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新しい日々

第二章始めます。

章分けの仕方がまだ上手く分かっていませんので、長い目で見守ってください。




「おーい!早くしろよ、学校に遅れるぞ!」

いつもの朝。いつもの光景。幼馴染のロイスが私を家まで迎えに来る。

家の外で大声を出して私を呼ぶ声がする。

彼は本当に貴族なのかと疑う瞬間があるが、今がその瞬間であることは間違いない。


「待ってよ、今行く!」私も負けじと声を張り、はしたないと戒める侍女のハンナから荷物を受け取る。私付きの侍女のアニーはその後ろで笑っている。

「大きな荷物は既に学校へ手配済みですので、このまま行かれてください」

「ハンナ、ありがとう」


「いよいよね、頑張るのよ。貴女なら大丈夫。私たちの娘ですもの」

「ああ、君に心配はしてないさ。楽しんでおいで」

「お父様、お母様ありがとうございます。いってきます!」

笑いながら見送ってくれる両親に玄関で挨拶をして、勢いよく外へ飛び出す。

庭先ではロイスの他に、その双子の妹のアリアが馬車を降りて私を待っている。きっと学校ではお兄様もアルベルトも待ってくれている。


「2人とも遅くなってごめん!」

「もう、トリアはいつもギリギリになるんだから」

「本当、遅刻に巻き込むのは勘弁してほしいよ」


2人は苦笑いしながらも私をいつも待っていてくれる。


「さあ、馬車に早く乗って」馬車の上から御者のおじ様が声を掛ける。

「いけねぇ、さあ行こう」

ロイスが慌てた様子で私たちを馬車に乗せる。


「いよいよ、今日から寮生になるのね」

アリアが緊張した面持ちで小さく呟く。

「何とかなるだろう。家に帰っちゃダメってことはないんだからよ」

ロイスはなんてことないようにのたまう。


私たちは今日から、王立アドリアス魔法学園の寮に入る。

期待と不安に胸を躍らせながら、私は馬車の外に広がるいつもと変わらない様子の王都を眺めた。


私達は今日から中等部へと進級する。七歳になった私達は、今馬車に揺られながら先に送った荷物と、一人だけ付けていいとされている侍従を連れて寮に入るのだ。初等部では色々あった。主にお兄様のせいだと思う。

それでもサラマンダーのクラスメイトとは仲良くなれたし、何故か時々ハリス王子も友人の輪の中に入っているのだ。今日から中等部になる私は、原作から大いに離れたこの世界を楽しんでいた。


馬車は大きな音を立てながら、急ぎ足に学校へと進む。校門の中ではたくさんの馬車が往来しており、私達は事前に荷物を運び入れていたから手前で混雑を避けるように降りる。

「坊ちゃま、お嬢様、ベルトリア様。どうぞ楽しんでお過ごしくださいませ。使用人一同お帰りをお待ちしております」

キャンベル家の御者が私達に礼をする。学校に入学してから彼に送ってもらっていたので、感慨深いものがある。私達は彼に元気よく返事を返し、手荷物をもって学校に入った。今日はまず入学式を行った講堂で集まり、その後に寮へと移動することになっている。

私達は講堂へと急ぐ。校門付近の渋滞のせいで思いのほか時間を食ってしまった。

三人で騒ぎながら急ぐ道筋は楽しくもあり、緊張を隠せなかった。何故なら今日からヒロインが、入学してくるのだから。

ヒロインも私みたいに転生者だったらどうしよう。上手くやり過ごすことが出来るだろうか。私がいい子にしていれば事態は良い方向へ進むのだろうか。

口に出せない不安が私を責め立てるけど、それを無視して歩みを進める。だって今気にしても仕方がないのだから。



始業式が始まり、くだらない先生の話が始まる。長い長い話の先で、初等部校長の視線が私を向いているのが分かる。私の魔力はあれから上手く混ざることが出来た。でも私達が私達のままだ。でも以前より個々の境が曖昧になっているから、自分で気が付かないうちに混ざり始めたのだと思う。ロイスとアリアには私の事を少しだけ話してる。私の身体に魂が二つあるという事だけ話した。でも二人は当たり前のような顔をして「知ってるよ」と答えた。これが彼らの言っていた家系魔法に連なるところなのかはわからないけど、きっとそうなのだろう。


「中等部より平民の魔法に長けた者を編入させている。皆、仲良くするように」

中等部校長の目立たない挨拶が終わり、私達は解散する。今日はこのあとそれぞれのクラスのオリエンテーションがあり、寮の紹介後休み時間となる。そして午後の授業が始まり、食事は好きな時間に取ることが出来る。夜の九時に寮へと集まることになっており、中等部は十時消灯となっている。

今、私達はオリエンテーションを終えて、寮へと向かっている。


本館を越えてその奥の雑多な廊下へと出る。この場は絵画や階段が乱雑に並ぶ不思議な空間でもある。その場で一つの大きな鏡を中心にその左右にも同じ大きさの鏡があった。計三つの鏡を指差し、監督の先輩は説明を始めた。

「左からサラマンダー、ナーガ、リンドブルムだ。俺たちの寮はこの左の鏡の奥にある。」

監督生の先輩はそう言うと左の鏡に向かって手を差し伸べる。

「我が家へ」

そう呟くと鏡の中へと入っていく。私達もその背中に続き寮へと入る。その中には小さなアパートのような光景が広がっていた。寮の中は一定の水準を保った広さを誇っていて、全員の部屋が同じ広さを持っているようだ。家格に左右されない、身分は関係なく学ぶ場を提供する学校らしい空間となっていた。

ロイスとは寮入り口の談話室から、左右に男子寮と女子寮が分かれていたからその場で解散した。アリアと私の部屋は隣で用意されていた。離れることなく安心した。

部屋の中は入り口入ってすぐに使用人室があり、その向かいに浴室、奥に寝室と居間のような空間があり、簡易キッチンまで備えてある。引きこもろうと思えば出来る万能空間である。

中ではアニーが荷物を整理してくれているから、すっきりした空間が広がっていた。アニー自身も使用人室を飾り始めていたし、快適な空間となっているようだ。

新しく始まる生活に、私は高鳴る胸を押さえられずにベッドへと飛び込んだ。





いつも誤字報告、感想ありがとうございます。

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[一言] 七歳が中等部 七歳でゲーム開始? 若すぎませんか?
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