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未来

後半に少し、ハリス王子視点入ります


中等部へ進級してから、一週間経った。そして今日の魔法理論応用では遠心力の応用を行っている。遠心力では無属性魔法のサイコキネシスみたいな魔法で、ぐるぐると竜巻状に魔法を描く練習だ。これを水の中で行えば洗濯機のような役割りになり、攻撃魔法としても有用なのだ。

私達は真面目に授業を受け、マークはキラキラとした瞳でお兄様を見つめ、お兄様はニヤニヤしながら授業をするという、いつもの光景でした。

ですが心機一転。今日から始まる占術の授業。私はこれを楽しみにしていた!!占いって何かときめく!未来が見えるくせになんて、そんなことは気にしない!

占術はそれ、未来視はこれ!不確かな占術よりは未来視の方が的確ですけど、よりエンターテインメントに富んでいるのは占術よ!!



占術の先生はまさかの担任、ターニャ先生だった。

「では皆様、驚きかと思いますが私が担当するのは占術です。担任ですがよろしくお願いしますね」

ターニャ先生はそう言うと私達に水晶を準備するように言い渡す。私達は授業道具の中から拳大の水晶を取り出し、テーブルの上に出す。固定するためにそれぞれハンカチやタオルを下敷きに使っているようだ。


「水晶は純粋なクリスタルの塊です。それには魔力がほぼ抵抗なく透過できるという特性があります。そして私達は未来という予測不能な事柄を、大雑把な行く末として感じることが出来ます。その学問を占術と言います」

先生は水を得た魚のように、嬉しそうに饒舌に語り始める。占術は水晶といった媒介を使用し、対価を用いた魔法によって行使される“先見”と称される魔法の一種だ。私達バンシーの血筋の使う未来視とは、全く違う効果を見せる。

先見はあくまで未来の方向性を示すものであるが、未来視は明確な未来の方向性を指し示す。つまりこの授業は私達サンティスの人間には必要ではないが、他の人には大切な授業である。


先生の説明に従って、水晶に魔力を込める。赤紫色に濁った魔力が流れ込み三日月が浮かび上がって消えていった。他の生徒にもそれぞれ色々な文様が浮かび上がったようで、教室は騒めいている。キャンベル兄妹もそれぞれに見せ合いながら盛り上がり、アルベルトは訝しげな顔をしている。そんな中で私も訝しげな顔を見せていた。

三日月の文様、それは二つの意味に取られる。これから満ちるという意味と、欠けていくという意味だ。これはどうなるか分からない理不尽な結果ともいえるが、用心するに越したことはないから、心構えだけでも作ろうと思った。






「やあ、ベルトリア嬢」

聞き慣れない声が耳に届く。ここは学校の渡り廊下に当たる場所で、私はお兄様の手伝いで授業の資料を図書室に返却してきたところだった。ちなみにお兄様はマークと語明かすと言っておられたので、今頃研究室でしょう。

さて、意識を戻しまして渡り廊下です。この時間はそろそろ夕食という頃合いの為人の姿はここでは見受けられない。すっかり油断していた私は後ろを振り返り、その姿を見て小さく息をついた。


「御機嫌よう、ハリス殿下。こんな時間にどうされましたの?」

私は後ろから笑みを浮かべるハリス王子に声かけた。彼はにこやかに笑顔をこちらに向けると、ゆっくり歩みを進めすぐ近くまで来る。

「久しいなと思ったまでだよ、ベルトリア嬢」

彼のその言葉を聞いていると、自分の冷静に対応したつもりの行動を責められた気になってしまう。

「まあ、殿下。今からちょうど食事の頃でしょう。こんな校舎の端でいかがされましたか?」

私は笑顔を崩さないようにそう問いかける。ハリス殿下はふふっと笑いながらも私に向かって、意味ありげな視線を忘れない。

「僕も図書室から出てきたところだよ。丁度いいから一緒に食事はどうだい?」

彼はそっと私に手を差し伸べてくる。思わずその手を取ろうとして、耳に家族の言葉が思い浮かぶ。『サンティス家が王族に関わる事はない』という事実が、伸ばしかけた手をゆっくりと引き戻した。

「残念ですが殿下、どうぞ他の方をお誘いくださいませ」

「それはどうしてだい?」

「私にはまだ仕事が残っています。どうぞ、食事を楽しんでくださいませ」

私の言葉に殿下は何か言いたげであったが、そっと人差し指を振り殿下の向きを食堂の方へ向ける。

「な!?」

驚いた殿下を尻目に私は再び指を振り、殿下を歩ませることにした。王族に対して不敬だけど、私に油断していなければこの魔法にかかることはなかったのだ。ですから自分で反省してください。

「殿下、申し訳ありません!」

私はその背中に手を振りつつ、彼を追い出した。その背中が見えなくなった頃に私は大きく息をついた。実はこれ、イベントであったりする。

悪役令嬢のベルトリアがハリス殿下に片思いを抱く瞬間、そんな光景の一つだった。確かに心に騒めくものがあったけど、私は負けずに彼を追い払うことが出来たのだ。これで一つ、シナリオ回避だ。自分が彼に惚れる未来は阻止できたはずだ。私はそっと拳を握ると、ゆっくりスキップしながら寮へと向かった。ほとぼりが冷めた頃、食事に行くつもりでお兄様にも時間の約束は取り付けている。私は星を見ながら、空に浮かぶ三日月を眺めた。





◇◇◇◇





図書室を出たところでベルトリア嬢の後姿を見付けた。彼女はサンティス家の令嬢として素晴らしく、魔法に学術に秀でているという。以前話したときはお人形のようにつまらない人物と思ったが、兄であるルーファス・サンティスといる時は年頃の可愛い乙女に見えたものだ。その様まるで天使のような愛らしさであったのは、言うまでもなく私や友人たちの共通認識となった。

 

一応一国の王子として彼女に声を掛けるも、まさかの反らされるという顛末に笑いを隠し切れない。彼女はやはり面白い。普通媚びを売ってくる女性たちとは違い、自分を持ち律している姿勢を評価できる。私は自分の婚約者を見繕う茶会に彼女が参加していたのを思い出し、国王陛下に彼女を婚約者にと打診してみた。


しかし返答は否だった。理由は教えてくれなかったが、サンティス家とファウスト家は華として茶会に参加するだけであり、候補には選んではならないらしい。納得がいかない。何でなんだ、私は王子なのに!

そうだ、分からないなら調べればいいのだ。どうやってか彼女を手にする方法を見付けよう。そして共に生きる未来を見付ける。

これが一番の未来になるんだ。





投稿する時パソコンがバグったのでおかしい所があれば教えて下さい


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