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会合

用事が立て込んでしまっております。

申し訳ないです!




「まさか、この時代になるとはね」

見目麗しい光の妖精王がそう呟いて、クツクツと笑う。彼は男の姿をとっており、布を体に巻き付けたような衣装を身に付けている。そのすぐ隣で宙に浮いた女性が、つまらなさそうに溜息をつく。彼女も大変美しく布を巻いたような服を身に付けている。彼女は光の精霊王で、何事にも達観した視点で意見を言っている。

「もう本当に面倒くさいわ。こんな予感はしていたし分かってはいたんだけど」

彼らの周りには同じように、幾人か男女が集まって席についている。火、水、緑、光の妖精王と精霊王達だ。


「お前は何時であろうと嫌がるだろう」

緑の妖精王がニヤニヤとした顔で、光の精霊王を見つめている。そしてその隣で何やら思案顔の、緑の精霊王。

どうも、私ベルトリアです。お爺様に連れられて彼らの会合に参加しています。お家が恋しいです。

「私はともかく、こんな騒動に息子が自分の意志で突っ込んでいくのが、心配で心配で…」

そう言うのは緑の精霊王。私の事を優しくも厳しい目で見つめている。

「息子と友達になってくれて、本当に嬉しいのよ、それは本心。でも貴女が白の乙女である以上、心配は尽きないわ」

その意見には私も賛成だ。シリウスの編入が決まったのは、もろもろの騒動の前だ。こんな事態に突入してしまう未来を、私は選んだ自覚は全くない。恋愛ルートであくまで平和に?無事に?過ごしたかったのに。ああでもきっと主人公視点では平和で、私視点では平和ではなかったのだろうな…。

「まあ、あいつらが本格的な行動を起こすのは今じゃない。あと六年くらい先だろう」

そう声を上げたのは火の精霊王だ。真っ赤な燃えるような髪を靡かせ、彼女は机に脚を乗せてニヤリと笑っている。その横で同じような表情を浮かべているのが火の妖精王だ。やはり妖精王と精霊王は対になる存在らしく、男女と分かれているけど本質的な部分は近いものがあるようだ。

「まあ、とりあえず話が進まないから冷静にならない?」

そう言ってざわざわと騒がしい場に、一石を投じたのは水の精霊王だ。彼女は冷ややかな笑みで周囲を見渡し、横にいる水の妖精王に目をやる。彼は彼で人数分の水球を浮かべていて、彼女が声を掛けなければ水を浴びせられていたのが窺える。

周囲のざわめきが一気に消え、一斉に黙り込んだ妖精王達をつまらなさそうに水の妖精王が見つめていた。

「さあ、ベルトリア。話を始めよう」



「それでは、本題に入らせて頂きます。王達よ、我が孫のベルトリアは白の乙女なのでしょうか」

お爺様はにこやかに、単刀直入に会話を始める。

「で、あろうな」

緑の妖精王はさも当たり前の様に。そして隣の精霊王も、不満げに頷いている。

「今日初めて会ったけど、そんな気がするわ」

「俺も同じ意見だ」

火の妖精王と精霊王も、すぐに肯定の意見を述べる。お爺様が光の精霊王へと目をやると、彼女は面倒くさそうに頷いて、妖精王は心底楽しそうに頷いた。

「彼らの意見と同じよ、私もそうだと思うわ。こんな小さい子にそれを背負わせるのは心苦しいけど」

「…不運だったな」

水の妖精王と精霊王は、可哀そうなものを見る目で私を見てくる。そんな目で見ないで欲しいわ。

「こいつが見た目通りの童女ではないと、分かっているだろうに小さい子と呼ぶか」

緑の妖精王がおかしそうに、水の精霊王に笑いかける。

「私からしてみれば、見た目は七歳で中にある魂も若いそれならそうね。少なくとも私達より、かなり若いわよ」

水の精霊王は当たり前の様にそう答える。私の魂のことには緑の妖精王は始めから気が付いていた。ならば彼らも気が付くのでしょう。お爺様もお父様に聞いているのか、その点に突っ込んで聞くことはない。


「それでは、今代の白の乙女は我が孫、ベルトリアという事で依存なしという事だね」

お爺様が急に気さくになって、彼らに問いかける。一同頷いて肯定すると、お爺様は深く溜息をついた。

「あああ、可愛い孫にこんな運命があるのか!?お前たちの力でどうにかせんか!」

突然怒号をあげ、その場にいる王達を睨むお爺様。いや、あなたどうしたの。こんな人だったの?え、ちょっと理解が追い付かない。

「おい、素が出てるぞ」

「化けの皮ビリビリじゃない」

「そのまま孫に嫌われてしまえ」

王達も面白いものを見るように、お爺様を見つめている。何この人達…。緑の精霊王でさえも、口元を抑えて笑っている。


「あ、あの…」

私は敢えてこの空気に一石投じてみた。一斉に視線が私を射抜く。一瞬怯んだけど、緑の妖精王の嫌味な笑顔が視界の端に見えて気分が凪ぐ。その笑顔に苛立ちながらも、私は言葉を続ける。

「私、具体的に何をすればいいのか、教えてもらえませんか?」

私のその一言に、彼らは目を見合わせる。そして示し合わせたように私を見た。そして水の妖精王が代表したかのように言葉を発した。

「何も」



…はい?



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