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水の神殿で待ち受ける脅威⑥

「相当なデカさじゃん……。一匹がこのキャンプカーの半分位ありそう」


 マリは窓に張り付き、上空を旋回する鳥の姿を目で追う。


「ロック鳥は人間一人くらいなら軽く持ち上げられるから、皆気をつけてね」


「なんてデンジャラス! ではこのキャンプカーも奴等によってどこかに運ばれてしまう可能性があるんです?」


 汗を流して焦るセバスちゃんの問いに、公爵はチラリとマリを見た。


「ロック鳥の群に襲われた家が、隣の国まで運ばれたという事例があるよ。この乗り物はどうだろう。マリちゃんのスキルの影響を強く受けているわけだから、見た目だけでは判断出来ないな」


「私もこのキャンプカーのスペックなんて分かんないよ。……もし、空の高い所まで運ばれたら、私達ろくに抵抗も出来ないまま落下死するよね?」


「うーん。もしかしたら優しく地面まで下ろしてくれるかもしれないよ?」


 ヘラヘラとあり得ない事を言う公爵に、セバスチャンと二人で冷たい視線を浴びせる。

 彼は魔法が使えるから何があっても自分で対処出来るんだろうけど、マリ達は妙なスキルを使えるだけの一般人だ。自分達で危機的な状況を招かない様にしなければならない。


「セバスちゃん!! 銃で撃ち落とすよ! ロック鳥のサイズだったら窓から入って来れないと思うし、窓から狙おう!」


「承知致しました! 今武器を見繕って来ます!」


 マリがバイオレンスな解決法を選択すると、セバスちゃんはウキウキと棚を漁りだした。


「僕も手伝うから、公爵も手伝ってくれないかな……?」


「勿論だよ」


 公爵はグレンの頼みに快く応じた。



「暗いから、狙いを定め辛いし、直ぐに殲滅ってわけにはいかないかな……。風の精シルフよ。空気中の粒子の電気バランスを崩し、プラズマの弓を形成しろ!」


 グレンが右手を突き出す様な姿勢で、訳の分からない言葉を言うと、キャンプカーの中に強風が吹き込む。


「わふ!」


 風圧の強さに驚き、目を閉じる。風は直ぐにやみ、グレンの居る方向からバチバチと音が鳴り出した。

 目を開けて確認すると、彼はレアネーでも使っていた紫色のプラズマの弓を手にしていた。


「車内からは撃てないな…外に出てくる」


「大丈夫なの? 上に吊り上げられない?」


「たぶん……」


 グレンは自信があるのか、躊躇う事なく外に出て行った。窓から彼の様子を見ると、直ぐに上空に向かって紫色の矢を放った。ロック鳥達は矢に興奮したんだろう。けたたましい鳴き声を上げた。


「さて、僕も彼に協力しよう」


 グレンの行動を楽しそうに観察していた公爵も、外に出て、その手の上に大きな火球を浮かび上がらせた。


(グレンも公爵もロック鳥に負けない自信があるんだろうなぁ……)


 魔法を使える人達が羨ましい。折角不思議な世界に来たんだから、マリも魔法の一つや二つ使ってみたいが、真似してみてもさっぱりだ。


 ズズンと音を立て、一羽のロック鳥が落ちてくる。グレンが「よし……」と言っているので、彼が撃ち落としたのだろう。


「やるなぁ……」


「マリお嬢様、私達も負けていられませんよ。どれだけ多く撃ち落とせるか勝負です!」


 こちらの攻撃が通用するのが分かり、喜ぶマリに、セバスちゃんはピストルを差し出す。

 短機関銃じゃないのは、こっちの方が空に向けやすいからなのかもしれない。


「よし! デザートをかけて勝負だ! ていうか、アンタの銃ゴツすぎ!」


「銃というか、グレネード・ランチャーです。これで擲弾を打ち上げてやりますよ!」


 つくづく侮れない男だ。ノリノリで窓から身を乗り出すセバスちゃんに苦笑いする。


(まぁ、頼れる人が多いのは良い事だね! 私も一匹くらいは仕留めたい!)


 マリはセバスちゃんと逆側の窓から上空の鳥を見上げ、狙いを定めた。



 ロック鳥との戦闘は小一時間ほどで終わった。勿論こちらの圧勝だ。

 外に出て、キャンプカーの周囲を歩き回る。

 地面は巨大なロック鳥の死体で埋め尽くされ、血や硝煙の匂いが立ち込めている。

 死体をしげしげと観察すると、中々肉付きがいい。

 マリは頭の中に『弱肉強食』という文字を思い浮かべずにいられなかった。


「ロック鳥って食べられる?」


 一番気になる事を問いかけると、公爵は声を上げて笑った。


「マリちゃんの食への探究心には感心しちゃうな」

 





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