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武術大会4

短めですがよろしくお願いします!



また夏がやって来た。

夏季休暇前のテストに備えて、私達は集まって勉強している。お兄様の魔法理論の授業は前期で終わり、後期に新しく授業が始まる。担当は安定のお兄様らしい。とりあえず授業のお浚いをして、今回の授業課題である決闘に使用する魔法を練習する。魔法理論応用であっても後期に行われる、武術大会に向けた練習となる。そんなこんなで私達の今回のテストは、実技テストになっている。


「出場しない生徒でも決闘があるなんて!」

アリアがへたり込みながら悲鳴を上げる。アリアの練習相手になっていたのは、双子の兄のロイスだ。この二人は攻撃パターンが似ているけど、とても嫌らしい手段に出ることがあってとても戦いたくない。

「トリアと組むよりマシでしょ」

ロイスはそう言いながらも同じように床にへたり込んでいる。練習に使っているグラウンドの地面は、ところどころが焦げ付いていて激しい練習を物語っている。

「私と組むのがそんなに嫌なの?」

私がそう言うとロイスとアリアは視線をそらしてしまう。私とアルとシリウスは無詠唱で魔法を使う。その中でエルフの血が入った私は、魔力量がえげつないらしい。

「ルーファス先生もだけど、トリアとも戦うのは骨が折れそうだ」

シリウスがクスクス笑いながらそう言って、小さくウインクする。様になっているのが何とも憎らしい。


いよいよ来週がテストだ。模擬戦をして勝敗に拘らずどれだけ魔法を駆使できているかが、今回のお兄様のテストの肝らしい。私はお兄様に無駄に鍛えられたせいで、魔法自体は得意だ。気を抜くと手加減が出来なくて被害が甚大となる事もあるけど。

考え事をしていると、ふと頬を冷たい風が撫でる。ハッとして慌てて左に避ける。するとさっきまで私が居た場所は、大きく風に地面をえぐられていた。

「ほら、呆けてると狙うぞ」

アルが悪戯な笑みを浮かべ、空に浮きながら私につむじ風を送ってくる。ふうん、カチンときた。私は自分の周りに粉のような氷の粒を作り上げ、それをつむじ風に含んでアルに飛ばした。アルは目の色変えて後ろに飛び退き、慌てて風の柱を作って防御している。

「狙うんじゃないの?」

「馬鹿!!氷混ぜる奴があるかよ!」

「私の得意な魔法の何がだめなのよ」

「お前のは卑怯だ!!」

私とアルは大きな声で応酬しながら、楽しく魔法を飛ばし合った。あっと言う間に周囲にいた皆は避難して、私達の独壇場と化した。いざ冷静になってみると、グラウンドは穴だらけで悲惨な状況になってしまった。私はシリウスに助力を頼んでボロボロになったグラウンドを、バレない様に土魔法で元に戻す羽目になった。



テストを目前に控えたある日、精霊が私の寮の自室を訪ねてきた。この子は低位の精霊でなく、ある程度高位の精霊のようで青年のような姿をしていた。

「初めまして、白の乙女」

彼はそう言うと私の手をそっと握って来た。

時間は真夜中、私は窓を叩く音に目が覚めて顔を上げたのだ。そしたら彼は目の前にいた。もう中に居たらしい。

「…風の精霊?」

「ええ、シルフです」

「それは種族の名前ね、あなたの名前は?」

「ありません。緑の精霊王から頼まれてきました」

彼はそれだけ言うと優しげに笑う。そしてそっと手を開くとそこに手紙が現れる。その手紙を手に取ると、彼は優しく笑って頷いた。

「貴女は風に好かれていますね」

「私よりアルベルトの方が好かれているわ」

「彼は好かれているというより、風の仲間ですから」

シルフはそれだけ言うと、微笑を浮かべたまま風になりふわりと窓の隙間から外に消えた。

手元に残った手紙を見ると、そこには精霊王からの魔に関する報告が書かれていた。そして内側にもう一枚、手紙があった。それはファウストの祖父からの手紙で、何やら物々しい雰囲気を醸し出していた。とても夜更けの今読む気は起きない。

私は小さく溜息を吐くと、サイドテーブルの引き出しに手紙をしまってもうひと眠りをした。




次の日は休みで、すっかり寝坊した私はアニーに叩き起こされてベッドから出る。

「お嬢様!!起きてくださいな、アリア様がお呼びですよ」

私は大人しくベッドから出ると、普段着の簡素なワンピースに着替える。シンプルなデザインながら肌触りは良く、とても上質なものなのだと分かる。着替えて顔を洗った私は、サイドテーブルから手紙を手に取り、それを片手に朝食へと向かうのだった。






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