プロローグ
「おーい!早くしろよ、学校に遅れるぞ!」
いつもの朝。いつもの光景。幼馴染のロイスが私を家まで迎えに来る。
家の外で大声を出して私を呼ぶ声がする。
彼は本当に貴族なのかと疑う瞬間があるが、今がその瞬間であることは間違いない。
「待ってよ、今行く!」私も負けじと声を張り、はしたないと戒める侍女のハンナから荷物を受け取る。
「大きな荷物は既に学校へ手配済みですので、このまま行かれてください」
「ハンナ、ありがとう」
「いよいよね、頑張るのよ。貴女なら大丈夫。私たちの娘ですもの」
「ああ、君に心配はしてないさ。楽しんでおいで」
「お父様、お母様ありがとうございます。いってきます!」
笑いながら見送ってくれる両親に玄関で挨拶をして、勢いよく外へ飛び出す。
庭先ではロイスの他に、その双子の妹のアリアが馬車を降りて私を待っている。
「2人とも遅くなってごめん!」
「もう、トリアはいつもギリギリになるんだから」
「本当、遅刻に巻き込むのは勘弁してほしいよ」
2人は苦笑いしながらも私をいつも待っていてくれる。
「さあ、馬車に早く乗って」馬車の上から御者のおじ様が声を掛ける。
「いけねぇ、さあ行こう」
ロイスが慌てた様子で私たちを馬車に乗せる。
「いよいよ、今日から寮生になるのね」
アリアが緊張した面持ちで小さく呟く。
「何とかなるだろう。家に帰っちゃダメってことはないんだからよ」
ロイスはなんてことないようにのたまう。
私たちは今日から、王立アドリアス魔法学園の寮に入る。
期待と不安に胸を躍らせながら、私は馬車の外に広がるいつもと変わらない様子の王都を眺めた。
初めての連載です。
よろしくお願いします。