表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/156

水の神殿で待ち受ける脅威②

 レストランの中に入ると尖った耳のセクシーなウェイトレスが近付いて来て、窓側の席まで案内してくれた。


「ここのお薦めの料理は何? 初めて王都に来たから良くわかんないんだ」


 ウェイトレスは、メニュー表を開き、一番上に書かれた料理を指し示す。


「これですわ」


(あれ? 読める)


 この国の語学なんて学んでないのに、何故か書いてある事が読めた。人が話す言葉だけじゃなく、文字もいけるらしい。得した気分になり、思わず笑みがこぼれる。


「フォレストサーペントのピリ辛炒め、で合ってる?」


「えぇ、フォレストサーペントの肉は王都の名物。このピリ辛炒めと、黄金焼きはお客様達に好評ですのよ」


「モンスターの肉なの?」


 知らない名称なので、知ってそうなグレンに聞いてみる。


「フォレストサーペントは王都周辺に生息する大蛇だよ」


「蛇か! それなら結構美味しいかもね。ピリ辛炒めと黄金焼きを一皿ずつちょうだい。後は一番売れてるスープとサラダを二人前。主食になりそうなのも欲しいな」


「フォレストサーペントのピリ辛炒めは、トウモロコシ粉を薄く焼いた物に包んで食べるのが一般的ですの。それをお持ちしましょうか?」


「へぇ、トルティーヤみたい! それ持ってきて」


「かしこまりましたわ」


 ウェイトレスは、この世界にない食べ物名を口にしたマリに不思議そうにしたが、深く問いかけずに、店の奥へと歩いて行った。


「高級なレストランなのかと思ったけど、コース料理じゃなくて、アラカルト式なんだね。肩肘張らなくてすんでラッキー」


「この世界はまだコース料理を考え出されてないと思う」


「へー、そうなんだ! でも確かに、私達の世界のコース料理は割と近代に出来た形式だし、この世界の文化レベルだとまだなのもしょうがないか」


「近代なんだ? 知らなかった」


「料理の歴史って結構楽しいよ。詳しい内容が載った本を持ってるから、ニューヨークに戻ったら貸してあげる」


「うん……」


 飾らない笑顔を浮かべるグレンに、マリもつられて笑う。

 王城に行っている間に、緊張していた心が解れていくようだ。この男はたぶん魔法でマイナスイオンを出しているのだろう。そうじゃなければ説明しようのない、マッタリ感だ。


 混雑しているためか、料理はなかなか運ばれて来ない。でも、いい聞き手が居るお陰でマリは退屈しない。

 最近のニューヨークの情報をほとんど知らないと言う彼に、マリのマシンガントークが止まらない。


「__ロールアイスクリームっていうのが流行ってて、作ってるのを見るのがすっごい楽しいんだ。冷やしたプレートの上に、アイスを伸ばして、ちょっと固まったらクルクル~て巻くの。行くならオレオとかマシュマロを飾ってくれるところがいいね。味は普通だから、出来るだけ可愛い方がいい!」


 聞いてるだけで飽きないのかと思うが、グレンは楽しそうに頷いてくれる。


 ニューヨークに戻ったら、二人で街を歩いて、マリのお気に入りを一つ残らず味わわせてやりたい。

 アレックスの馬鹿が居たせいで、異性と縁のない人生だったけど、これからは違う。ニューヨークの街をセバスちゃん以外と歩いても許されるようになるんだ。その一番目の相手がグレンなのは変な感じだけど、友達なので普通だ。たぶん。


「お待たせしました」


 先程のウェイトレスが大きなトレーに料理を乗せて戻ってきた。

 慎重な手つきで置かれていく皿に、マリは目を丸くした。


(これ、ハバネロ?)


 テーブルの真ん中に置かれた皿の上に山盛りになっているのは、真っ赤なソースが絡まった肉。おそらくこれがフォレストサーペントのピリ辛炒めなのだろうが、ハバネロにしか見えないブツが混ざってるのは気のせいだろうか?


「受けて立つ!」


 フォークでグサリとやり、勢いよく食べると口の中に甘酸っぱい味が広がる。辛味は控えめなのかと思った直後、グワッときた。

 口を手で抑えて、痛みに耐える。間違いない。ハバネロだ。辛さで味を誤魔化しているわけではない。噛む事に、蛇の味わいが楽しめる。鳥のササミに似ているのだが、フォレストサーペントの場合、もっと脂がのっている。


「味どう?」


 グレンが差し出してくれた水を、グイッと煽り、親指を立てる。


「めっちゃ旨い! でもかなり辛いから、このトルティーヤもどきに巻いた方がいいかも」


 白い薄焼きにフォレストサーペントの身を三つ乗せ、さらに、ウェイトレスが一緒に持って来てくれた白いソースをかける。それをグレンに渡し、マリは自分の分も作る


 トルティーヤに巻いて食べると、辛さが抑えられて、ちょうど良くなった。それに白いソースは生クリームをベースにしていて、甘酸っぱい赤いソースと良く合う。


「流石王都なだけあるなぁ。味が研究され尽くされてるよ」


「マリさんの料理の方が好きだけど、これも嫌いじゃない」


「う……っ、もっと褒めていいよ!」


 マリは照れ隠しにワザと調子に乗った事を言った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ