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噂の彼女

前半ベルトリア 後半ヒロイン


後半テンションだけで乗り切った気がします。

楽しんでいただけると幸いです。




どうもこんにちは、ベルトリアです。嫌な予感とは的中するもので、朝から寮の自室から出たらダメな気がしていました。アニーに追い出されるように授業に出て、今私は食堂でハリス王子に見つめられ微笑まれています。

あの例のお茶会から実は二週間ほど経っていて、接触がなかったモノだから油断してしまっていた。かのハリス王子は悠然と私の前で美味しそうに昼食を取られています。その横には不機嫌な顔を隠しもしない、謎の美少女が座っているのが気になる所である。まあ、顔は知っていますよ。前世からね。

中等部に入学してからようやく、初めて会ったこの美少女は所謂主人公。この物語のヒロインだ。


「ベルトリア嬢、最近つれない態度だね。どうしたんだい?」

私の死んだ目線を理解したのか殿下が面白そうに私に声を掛けてくる。

「いいえ、殿下。せっかくの昼食ですから隣の彼女との親交を深めるのに、私は非常にお邪魔なのではと思っていましたの」

私は意識しての無表情で、ジトっと殿下を見つめながらどっか行けと暗に言う。彼はにこやかに笑うと、優し気な視線をこちらへと向ける。

「大丈夫だ、私は君との交流も必要だと思っているから」

「あら、もったいないお言葉」

適当に流しながら、隣のテーブルで心配そうにこちらを見つめる友人たちへ視線をやる。助けてお願い、この空間から出たい。

「ハリス王子様、私にもよかったらこちらの方を紹介していただけませんか?」

ヒロインが空気を読まずに、殿下に声を掛ける。殿下は一瞬嫌そうな顔をしたが、それもすぐ掻き消える。そして人好きのする笑顔を浮かべた。


「ああ、申し訳ない。彼女はサンティス侯爵家の長女、ベルトリア嬢だ。ベルトリア嬢、こちら中等部より編入してきたリズベット・ウィア嬢だ」

「ああ、こちらが噂の。ベルトリア・サンティスと申します。よろしくお願いしますわ」

殿下の紹介に形ばかりの笑顔で返しながら、リズベットへと視線を向ける。リズベットはヒロインのデフォルトネームだ。私に笑みを向けられた彼女は、初対面とは思えないほどの嫌悪感の滲んだ顔で私を見ている。

「リズベットです、ベルトリア様。よろしくお願いします」

笑顔の形をとっているが不快感が隠せないその顔は、本当にヒロインかと疑いたくなってしまう。彼女は天真爛漫な自由で明るくて、皆に愛される万能少女っていう設定じゃなかったかな?

私は違和感を拭えないまま、彼女に微笑みで誤魔化した顔を向けた。彼女は訝し気な顔を隠しもせず、私の視線に応える。やっぱり何かおかしい。というか、こういう接点は設定になかったはずだから物語が変化してる証拠なのだ。その中できっと彼女と私の役割にも変化が産まれたのだろうか。でも疑問をこれ以上抱える気も、この場で共有する気も全くないから逃げの一手だ。


「殿下、せっかくの時間ですが私、先生に呼ばれていますの。これで失礼させていただきますわ」

「先生とは君の兄かな」

「ええ、兄のルーファスに手伝いをするよう頼まれているのです」

「全く、君達の仲の良さには目を見張るものがあるよ」

私と殿下のやり取りにリズベットは一瞬呆気にとられるも、ルーファスの名前にビクリと反応する。

「ルーファス先生ってサンティス家の方だったのですか?」

リズベットは私を無視してそれを問うと、殿下は頷いて肯定を示す。そうこうしている内にお兄様に呼ばれた時間が刻々と迫って来た。

「ああ、お兄様に怒られる…。殿下、私怒られたくないのでこれにて失礼しますわ」

私は慌てて立ち上がり、隣のテーブルにいたマークに視線をやる。マークは嬉しそうに立ち上がると「研究だああああ!!」と叫びながら、私より先に食堂を掛け出ていった。

「では、また」

私は二人に礼を取りながらそう言うと、アルに荷物を頼んで食堂を後にした。




◇◇◇◇




何あれ、何あれ何あれ!!

意味わかんないんだけど!!何で悪役令嬢が殿下に声かけられてるわけ?

ルーファス先生と兄妹って何それ!!てか中立キャラの双子も仲いいみたいだし、公爵子息も手玉に取ってんじゃん!!

もうあれ、何なの。色々原作崩壊しているんだけど、どうなってんの。


まあ、いいや。このゲームの選択肢は組み合わせで無限なんだ。あとからどうにでもなるはずよ。全部のエンドの全選択肢を攻略した私に死角はないわ。


でもこのハリス王子、ゲームで見るよりかなり腹黒い感じがするわ。それにベルトリアだって表情がないわけでもなかったし、いけ好かないとは思ったけど本人がというよりは周りに愛されているのが分かったからだ。

気に入らない。好かれるのは私のはずなのに。



リズベットとしてこの国に産まれて、記憶が戻ったのは魔力暴走をさせてしまった平民学校でだ。魔力の込める量を間違って、周囲を巻き込んで大騒動になった。あの時は傷だらけの教室に、散らかった机と椅子を見て怖さが先に来た。そして魔力を一気に使った反動で気絶してしまって、記憶がぶわっと頭に戻って来た。その出来事の結果、私もこの学校に入学できるようになったんだけど、平民学校では怖がられたままだった。


編入して振り分けられたのはナーガ。ゲームの通りだった。リズベットとして生まれ変わったから、自由に恋愛してみようとも思ったけどそれは無理だった。何故ならすでにハリス王子はベルトリアにご執心で、その様子に興味を持った他の攻略対象もベルトリアに興味を持ち始めていたから。

この点はゲームと違うから、何ともやり難い。でもあいつを見ていても攻略キャラに興味なんてミジンコ程度も無いみたいだし、むしろ避けてる節すらあるし。

あ、また殿下が声掛けて玉砕して戻って来た。でも凄く嬉しそうだ。思い通りにいかないゲームに腹が立つけど、この世界はこの世界として別物なのかもしれない。だってバタフライエフェクトがテーマだもの。っていう事はゲームでもなかった新たなシナリオってこと!?何それ超熱い!この場合はヒロインは誰になるのかな、もしかしてベルトリアかな。という事は悪役令嬢って誰になるのかな?いや、そうなるなら私が悪役してもいいかな。


やばい、地味にベルトリア推しだったから超楽しみ。

貴女のプレイする人生、じっくり見させてもらうね?







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