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武術大会17

いつもありがとうございます。



敗者復活枠というのは、トーナメントの初期で負けた優勝候補に与えられた再チャンスらしい。簡単に言えば準々決勝の今の試合までに負けた優勝候補から、投票という形で選抜されそこから予選を行う。そしてそれに勝ったのがハリス殿下とクレアだ。そして、今からそのハリス殿下とクレアの試合が始まる。



「同じ敗者枠として、戦えることを楽しませていただきますね」

クレアが楽し気に笑うと、殿下はそれを冷めた目で見据えて小さく微笑む。

「負けないよう、精一杯挑ませていただきます。先輩」

挑発的な殿下の言葉にクレア先輩も、冷えた笑みを浮かべている。案外本質が似た二人なのかと、遠巻きながらワクワクと見つめてしまう。

「始め!!」

先生の合図と共に、この試合が始まった。

二人はその場から一歩も動かず、剣を片手に携えてにこやかに魔法の応酬を始めた。



「我が血に捧ぐ、高名なる光を」

ハリス殿下が目晦ましの呪文として、光を瞬かせる。フラッシュというやつか。クレア先輩はそれを物ともせず土の壁を作り上げて、それを防いでいる。

「力を示せ、石の弾よ」

クレア先輩は続けてそう言うと、殿下に向かって握りこぶしほどの石を弾丸の様に打ち付ける。殿下はそれを踊るように躱し、楽しげに笑う。

そのまま彼はクレア先輩に向かって駆けだし、彼女もそれに弾かれたように駆ける。土魔法で短剣を作り出したクレアは、斜に構えたそれを大きく薙いで殿下の攻撃を牽制する。殿下はそれを避けるように身を捩ると、そのままの勢いで一回転しクレアに向かって剣を突いた。

一瞬、クレアに剣が刺さったかのように見えた。殿下も目を見開いて驚いた顔をする。でも次の瞬間にクレアだと思ったモノは崩れ落ち、ただの土塊に変わった。

「んな!?」

殿下の驚いた声と共に、土の壁として作られた残骸の中からクレアが飛び出して殿下に攻撃をする。彼もギリギリでそれを躱して互いに距離をとる。


「…楽しいな」

殿下がそう呟いた。それを聞いてクレアも同じような笑顔を浮かべる。

「ええ、とても」

彼らは再び向かい合って、剣を構える。そして互いに駆けだし、舞台の中央で剣が交差した。その瞬間に土埃が舞い、試合の様子が見えなくなる。

「そこまで!」

先生の声が聞こえ、土埃がおさまった先に居たのは膝をついたクレア先輩と、してやったり顔のハリス殿下だった。

「勝者ナーガ、ハリス殿下!」



クレアと殿下は舞台で握手を交わして互いに袖に降りてくる。その顔は晴れやかで、今の試合の気持ち良さを物語っていた。

「やあ、二人ともお疲れ様」

アレンが楽し気に二人に声を掛ける。クレアは小走りにこちらに来てすっきりした笑顔を見せる。

「負けちゃったわ」

「仕方ないさ、殿下強いもの」

「先輩、お疲れさまでした」

「ベルトリアちゃん、ありがとう」

クレアの顔を見ていると、この試合に悔いが無いことが窺える。昨日の表情を見ていたから、何だか少し安心する。

「ベルトリアちゃんの昨日のあの状況から、どうなるかとこちらも心配したけど。ダニエルとも仲違いせずに、試合も良いものだったし本当に安心したわ」

クレアはそう言うと、少し心配そうに眉をひそめた。ああ、心配かけてしまっているな。私は出来る限り穏やかに笑う。

「昨日は突発的に動いてしまってすみませんでした。エリオット先輩を助けるために、周りが見えていなかったんです」

私がそう言うと周囲は苦笑する。

「昨日こってり皆に叱られているんで、許してあげてください」

アルが私のことを少しだけフォローすると、クレア先輩は小さく笑った。

「それなら、私だけは褒めてあげましょう。貴女の勇気が一人救ったことは間違いないわ。何が起きているのか分からないけど、やり方も間違っていたかもしれないけど行動を起こしたのは素晴らしいの」

私はクレアの言葉を聞いて、胸の中で言葉を反芻する。行動を起こした事が素晴らしい、これは昨日否定された自分を確かに救ってくれる言葉だった。

「ありがとうございます。先輩に声を掛けに来たのに、逆に慰められてしまいました…」

私はバツが悪くなり苦笑する。周囲も柔らかく笑ってくれた。今はそれだけで十分だ。これから皆を守れる力を付けよう。




「アルベルト、試合だ!」

それの入り口からアルを呼ぶ声がする。いよいよアルの試合らしく、皆の緩んだ表情が一気に引き締まる。

「んじゃ、やってくる」

アルはそう言うと、悪戯をするような笑顔を浮かべて私の頭を撫でた。ああ、これは何かやるつもりなのだと、私は確信めいたものを感じた。

「ほどほどに、ね」

そう言うと、彼はさらに笑みを深めて笑う。恐ろしいからこっち見ないで。

アレン先輩も楽し気に彼の後姿を見つめて、一つ口笛を吹いた。

「これもまた、一興かな?」






普段小説はワードに書き起こしているのですが、今回気が付けばページが365ページに突入してました。恐ろしく読み返しづらい…。でもこの書き上げた感が達成感になっています。


楽しんでいただけていましたら幸いです。

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