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古代魔はセーフだよね




魔物ホイホイの魔道具は、動物ホイホイであることが判明した。今の術式では魔物に特定できる紋様ではないのだということだ。

私はこの解決策を知っているけれど、それをするのはファウスト家からストップがかかっている。何故なら簡単、魔法陣を組み込めばいいのだから!

でも魔法陣に使われる古代語や陣にはエルフの秘匿される部分が多くある。魔法陣をそれと分からなくして使う事で、ようやく許してくれたあの家が大々的に魔法陣の使用を認めてくれるわけはない。

「はあ…」

深い溜息を吐く私の横で、同じように溜息を吐くお兄様が居る。お兄様も私と同じ理由で溜息し、さらにこっそり陣を使う事がない様に作成から外されてしまったのだ。

「こんなに面白そうな事しているのに、僕は参加できないなんて…」

「分かるわ、お兄様」


今いるのは学校にあるお兄様の研究室だ。先週行われた実験結果を初等部校長に伝えた後、妖精王からファウスト家の伝言を与えられ今に至る。

「ファウストのお爺様も頭が固い…。この国に属するようで属していないって明言しなくたっていいだろうに」

お兄様がそう言うと自虐気味に笑った。

ファウストのお爺様からの伝言とは、『我々は国の監視を役割とする一族だから、肩入れし過ぎるな。人間に妖精やエルフの知識は過ぎたるものだから与えすぎるな』というモノだった。完璧に人間を、というよりこの国を下に見ている。

「確かに私達の家の立ち位置って難しいね」

「ああ、そうだね。監視と言ってもその実多くは秘匿されている事ばかりだし、国に属するから出来ることもあるのだから。属さずに国の監視何て出来ないのに」

お兄様はそう言って、また深い溜息を吐いた。

「立ち位置を強いままでいたいんだよ。エルフは魔法を行使する者、妖精や精霊が魔法を創り出す者。人間はそのどちらでもないからどちらも出来るし」

私がそう言うとお兄様も同意とばかりに頷く。

これは難しい問題だったりする。発展に手を貸せば足元を掬われることもあるんだし、どちらも考えうる未来だ。この事に関しては未来視をしようとしても、確定的な色は見えない。

「じゃあ、お兄様の得意分野で発展させてみない?」

ふと頭に浮かんだ考えをお兄様に提案する。私が悪戯な笑顔を浮かべると、お兄様も笑顔を輝かせてニヤリと妖精らしく笑った。




という事で、私とお兄様は妖精の血に刻まれた魔法を感じ取っていく。

血に刻まれた魔法は先祖代々使ってきたものだ。だから初代の妖精が古代魔法として使っているモノも多く記憶している。利点としてはそれらを無詠唱で使うことが出来る事、反対にその魔法を具体的に思い浮かべないと使えない事。

でもこれに当てはまらない事もある。さっきも言った通り、妖精は“魔法を作っていた”存在なんだ。だから私達も作れる可能性、高いんじゃないかな。

「んふふ」

私は思わず笑ってしまう。頭の中で思いつく限りの魔に対抗する魔法を思い浮かべると、その魔法が具体的に理解できるのだ。楽しくて仕方がない。

お兄様には私ほどには妖精の血の記憶が無いのか、はたまた発想力の差なのか魔法が思い浮かばないようだ。

「楽しそうだね、トリア」

「ええ、楽しいわお兄様」

「何が思いついたんだい?」

「魔物が純粋なものを狙うなら、光の妖精や精霊に寄ってくるんじゃないかなって思ったの」

「それは魔にとって弱点なんじゃないのかな?」

「自分にないものに惹かれるのなら、可能性ってあると思うの」

私は自分の手から光明の光を生み出す。これはただの光を作る無属性魔法だ。これに光属性の魔力を込めて見る。これが聖属性なら彼らはきっと嫌がる。でも光属性なら、大丈夫な気がするんだ。


「妖精の勘かい?」

「ええ、私の勘よ!」

私は思い浮かんだ魔法を手に込める。ぐっと握り締めた手を開くとそこには温かな輝きがあった。

「これは古代魔法の属性の魔力の結晶化にあたるのかな」

「そうなの?」

「分かっててしたんじゃないの?」

「分からなくても、こうなればいいなって具体的に想像出来たらできるわ」

「ああ、作ろうとしたのか魔法」

「うん。でも作るより簡単だったからこの魔法は、血に残っていたんだと思う」

私はそう言って、掌に丁度乗るサイズの輝きを見る。無属性の光の様にただ明るいだけじゃなくて、優しい魔力を感じる。


「これが光属性の魔力の結晶なの?」

「だと思うよ」

お兄様は微笑ましいものを見るようにそう言うと、自分の手をぐっと握り込んで開いた。そこには氷のような寒々しい光を放つ氷の結晶があった。見掛けは小さな氷柱だ。

「氷属性ね」

私の言葉にお兄様は頷く。そして反対の手を開くと、そこには炎を結晶化したような猛々しい輝きがある。お兄様の言わんとする事が分かり、思わず目を輝かせると悪戯な笑い声が頭の上から降って来た。

「ああ、僕の天使はやっぱり天使だ。古代魔法を研究する上で大切なミューズで、こんなに可愛い妹だ。神様はいい仕事をするね」

相変わらずのシスコンぶりに思わずげんなりしてしまうが、お兄様は嬉しそうだ。


「これはエルフの掟に反しないし、古代魔法を読み解いたものだ。研究に活かしてもらおうじゃないか」


彼はそう言うと、紙とペンを魔法でふわりと手繰り寄せて論文に書き起こす。その作業を横目に見ながら、私はお茶を淹れようと席を立った。






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