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小さな決意

できるだけ毎日投稿できるように頑張ります!

おかしなところ等ありましたらご指摘ください。


「あああ、やっぱり勘違いじゃなかった…」


私は小さく口の中で呟く。

私の両手を引く両親は母校へ娘が入学することについて、話に花を咲かせていてこちらの様子は全く見ていない。

ひと月前の第一王子のお茶会で確信はもっていたけど、学校の門を見た瞬間に色々と、こうブワっと、頭の中に走馬燈が走るように記憶が素通りしていった。


「どうした、トリア」

「トリアちゃん、学校にびっくりしたのかしら」


いつの間にか両親が私の顔を覗き込んで心配している。


「学校ってすごく大きいね!」

慌てて無邪気を装い、気取られないようにする。


「そうでしょう、ここが学校の前庭で左手にあるのが屋外訓練場よ。で、今目の前にあるのがトリアちゃんがこれから通う学校の本館。」

お母様が嬉しそうに私に説明する。


学校の門をくぐると、それはもう見事に古城としか言い表せない立派なお城がそびえ立っていた。これでまだ一部だというから嫌になる。

前世含め、方向音痴を発揮したことはないけどこれは迷子になる。

確実に、確信をもって、私は迷子になる自信がある。


前庭を抜けた先にある本館、前庭の奥にちらりと見えたのが、お母様の説明通りの屋外訓練場。本館を渡り廊下で繋いだ建物がいくつかあるらしいが、表からはしっかりとは見えない。

お父様とお母様に手を引かれつつ、本館の中に進む。

石造りのアーチを描いた戸は、高さ5メートルはあるだろうか。天井もかなりの高さがあり、見た目同様内装もかなり古城っぽい。廊下の端々に絵画や石像が飾ってあるが、なにやら意味深な雰囲気を感じる。

両親に手を引かれ、周囲の人たちと廊下を進む。何かに見られているような感覚もあり、なんだか落ち着かない。

今回は初等部のみ参加の入学式だが、保護者も少なからず引率として参加する。

なんてったって広すぎて迷子確実だからね。

集まった生徒は本館の端にある講堂へと向かう。この場所で何かと集会があるらしい。


「ここが、始まりの場所」

心の中で小さく決意を新たにする。


―――絶対、みみっちい嫌がらせをするような女の子にならない!!


あんなしょうもない嫌がらせで、成績をふいにしたり先生からの評価を落としてたまるもんですか。私の人生、せっかく魔法を使える世界に産まれたのだから自由に思いっきり楽しんでやる!!





この世界の元になったゲーム『アドリアスに花束を』。

それは平民から魔法の才を認められ中等部より編入してくる主人公が、持ち前の天真爛漫な性格で王子やイケメン男子連中を振り回しつつ、虜にしていくのがストーリーの主軸。

主人公は珍しい魔法属性、つまり貴族の血筋で伝わるものではない属性を持っている。それが評価され編入してきた主人公は、当初から学園全体で注目の的であり、一部の層からは目の上のたん瘤。

なぜならハリス王子が主人公に興味を持って近づいてくるからだ。彼の目に留まりたいうら若き令嬢たちは、主人公に嫌な感情を隠さない。その筆頭が私ベルトリア。

ゲームの中での私は、主人公にみみっちい嫌がらせを連発する悪役。主人公がストーリーをうまく進めると私が割を食い、失敗すると得をする。

ゲームの中の私は自分の儚げな雰囲気を武器に、さも自分じゃありませんという雰囲気を全面に押し出し嫌がらせに精を出す。

本当に美人の無駄遣いである。悪役令嬢ならそれらしくキツイ顔立ちでもしていればいいのに。

さて、このゲームはバタフライエフェクトがキーワード。主人公次第で恋愛シミュレーションとしての主軸を行くか、アドベンチャーのような物語へ一部転じるか選ぶことができる。

ちなみに冒険に際しても、悪役の私は貴族のコネというコネで主人公に偽の情報を渡したりして邪魔をする。

この悪役令嬢、やることの規模が本当に小さい。森に出た魔物の数を多めにした偽情報を渡し、主人公に恥を掻かせようとして、数もまともに数えられないのかと仕返しされる。

それらの積み重ねで私の評判は地に落ち、大ほら吹きの意気地なし令嬢として逃げるように表舞台から身を隠す。


そんなね、しょうもないことを繰り返してね。

せめてもっと大々的に悪役なら、まだ悪役として魅力があったのかもしれない。でもこれ絶対制作側の選択ミスだよ。少なくとも私はそう思いながら悪役無視してゲームを楽しんでいた。嫌がらせなんて本当にたまに少しだけ、うざい程度だった。

でも何となく、私の立場に転生して分かることもある。

主人公の行動は貴族的にダメ。あくまで平民の中からの進学なので殿下たちにあの対応では、私じゃなくても苦言を呈していた。

まあ、私は注意するのではなく嫌がらせをして戒めようとしたので同罪なのかもしれない。もしかしたら私は、主人公が周囲にどう思われているのかを小さな嫌がらせを通して反省させたかっただけのような気もする。

やり方が盛大に間違っているだけで、始めはそんな事のような気がする。だんだんこれが意地になっていったんだろうな。


でもそれとこれは別。

私は魔法の世界を思う存分に楽しんで、自らを窮地には追い込まず、主人公とは関係ないところでモブとして生きていく!!



その為にも、まず手始めに。

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