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彼らの役割



「ロイスとアリアーナは、はじめは魔力の強い只の子供だと思っていたんだ。しかし、彼らは精霊や妖精を遊び相手に、追いかけっこや悪戯を始めた。ある日注意をした日に彼らは口を揃えてこう言ったんだ」


『楽しいからいいじゃない』


これは私の母の口癖でもあった。と。侯爵は続けた。闇の高位の妖精である彼の母親は魔の支配から抗っていたという。善と悪の区別はつかなくとも、人の感情の区別はつく。彼女は良心的な闇の妖精だったらしい。しかし魔の囁きは好奇心を擽り続けた。


「ある日母は、楽しい事を我慢するのをやめるわ、と言葉を残して人の姿をとるのを止めた。そして三日とせず屋敷から姿を消した」

キャンベル侯爵は寂しそうにそう言うと、小さく微笑んだ。その後彼が結婚し、子供が産まれた夜に彼の母親は庭に姿を現した。

「母上はこう言った。―この子達のどちらかを貰う未来が存在するわ、そうすればきっと楽しい事になる―とね」

私はその言葉を聞いて息を飲む。

だってゲームでは双子はサポートキャラなのだ。魔に堕ちる役割はになっていない筈なんだ。でも彼らのどちらかが魔に魅入られる未来があるとすれば、きっと私が関わって未来を変えた結果なのだろう。





「それと、最近ロイスが体調が良くない事に関わりがあるのですか?」

私は敢えてもう一度侯爵に問うた。彼は訝しげな眼をしながら私に言葉を繰り返す。

「さっきも言ったが、魔と人間の間を揺れ動くからこそ体調が崩れる。ロイスは、魔に魅了され始めているはずなんだ」

彼は何でもないようにそう言葉を紡いだ。しかしその手は悔し気に握り締められている。ロイスは私達にそんな姿を一切見せようとしない。でもアリアは頻繁に彼の部屋に行く。きっとアリアは知っている。

私はお父様とキャンベル侯爵が言葉を交わすをの上の空で聞き流しながら、アリアに話を聞くと心に決めた。




アリアはなかなか捕まらなかった。でも夕方に庭にいるアリアを見付けた。その横には療養中のロイスもいる。二人は庭にあるベンチに腰掛け、目を瞑って何かをしているようだ。


『ほう、魔の視界を借りているぞ』

いつの間にか隣にいた緑の妖精王が笑いながら彼らを見る。

『下位の闇の精霊や妖精の視界を借りて、付近を見回っているようだ』

妖精王はそれだけ言うと、楽しげに笑って二人の前に移動する。目の前に来ても彼らは気が付くこともない。

「なんで気が付かないの?」

『ああ、意識も一緒に運んでいるんだろう』

「視界だけじゃなくて?」

『意識もだ。それによって彼らは闇の行動範囲も知り得ているんだろうさ』

私と妖精王が話し込んでいると、呻き声が聞こえてアリアが身じろぐ。


「アリア?」

「んん…、トリア?」

アリアはそう呟くと二、三度瞬いて飛び起きるようにベンチから立ち上がる。

「どうしてこんなところに!!」

アリアは動揺した様子でそれだけ言うとロイスに目をやる。

「まだ起きていないの!トリアが来てるわよ、早く!」

アリアは容赦なく顔色の悪いロイスを諤々と揺さぶる。ロイスは段々と覚醒したようで気分悪げに目を開け、そこに私を映した。



「トリア!?」

ロイスはそう叫ぶと、上手く立ち上がり切らずベンチから崩れ落ちる。彼の体調はそれほどに悪いのだ。

「ロイス!!大丈夫?」

私は慌てて駆け寄る。ロイスはアリアに助け起こされながらも苦笑いを浮かべる。

「油断したみたい、ごめん」

「油断とかじゃないわ。私は無理をしてほしくないの!」

「え…。僕らが何をしているか知っているの?」

「ええ、妖精王に教えてもらったの。闇の妖精の目を借りているって…」

私がそう言うと、アリアとロイスが苦虫をかみつぶしたような顔でこちらを見る。

どうやらこれは秘密にしたかったらしい。

どうにかこうにか、彼らに無理をしない約束を取り付けたけどきっと聞いてくれないだろう。私は納得してくれた彼らに安心しつつも、未来視で見えたその未来に息を飲む。



どうか、間違いでありますようにと。





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