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色んな人達

いつも誤字報告、評価をありがとうございます!



「それにしてもこの時期に編入生か」

ハリス王子が私をニコニコと見つめながら、テーブルの上に乗せた手を組んでいる。どうも、今日のベルトリアは、朝食時にやって来た殿下と食堂からお送りさせてもらってます。

私の隣ではアリアが冷ややかな笑みで殿下を見つめ、アルとロイスも不機嫌を隠そうともしない。そんな彼らの後ろで焦っているのが、魔法大臣の息子であり殿下の側近のレイモンドだ。そして殿下の隣でニヤニヤしながら朝食を食べているのが、リズベットだった。彼女は最初敵意丸出しな視線を、私に向けて隠そうともしていなかった。でも今は敵意はほぼ無く、いっそそれが気味が悪い。


何故編入生がバレているのかと言うと、朝食を取りに来た私達が会話の中で知り合いが編入するって言ってるときに、ハリス殿下たちに会話を聞かれてしまったのが切っ掛けだ。

不用心だったけど、いずれ分かることだしまあいいか。



「ええ、編入生です。知人のエルフのご子息ですので、魔法は得意ですよ。後学のためだそうです」

私は引き攣る表情筋に、何とか微笑みの仕事をさせているがそろそろ限界である。視線を逸らすとアルと目が合った。彼の不快を隠さない表情に気が緩み、思わず表情が死滅した。

「エルフですか!どのクラスに編入されるのか楽しみ」

私の言葉を聞いたリズベットが嬉しそうに声を上げる。でもその顔は獲物を見付けた肉食動物のそれだぞ、怖いよ。

「残念ながらクラスはサラマンダーで決定だろうね。エルフの血を引く者は同じクラスにされそうだ」

殿下はそう言いながら小さく目を細める。鋭くなったその視線から逃げるように、アリアに視線を向けると丁度彼女から話を振られた。

「そう言えば昨日淹れてもらったホットミルク、あのレシピをどうか私にも教えてくれないかしら」

「あら、良いわよ。そんなに気に入ってくれたの?」

「ええ、とても。あれを私も寝る前に飲みたくなったの。アニーに頼んでいてくれる?」

「任せておいて」

彼女の機転のお陰でさらりと話題が反れ、そのままお茶会の話へと変わっていく。どうやら今度学校内で、殿下主催の身分関係なしに参加できるお茶会を計画中らしい。

日取りが決まり次第、私達もお誘い頂けるようだがあまり嬉しくはない。

「それじゃあ、また近いうちに」

そう殿下が挨拶するのを切っ掛けに、よく分からない朝食の一幕は終わった。




授業はすっかりテスト対策一辺倒だ。お兄様の授業は筆記も実技もテストがあるらしく、笑顔で授業を進める瞳の奥にブリザードが吹き荒れている気がする。これは絶対下手な成績を出せない。

更に最近、お兄様から家系魔法を学ぶ一環で授業の復習をさせられているのもあって、ある種の執念を感じてもいる。


「僕の可愛い妹が半端な成績何て許されないよ。お転婆で才女で何とも愛らしい天使でこそ、僕のベルトリアだ」

なんて危険なセリフを囁いて来るのだから、毎日震えが止まらない…。テストが終わったら優しいお兄様、どうぞカムバック!!


というわけで、明日からテストです。談話室で皆でノートを突き合わせ、復習しています。それぞれが問題を出し合うようにしていたからか、段々と私達の周りにクラスメイトが集まってきている。何だかクイズ大会みたいだ。

「皆、精が出るわね」

微笑ましそうに私達に声を掛けてきたのは、中等部の寮長になっているクレア先輩だ。彼女は伯爵家の出身で、後輩皆に平等に優しい素敵な人だ。薄茶色の髪と青い瞳が優しい彼女によく似合う。

「クレア先輩!」

アリアが嬉しそうに笑顔を向ける。実はこっそりアリアと私は、クレア先輩をお姉様と呼んでいる。それだけ親しみやすい方なのだ。

「明日からだもんね、皆頑張ろうね」

クレア先輩はそれだけ言うと、私の頭をふわりと撫でて自室の方へと去っていった。その後ろ姿を見つめて、格好いいなという感情が沸く。素直にこんな風に人に接することが出来る人って凄い。私は苦手な範疇だ。

「憧れる…」

私がそう呟くと、分かると言わんばかりにクラスの女子生徒から共感の反応が返ってくる。皆先輩にはお世話になっているようだ。同じ中等部で年が近いのもあってか頼りやすいせいかもしれない。

「あんな素敵な女性になりたいわね」

アリアからもそう言われて、私は力強く頷いた。周囲にそれとなく気遣いができて、優しい声掛けをして、さり気無くサポートして頼りにされる。なんて完璧令嬢なんだよ、凄すぎる…。

さて、勉強姿を見せておいて、阿保みたいな成績は取れない。私達は気合を入れ直すと、再び勉強に励んだ。



「あんな事トリアにされたら、俺死んじゃうかも…」

「言うな、想像するだろ」

一方部屋の隅で、女子の勢いに飲まれなかった少数の男子生徒が溜息をついた。その中にはアルとロイスも含まれている。いつになったら彼女は自分の魅力に気が付くのだろうか。彼女がそんな完璧な淑女になってしまったら、天然人たらしが完成してしまう。

小声で語る男子生徒の声と一部の溜息は、女子生徒には届かなかった。







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