いください。
異世界転移とか、異世界転生とかのお話に近い風に持っていきたいなぁ、
とは思ってますが、
何分、初体験、凡才、軸すら固まっていない、の
三重苦ですので、自分でも、どうなるのか、分かりません。
なんかスミマセン…
吾輩は、おっさんである!
名前は……
言えるか!バカ!
現在、絶賛、無職である。
ロクデナシですなぁ……
ぃゃぁ、参った参った。
思えば、生まれてから、あれ?
自分、何か、周りの人と比べて、色々と変じゃない?
って、気が付いたのは、わりかし、早かった。
幼稚園に入る前から、何か自覚があった。
何か、親に公園に連れて行かれて、子供たちが集まって体操やなんかをやっている所に立たされ、曰く…
「混ざりなさい」
周りの見た事のない子供に、迷惑そうな目でチラ見され、自分でもどうして良いか判らずに、戸惑いと恐怖の感情しか無かった。
幼稚園に入ったら、先生の説明を聞いていても、理解出来ずに、戸惑っている内に周りはどんどんと、先生に説明されたタスクをこなしていたのである!
俺と言えば、ですよ、ちょっと説明を聞いている間に、別の考えが頭の中に過ってしまって、その考えに集中してしまっている間に…世の中は確実に動いているのであった。
だから俺からしてみれば、ちゃんと先生の言う事を理解できて実行できている、そんな周りの子供たちはみんな天才としか思えなかったな…
ほぼ毎日、先生には、
「何故、人の話を聞かないの?」
的な叱責を受けてひたすら許してくださいとしか言えない、そんな子供であった。
毎日なんかかんかでギャーギャー泣きわめいて許しを乞うていた。
何か先生が説明してみんながそれを実行する時は、ほぼ100パーセントの確率で俺は遅れてしまって、理解出来ずに動揺して、その事に恐怖し先生に叱責されて、いつの間にかそのルーティンが刷り込まれてしまいそんな叱責が恐怖だったし、自分が他人と違うのかも知れない事に恐怖していた。
兎に角、周りと自分が違うのではないか、と怯えていた。
周りと違うかも知れない、と言う事が本当に怖かった。
小学校に入ってからは何故か大丈夫になった。
それでも班決めだとかそんな類の奴は、ほぼ確実にメンバーから余されて泣いていた。
低学年の時だけだけれどもね。
けれども小学校は慣れれば繰り返し繰り返しの決まったルーティンであったし、こんな俺でもルーティンさえ、そのアプリさえダウンロード出来たら問題は起こらなくなってきた。
…ダウンロードには人並み以上に時間が掛かるのだけれどもね。
例えば、クラス替えとかがあると、クラス全員の名前を覚えるのに半年とかかかるんだよな。
まぁ、けれどもさ、毎日毎日、ほぼ決められたルーティンは自分にはあっていたのだろうな。
中学、高校と色々とあったが、
それなりに………
相変わらずクラス全員の名前とか覚えるのに半年とか掛かっていたけれどもな。
まぁ、何とか学校生活とやらは及第点だったのではないのかな?
卒業できたってことはさ。
だけど社会に出てからは、また盛大に躓いてしまった。
頼りになる人間は居なかったから、自分で稼いで自分で生きていくしか無かった。
ずっと、
「俺はきっと、普通の人間だ、上手く行かないのは、努力が足らぬからだろう」
と、思い通してやってきた。
何故か仕事が、物覚えが、人よりも悪くて疎んじられて、自分でも心が折れてしまって長く続かなかった仕事…俺にしては長く続いた仕事、色々とあった。
仕事を探す上で、フルタイムだとか正社員だとか、そんな上っ面の浅薄な言葉には興味が湧かなかった。
大体俺はそもそもが、フルタイムだとか正社員だとかが、どだいが無理なお話な類のつまりはそんな残念な人間だったのだ。
社会人と言う『仕事F-1予備予選』では、
何時でもDNQ(did not qualify=予備予選落ち)ギリギリ。
そんな自分がそもそもに於いてはなっから食えもしないであろう『正社員』と言う、そんな目の前にぶら下げられたニンジン…そんな画餅の餅に食い付く程には流石にバカでは無かった。
…いや、若い頃はアルバイトを続けていれば、何れはと、期待していた事も有った。
が、生憎とそんなチャンスは来なかったんだな。
誰からも、そして、何処からも、自分には声が掛からなかったのだからな。
仕事をして、自分に合わないと感じたらすぐにやめた仕事、合わないと感じても我慢してみた仕事…様々に場所を変えて、家賃が無料or格安の仕事を巡った。
どれくらい仕事を変えて、どれくらい引っ越して来ただろうか?
自分は、さながらジャパニーズ・ジプシーだと思う。
仕事を求めて、居心地の良い場所を求めて、自分を使ってくれる場所を求めて、ひたすらに全国を流れていた。
ジプシーじゃなかったらば、傭兵だな。
薄汚い流れ者だ。
住む場所が無かった。
住む場所に、お金なんて掛けたくなかった。
だから、家賃が無料の仕事を探した。
数年前、とある製鉄所で、自動車の部品を作っていた。
賃金は、悪くなかった。
仕事も、何とかこなせた。
今まで下に見られていた人生を、その憂さを晴らすように普通の人の1.25~1.5倍の速さを意識してどんどん仕事をこなしたし、また班長にも褒められた。
派遣社員だったけれども、正社員も見えてきた…
「俺は、晩成型だったのだろうな」
これまでの人生と比べて、順調すぎた。
トラップに気が付くべきであった…
体を酷使して壊した。
また引っ越した。
俺はこんなんばっかだな。
今度は、土木関係だった。
何だか、此処最近は薄っすらと、年を感じていた。
製鉄所でムキになって酷使した手首は、腱鞘炎と骨の変形で痛みや動作の不具合を感じていたし、朝起きたら唇がかつて無いほどに、まるで授業のプールが終わって出てくる直前の小学校の時みたいな毒々しい紫色になっていたり、生まれて初めて熱中症というものにもなった。
周りからは、
「今までそれだけ緩い環境に居たのだろう」
と言われた。
ふざけんなバーカ。
昔は隣が常に360℃はある鋼の焼き入れんとこで働いていたことだって有ったんだ。
お前に、俺の何がわかるのか?
衰える体力を感じながら、飯を作る気力も湧かないまま働いていた。
資本主義のトラップなのかな?
良い収入を俺みたいな凡人…いや、凡人以下が手に入れようをしたらばそれはそれは体力・精神力・自尊心etc…等を吸い取られて吸い取られて…
雑巾だ。
絞った雑巾、
もう水出ないよって言っても、そっから更に絞って来ようとするかのように感じるんだ。
俺が今生きているこの国には、
資源が大変に少ない。
だから製品を加工して利益を出さないと、
競争力を付けなければ…
競争力とは、つまりは安価で優秀な製品だ。
だから、労働者は安く買い叩かれて、常に競争の最先端で研磨され研磨され続けるんだ。
その存在が消えてしまうくらいまで、研磨するつもりなのだろうかなぁ?
この国には資源が少ない。
国家というものは、大抵はおおよそ考えられる手に入る全ての資源を熱源として貪欲にカロリーを確保して、そうやって初めてゆっくりと稼働し出す。
原油、金属、ガス、農産物…
この国には残念ながら資源が少ない。
だから人間をも燃料に燃やす。
そうしないと歯車だかタービンだかは回らないのだろうなぁ。
そうやってやっていかなければ国家というものは稼働しない。
資源が少ないこの国は、
燃料の大半を人間に依存している。
より効率良く、よりどん欲に、
人間を燃料にしなければ競争力で敗退する。
毎日、毎日、グロテスクな
自分にはどうしてもグロテスクにしか見えない、
そんなタービンだか歯車だかは、
今日も順調そうに稼働している。
そしてそれは、まるで消耗しきった人間からでさえもその火葬ついでに、其処からでさえカロリーを得ようとでもするかのようだ。
最近は、そう感じていた。
毎日、そして、毎日、グロテスクな火葬に処された人間達の、燃やされた灰が舞っているかのようだ。
空気はつまり、無味乾燥な空っ風で、遺灰はそうやって、吹きっさらしの風に侵食されちまって、そこから今日もどっかで地上にほたりと、今生の最期のため息みたいな、安息みたいな感情を織り混ぜたかのような、そんな束の間の輪廻を表現し、ゆったりと着地して、それから…
やがては乾いたカルシウムの涙を流すのだろう。
看取るのは、風と土のみだ。
国家に、人間は容易く代謝されてしまうようだ。
消耗し切った、消耗し切ってしまった人間は、置いていかれるのだろうか?
いや、それでさえも再処理されて燃料にされている様だ。
そうやって働けなくなってしまった人間に支給される何らかの金額は、矢張り消費に向かって指向され、経済と名を名乗って居るそんな現世のブラックホール…すなわち、無尽蔵に乾いたその貪欲なる砂地に、何処までも何処までも、いくらでも入る、決して乾きが癒えない、其処へ向かって溢されていくのだろう。
それは亡者の行進みたいな人間の業の葬列だろうかなぁ。
そこへ向かって、或いは愚直に、また或いは苦し紛れに、傲慢に、不遜に、欺瞞に満ちた笑顔で、そして、ごく希に、本当に幸福に満ちて、吸い込まれて行くのだろう。
昔、民衆の為に即身仏となった気高い僧侶らは、乾いた蛋白質の体で以って、今の此の社会の状態を見て、その業の深さを見て、果たして何を云うだろうか?
俺にはこんな風景が見えるのだ。
「かくて、蛋白質は押し黙り、カルシウムは泪を流すのだ、」
と。
これは俺の暗い心象が映した鏡だから、俺の恣意で以って作り上げたレンズで、そうやって見ているから、所詮は俺の恣意の押し付けなのだろうか?
今の世の中をそう感じているのは、果たして俺だけだろうかな?
答えは出て来ない。
だけれども、現時点で判っている事がある。
それはつまり、「逃れられそうもない。」と言う、己の中で感じるある種の諦観の存在である。
俺はどうやら、国家からは、
逃れられそうもない。
今この国は競争社会だ。
そんな中で人間たちは発熱して光を出す。
ガヤガヤガチャガチャと蟲みたいに騒いで、蟻の群れみたいに友の死骸は無視みたいに沈黙して、そんな中で人間たちは己が出した、周りが出した光にやられて目を潰すんだ。
狂騒社会で目散アルコールを痛飲したみたいに盲目のままで前後不覚に酔っ払って、感覚を鈍らせて騒いでいて、時として様々な不条理に負けて体を壊して通院したくらいにして。
やがてそんな風にしてタービンにくべられて行く…
そんな人間たちは電球であり、ゾンビみたいだ。
フィラメントの発熱に浮かされた人間たちは、眩いばかりの光ばっかり見て憧れて居る様で、その光の周波数に当てられて己が目のすっかりと焼かれて来て居る事にすら気が付かない。
街灯に我を忘れて飛び込む蛾みたいだ。
その蟲達は殆どみんながみんな、目は焼かれて白内障みたいになっちまって、そんなゾンビみたいに濁った視線で昼間っから夢を見ているかのようである。
まるで、此れだけしか選択肢が無いと言う暗示にかかってしまって、自ら熱源に寄って行って仕舞うのだろうなぁ。
イカれたイカロス此処にありき。
ゾンビにゃ、翼は、有りませんよ?
目を覚ましたく無いのかな?
無いのだろうなぁ。
惰性で動いているかの様に感じられるそんな佇まいの人間は、ゾンビであり、また、発熱する電球の狂気そのものにも、その両方ともに見えてしまって、なんだかそんな姿を客観的に見ていると大変に居たたまれなくなってきてしまうのだ。
何の事は無い、思えばつい少し前の自分もそうだったのだからなぁ。
俺、あなたたち、知ってるよ。
少しでも金額稼げる仕事を、って、そうやって仕事を探して、念願叶っていざ仕事に齧り付いたなら、今度は切歯の思いでさぁ、仕事中は閉口しっぱなしで、イライラしながら仕事をして、家に帰ったら自分の飯を自分で作る事も、そんな気力さえ無くて出来なくなってしまっていて、すっかりとくじけてしまっていて、それで、ついつい他人から「時間を買う」のだろ?
それは、食堂だったりコンビニだったりする訳だけれどもさ、それは要するに自分の時間を割かないで、手軽に他人から楽に効率的にさぁ、自分以外の時間を買う為にそれは対価を支払うものなのだろ?
実はそれが罠だとは考えた事は無いかな?
自分はこんなにも頑張っている、頑張っているんだからこの今の自分の待遇は見合って居ないのだ!
本来はもっと優遇されて然るべきなんだ、そしてそれは当然の権利なのだ!
と考えるようになり、次第に、食事は…洗濯は…風呂は…こんな風になっていって、自分はこんなにも頑張っているのだから豪遊したい、ブランド品を買いたい、あれも欲しい、これもやりたい、もっと欲しい、ずっとずっと足りない…
そんな風にして、無様な自我と云う小麦粉を、罠と云う名の、そんなベーキング・パウダーで膨らましてしまって、持て余してしまって、そんな自分の姿にも気が付かないで居るのだろ?
さて、そんなあなた方達に、是非是非今回紹介したい商品が御座いますっ!ハイー。
それが、こちらっ、何と肥大した自我のパンケーキ、特盛りで御座います!
(拍手の効果音)
どうですか、この膨らみ具合。
(驚きの声の効果音)
カロリーも超スペシャル高カロリー!ハイー。
何かとダイエットの昨今、斯様なご時世に於きまして、此の商品につきましては、些か現状の様な時代背景とは背馳してはおりますが、それは実際の食べ物であった場合で御座いますでしょう?ハイー。
当社の製品は全て、そう、100パーセント無添加で、己の内面に存在している、そんな、Hell恣意な鬼肉贖罪で出来ておりまして、実際に、物理的な体重が増える様なことは御座いませんからぁーっ!ハイー。
好きなだけ齧り付いて頂いても大丈夫っ!
存分に消費と云う欲を堪能していただけますよぉーっ…ハイー。
俺、あんたら、知ってるよ。
それは実は昨日の俺だったんだよ。
俺はそれがようやく見える様になったよ。
身体や精神を削って、犠牲にして得た、
それは視界だよ。
盲目の人間はね、多分、君たちよりも、
もっとずっと「見えて」いる筈なんだよ。
今ならばそれが判るよ。
俺はこの目を大切にするよ。
それは盲目になって、かえって良く見える様になった眼だよ。
人間は今日もたゆまず休まず代謝する。
そうやって、自らが熱を発し、
また、周りの人間からの熱に充てられて、
人間たちはまるで、電球の様だ。
電球の中に有る、
フィラメントに溜まってしまった熱みたいな、
そんな抱え難い何かを毎日毎日、
人間は放熱しなければならないのだろう。
或いは、夜の酒場で、
或いは、カラオケで、
キャバで、ホストで、バッティングセンターで、
ブランド品で、暴飲暴食で、セックスで、体液で。
白昼夢なのであろうかなぁ?
資本主義の罠、いや、人間の業なのかな?
『消費』によって、
彼等は一見すると溜まった熱を昇華しているように見える。
けれどもそんな熱源は実は人間が人間である以上は、生きている以上は、放射性物質なんかみたいに、冷やし続けなければならない物なのでは無いのだろうかな?
そんな簡単に、「はい、冷却終わり」なんて、そんな事では済まないのだと思う、きっと、もっと、根が深い放熱なのだろうと思うよ。
けれども取り敢えずは、
そうやって消費が上がるもんだから、
国家のタービンだか歯車だかは、
今日も順調に稼働しているのだろうな。
最近は国家だけではなくて、
強すぎる力を持ってしまった企業…
そんな存在もより効率的に貪欲に、
そんな歯車回しに余念が無いように感じる。
街灯に飛び込む蟲みたいで、
飼われて歯車回すハムスターみたいで、
眼散るアルコールで目を潰したみたいで、
腐った思考のゾンビみたいで、
放射性物質みたいで、
発熱する電球みたいで、
人間って、何なのだろうかな?
新しい時代に生まれた、エリートですら、
発熱しない、LEDみたいな、
そんな人間は、存在しないだろう。
一切の「非効率性」を排斥していったかのような
ロスを嫌ったかのような…
洗練された、そう。
洗練され過ぎた、
もしも、そんな人間が居たのだったらば、
俺はそれを人間とは思わないだろう。
何処かアンナチュラルで、
有機物なのに無機物みたいな佇まいをしている、
その生き物に、俺は仲間意識を持たないだろう。
普通の人間は、タングステンのフィラメントを持っていると思う。
発熱する、非効率な電球だ。
俺はどうやら、クラシックな竹の炭で出来た、
そんなフィラメントだったのだろうと思う。
その昔に、エジソンさんが発明した奴だ。
冬になったある日、とある現場で、こう、言われた。
「お前、要らねー」
その日から、精神的に持たなくなり、
仕事を辞めた。
竹の炭のフィラメントは、こうして燃え尽きた次第だ。
今までなら、『仕事が無い=住む場所が無い=致命的→』
そんな計算式が頭の中で巡って、さながら競馬で云ったらば、追い詰められた勝負根性、それを上手く用いてやけくそ末脚を爆発させて、斜行癖でフラフラしながらも、最後の直線の土壇場でぶち抜き何とか6着以内には入線…
まぁ、それは今思えば、勝負根性なんかじゃなくてさ、何て言ったかな、あれだよ、ワーキングホリックだか何だか。働かないといけないって、強迫観念だったのじゃないかなぁ?
とゆー、競馬で言うと、そんな「差し、追い込み戦術」で何とかやってこれた。
だけれども、今回は逆に直線で失速してしまった。
恐らくは何か、精神的な故障発生であった。
とにかく、何にもしたくなかった。
ちょっと迷って暇も有ったから、命の電話とやらに電話してみた。
今住んでいる市の役所にある、『自立支援』、とやらに行ってみると良いと言われた。
役所という所は、昔、困っていた頃に訳の分からない税金……
確か、住民税と言ったのか?
あれのトクソクジョウとやらが来て以来、恐怖と嫌悪の象徴でしかなかった。
頼れる人間が居なくて、失業して精神的にも辛くて、ひもじいい思いをして暮らしていた時にやってきた、ジュウミンゼイと言う名のあの恐怖の紙切れを見た時に、あの頃のまだまだケツの青いガキだった自分はその不条理さに驚いた。
「何故存在しているだけで、金取られるの!?」
役所に行ってその疑問に対して素直に質問をして話を聞いたら、若い女性が極めて早口で全く理解できない説明を捲し立て、内心でパニックになってしまった。
失業していると然るべき手続きさえ済ませればささやかながらも、「失業手当て」と言う奴が貰える事すら知らなかった。
もし多分知っていたとしても当時の自分は動かなかったろう。
失意のどん底でジュウミンゼイとやらで追い込みをかけてくる市役所なる組織を完全に「敵」認定しており、働いた次の年にやってくると言う、不条理な謎のシステムにも納得できなかった。
大体が、自分みたいな生き物は、「今」しか無いのだ。
明日には失業しているかも知れない。
その日一日を穏やかに過ごせる事が何よりで、
過去の事も、未来の事も、
まるで視界に入っていなかった。
それなのに、だ。
昨年の収入がどうたらこうたらで、
いくら払いなさい、
意味が判らなかった。
いや、今も意味が判らないでいる。
自分は借金が大嫌いだった。
何故、こんな謎のシステムによって、
去年の自分に追いかけ回されなきゃならんのだ!
労働が発生した時点で引いておけば良いのに!
明日には干されているかも知れず、
そのタイミングで、過去の自分から
追い詰められる!
挟撃の危機である。
こんなシステム大嫌いだった。
そんな思い出もあり、俺にとっては役所と言う存在は、鬼門だった。
極めて鬼門だった。
半ば以上はヤケクソで役所の自立支援へと電話した。
怖かったが、担当になったくれた各部署の方々は親身に相談に乗ってくれた。
今現在、俺が通っている地域活動支援センターで代表をやっている方が、役所の対応には、その地域によって、
「慣例・習慣・ならわし」
の様な物があって、対応に若干の「個性」が有るのだという。
どうやら俺が生まれた地域は、
とてもドライで冷たい「ならわし」だったようだ。
あそこが極端にそうだったのだろうと、
今になっては、そう思う。
今私が住む地域の私が頼った市役所は、
私が生まれ育った地域の役所とは違い、
とても何と言うか…
感謝している。
当時俺は、公園へ毎日通って壁に向かってひたすらにポンポンポンポンと軟式野球のボールを投げ込んでいた。
ストレッチをしてボールを投げ込む。
ゆっくりとした自分が主役の自分の時間のその中で、それ以外は何もしたくなかった。
何だか、社会の正常な、全うな世情一般の方々が社会活動を営んでいる、そんな昼間に於いて俺は公園で虚心にボールを投げ込んでいる…何だかとても非現実的であってこれは現実なんだろうかな?
と思い、また、そんな非現実的な夢の中に今自分の意識は在るのかも知れないなぁ、実は俺は今眠っていて、これは夢の中の世界なのかなぁ、等と、考えるにつれ、何だか今までの社会で生きて貯まってしまった精神的なプリオンだとかプリン体みたいなオリモノ、そんな不純物が自分と云うタンクの底へと静かに沈殿していって、身体や精神が一時的に健全になりつつあり、それで今無職で先が見えないような状態であるのに今の自分は妙に浮わついていて、そうして、確かに、ほんのりとした安心感に包まれているのかなぁ?
社会から隔離された不安、けれどもそれは内心、この、『失業状態』と云う物はそもそも俺が望んでいた物だから、今この状態に在って、束の間の安心を得たが、しかし、社会から離れてしまった焦りが、浮わついた感覚をもたらして、それが、その脈が少し上がるような焦りが、逆に何だか恋をした状態にでもあるかの様な心地よい感じでもあり…心の焦りが心臓を引きずってしまって、それで、内心の焦りと安心が同時に降りかかり、不健全な健康状態になったかのような心証であり、また、感覚でもあったのだ。
自分と云う存在は、もしかしたら、社会から隔離された生き方が生来の己自身の本質に沿った自然な姿なのかも知れないなぁ。
野生の馬が草地を走る様に、それが本来の自分の姿なのかもしれないなぁ、なんて、漠然と考えていた。
その公園で自立支援の役所の人間と待ち合わせて相談した。
先ずは、新しく住む場所から、探さねばならなかった。
何とか今ではすっかりとズブくなってしまった、そんな俺の心と言う競走馬(推定10歳)を、これまた、すっかりと年をとってしまった前頭葉皮質と言うジョッキーが、押して押して、またまた、グイグイと押して、仕事が切れて追い出されてしまう寮から、新しく住む場所というのを、生まれて初めて探してみた。
ずっと、家賃無料の仕事を渡り歩いて生きてきた。
賃貸と言うのを借りるのは初体験であった。
家賃は高いと思った。
だから最低金額の部屋を探した。
物件は探せばあるにはあった。
不動産会社を渡り歩いた。
保証会社の審査と言う所で悉く、撥ねられた。
良くは判らないが、今の世の中は、失業していて保障になってくれる知り合いが居なくて貯金が無い人間には住む場所は無いらしい。
空き家問題ってのが深刻なのに建設ラッシュは順調で、家賃は安くはならないでいる。
人々は収入が無くなると生きて行けないから仕事が切れるのを恐れているようだ。
俺も少し前まではそうだった。
でも、今は、正直、どうでも良くなってしまった。
保障会社が通らない、今住んでいる所は今まで働いていた土木の会社の上司が少し違法な借り方をしていたみたいで、引き続き俺が住むことは不可能みたいだったし、何よりも俺の我がままで仕事ができなくなっちゃった訳だから、これ以上は迷惑は掛けられない。
どんな不動産会社を回っても、「保証会社」の査定がネックとなり、手応えが極めて悪く、焦って貸倉庫等も調べていたのだが突破口は見当たらなかった。
此のままでは、馬群に沈んでしまうぞ…
会社が寮にしていた当時、俺が暮らしていたそのアパートには、何か、障害が有りそうな方が住んでいた。
ダメ元で、その人に相談したら、保障会社を通さない賃貸を紹介してくれた。
何時も一人で何かをブツブツ呟いているおっさんで、正直、不気味に思っていたが、相談してみると、親身になってくれた。
お礼は、タバコ一箱で良いよ、と言ってくれた。
人間と云うものは不思議だな。
全てが縁だ。
ともかく、俺の前頭葉皮質と言うジョッキーは、どうやら老骨の馬と言う自分自身を、何とか入線させる事に成功した様だ。
さぁ、引っ越しである。
荷物を運ぶ車は、以前に通っていたスナックのママがお客さんの伝手をたぐってくれて、軽自動車を貸してくれた。
芸者をやっていると言う、俺と一緒で猫が好きで、情が厚い、その分随分と惚れた男には苦労したらしいそんなママだった。
「俺は運が良いのか、悪いのか…困っていても、こうして助けてくれる人間が居るのだなぁ。」
漠然とそんな事を思っていた。
仕事をしなくなってから、スマホで宇宙の事や動物の事、科学の事なんかを魅力的かつ不思議な思いに包まれるような気分にさせてくれるサイトを見たり、チャットをずっとやったりする毎日を過ごしていた。
そう、引き込もっていたのである。
そんな中、とあるチャットの部屋で、
「荒らしさん、おいで」
とか確かそんな感じの、一風奇抜なタイトルのチャット部屋を見付けた。
本人曰くの部屋の紹介文章には、自分はメンヘラだと言う、そんな紹介文…女学生だったかな、そんな部屋を見付けた。
そこに貼ってあった画像部屋を見てみると、何だか綺麗なラピスラズリみたいなお菓子の手作り画像やら、部屋主本人の可憐そうな姿やら、体重計に乗っている画像やら(確か37kg)、そんなものが貼ってあって、俄然関心が深まった。
実は以前にもメンタル系の部屋を見るには見掛けたのだが、部屋主が男性であり、(所詮はおっさんとは言っても、その辺は男なのだなぁ。)その部屋のメンタル系の独特な雰囲気が嫌いであった。
それと比べたらば、この部屋の女学生主は、
「自分の画像」を晒すリスクを負って何か…背水の陣的なモノを感じて、潔かったし、何か緊張するけれども、思いきって入ろうと思ったのだ。
昔から、
「気のせいだ、俺は変ではない、至って普通の人間だ。」
と、気付かないふりをしていたけれども、この機会に自分をじっくりと見てみよう、そう思っていた俺は、その部屋に入ってみた。
幾分思い切って。
「すみません、あの…俺、荒らしではないんだけれども…良いかな?」
確か、こんな感じでそのチャット部屋に入った。
色々と相談に乗ってくれた。
部屋主さんは、可憐な姿とは裏腹に何と言うか…少なくとも、チャットでの気配は、とても「武闘派」であった。
(後に、「晒しサイト」と云うモノを知り、ザザッと調べた結果として、荒らしさんの一人とバトルになり、その武闘派な言辞を用いて、遥かに年上と見受けられた相手を喝破していた。そして相手はしどろもどろとやり、やがて撤退の已む無きに至っていた。)
曰く…
「私がこのような状態になり、一度、両親との関係性をガッツリ、ぐちゃぐちゃにぶっ壊して今は作り直している」
との事で、内心密かに瞠目し、また、同時に、
(コイツ…絶対に敵に回したくないな)
と、そう思った。
そんなミニ原爆みたいな彼女に素直に胸襟を開いて、今の自分の状態を説明したところ、
「ウェイス」と言う診断があって、それを受けてみる事を勧めてくれた。
彼女は何なのだろうか。
俺みたいな40過ぎたおっさんに、助言をしてくれるのだからなぁ。
時代なのかな?
距離を越えたネットの世界。
それは容易く年齢も越えるのかも知れないな。
ハローワークと、自立支援の方々が、紹介してくれた、「チイキカツドウシエンセンター」と言う場所を紹介してくれて、
其処に今、通っている…
チイキカツドウセンターというのはどんな場所なのだろうか?
見学に行ってみた。
代表の男性は、物腰柔らかに、
「~そんな方々の居場所になれば良いです。」
と、言ってくれた。
代表の方は忙しそうで休みが無いみたいで、出来る範囲で、何か手伝えないかと思ったが、今のところ、役に立てては居ない自分は、正直、若干、心苦しい毎日だ。
で、今日、生まれて初めて、小説を書いてみよう、
と、思った。
チャットで知り合った女学生、
彼女が教えてくれた「ウェイス」と言う検査。
それを心療内科で受けた結果、
診断結果が、ADHDとやらで、
ADHD以外の部分では、俺は
マルチタスク全般が大きく人よりも劣って居るが、言語に関するセンスは人並み以上と診断されて、それならば有り余る暇を、この際自分の可能性を試す試みに費やしてみたかったのだ。
その一環で生まれて初めて、小説とやらを書いてみようと思った。
吾輩は、おっさんである!
名前は……実名とか、言えねーよ、バーカ!
夜………
チイキカツドウシエンセンターとやらから帰ると、一人きりの時間だ。
正直、俺は一人の時間が落ち着く。
最近気が付いたのだが、俺は一人でいると症状が出ないのだが、例えそれがどんな人間であったとしても、他人と一緒の空間に一定時間居ると胃の辺りが大変に痛くなる。
10年位前からなんかそんな症状が出始めたが最近は殊にその症状は顕著に出来し始めている事に気が付いた。
だから正直、本当はずっと一人で居たいのだ。
何もする気が起きなくて、寝ている事が一番で、そんな中で一番の楽しみなイベントと言えば、眠った時に見る夢だった。
夢を見ているのが一番楽しかった。
夢は面白い。
夢の中では、普段の自分では絶対にやらないであろう行動の選択、決断をして、夢から覚めた後に、朧気に記憶に残る、『何故俺は夢の中であんなエキセントリックな行動をしてしまったのだろうか?』だとか、そんな印象的な夢の中の出来事を回想して、後から自分でも不思議に思う事や、現実世界では決して実現できないような不可解な作りや空間を持っているそんな建築物、または遺構やなんかがあったりして。
(例えば、二階へと向かう階段を登って、階段の登り切った先にこの家の一階の瓦屋根が見える窓を過ぎて通路を進んだドアを開けて見ると、其処には燈篭と芝生と、松の木の中庭の日本庭園みたいな景色が有ったりするのだ。)
夢の中では、そんな風にして廃墟の探索をしてみたりして、さながらゾンビパニックの世界で生き残って、もはやゾンビすら見当たらず、すっかりと人だけが居なくなったかのような文明社会の遺構を悠々自適と散歩するみたいに…
また、或いは、寝ようと目を閉じた視界一杯に色鮮やかな曼荼羅模様みたいな幾何学的なモノが映り、
(それはイギリスのとある統合失調症になった画家が描いた「猫の絵」みたいな色彩である。ルイス・ウェインと言ったかな?私があの画家の絵を初めて見たとき、それは今まで私が真夜中に目を閉じて見ていた色彩の世界とまさに似通っており、私は恐らくは人生の先輩であろう、その画家さんに対して、密かに仲間意識みたいなものを抱いていた。)
そこから更に、宇宙空間みたいな景色の場所へと「飛んで」みたりも出来る。
少なくとも夢は、周りの人間から疎んじがられずに、誰にも迷惑をかけないで、自分だけで密かに楽しむことができるのだ。
夢は良い…
誰にも煙たがられない。
…ところで、俺は今、まさしく、
そんな宇宙の夢を見ていた。
寝る前に見た、ブラックホールの事について書かれていたサイトや、動画の影響だろうか?
ブラックホールに人間が吸い込まれるとしたら、例えば、頭と足で、ブラックホールに近い側と遠い側の距離による引力の引っ張る力の差が生じて、次第に体が引き延ばされて行き…
たちまちの内に人間の体はスパゲッティーのように細い線状になってしまうだろう、だとか、吸い込まれる人間を観察する人間が居るとしたらば、その人間からは、吸い込まれて行った人間は、段々とスローモーションになっていき…やがて、完全に停止したように見える…だとか、中は物質が重力崩壊しているだとか…そんなブラックホールもやがては蒸発するだとか…
宇宙…果てしねーよ!
興味が尽きないよ…
そもそも、この宇宙の果てとか、そこを超えたら、どうなるのだろうな…
ブラックホール…
不思議だな。
宇宙、綺麗だ。
同時に、また、怖いよな。
こんな事を、ずっと考えて居たい。
誰にも煙たがられずに、誰からも必要とされずに、
俺は俺が主人公の時間の流れの中で、
他人と交わる事無く…
ん?
何か…
ブラックホール、近づいて来てね?
やばいって!
シュヴァルツシルト半径だったか?
それ過ぎたら、光も逃げられねーんだよ。
夢の俺、距離保て…
後退っ!
速やかに後退せよ!
あれ?
どうした?
夢の中の俺…
航行機能を失ったか!?
メイデイ、メイデイ、
こちら、現実世界の俺、作戦司令部だ!
夢の中の俺、何があったのだ?
報告せよ!
司令部、司令部、此方、夢の中の俺。
後退出来ません、何故だか、行動出来ません!
身動き出来んのです!
助けて、俺死にたくねーよ!
夢とは言いつつ、シャレになってねーから!
っつーか、
大体、そもそも、何が
「夢は良い、誰にも煙たがられない」
だよ、このバーカ、おめーのツラと相談しろっての!
結果として今一番貧乏くじ引いてんのが俺じゃねーか、その辺判ってますか!?
ブラックホールなんてーもんに興味を持ったお前と云うバカのせいで、こんな真夜中に俺は今此処に立ってますよ。
身体張って仕事してますよ。
それを、何だよテメーはよ。
オメーはメンヘラで夢見がちで、ちょっと不思議ちゃんを演じた美少年かっ!
そう言うセリフはな、美少年が言って初めて需要が発生するんだよっ!
このばぁーかっ!
お前ひたすら見た目がごつくて怖そうなスキンヘッドのおっさんだろうが!
図々(ずうずう)しんだよ!
市場経済から学び直せよっ!
ぶちギレついでに言うとな、
こないだも、お前カラオケ行って、
ヴォイスチェンジャー機能使って女の子の歌なんか歌いやがって、
なぁ~にが、
「お花が似合う、女の子になって、陽だまりで穏やかに笑っていたい」
だとか、
「切りすぎた前髪を、感傷的な月のせいにして」
だよ!40過ぎたおっさんが何歌ってんだよ!
お前の頭の中は妖精か何かなのか?
お花の蜜でも吸ってるんですか?
切りすぎた前髪どころか、お前…剃ってんじゃん。
髪の毛を、髭剃りで!
自分が禿だと気が付いた年頃に開き直って剃っちゃったじゃん。
ついでに言っちゃえば表面の毛髪だけじゃなくてその中身もだよっ!
色々な意味に於いて、オメーの脳味噌もぅ処置無しなんだよっ!
手遅れだなんだよ、全てに於いてっ!
俺、素でウケ過ぎて大変だったんだからな!
あくしろよ!
助けろよ!
……………お前、別にそれ、今言わなくて良くね!?
夢の俺…
何?
タイマン?
喧嘩売ってるわけ!?
うるせーーーーーーーー!
つか、ブラックホール近づいてるっての!
早く救出しろやーーーーーーー!!!!
…
……
………
この辺から、後になって思えば現実世界の俺との通信が切れた。
くっそ、あのメンヘラ馬鹿男、
深い睡眠に入りやがったな!
ずりーよ、おめーは、何時でも!
黒い穴は、近づいてくる、近づいてくる…
まさに深淵を覗いた者は、逆に、深淵の方からも覗かれているのだ、だっけか?
ニーチェさん、これがその報いなのか…
寝ていたようだ……
世界よ、お早う。
私である!
いやぁ、昨晩の夢は強烈だったな。
ってか、俺、今どっち?
現実世界の俺?
何か、見知らぬ天井が見えるんだけども…
ぁ。これ、夢だ。
夢の世界の俺だ。
有名な文学者は、こう言っていた……
「トンネルを抜けたら、其処は雪国であった。」
無名な俺はこう言おう。
「ブラックホールに落ちたら、そこは霊廟だった」
と。
頭で考えながら執筆している時と、
リラックスして客観的に自分の文章を第三者感覚で見ている時と…
気付き方が違っていて、
客観的に見ている時にどんどん修正してしまい、
文章のインフレーションが止まりません。
少しずつ、少しずつ、修正しています。
もうすぐ落ち着くかと思いますが、
拙い奴だなぁ、と、
生暖かい目で、どうぞお願いします(-人-)