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食材ゲット②

「これって、アボガドっていう名前で合ってる……?」


 白髪の少年は黒い卵型の果物をマジマジと見つめ、記憶を辿る様に僅かに首を傾げる。


「うん。ちょうど欲しかったんだ! レアネーの市場に行った時に見かけたから、戻ったら買おうかなって思ってたの。でも今のレアネーだと、無事に入手出来るか分からないし、ここで見つかって良かった!」


 ハイテンションでマシンガントークするマリに、売り子はニコニコした。


「そんなに喜んでもらえるなんて、おまけの付け甲斐があるねぇ。でもこの果物の名前は、フレイティアフォレストバターと言うんだよ。この大陸の中では、土の神殿近くでしか栽培されてないのさ」


 彼女の話から、レアネー市で売られていたアボガド(この世界ではフレイティアフォレストバターと言うらしい)は、この辺で収穫された物が卸されていたのだと知る。だとしたら、この周辺にアボガドの在庫はもっと有るはずだ。


「おばさんはフレイティアフォレストバターの農家なの?」


「アタシの親戚が生産しているよ。何か気になるのかい?」


「100個程買えないかなって思って。私にその親戚さんを紹介してくれない?」


「そんなに欲しいのかい!? でも、大量買いしてくれたらアイツも喜ぶか。今日は青空市に来てないけど、準備させて指定の場所に運ばせよう」


「助かる! 今日の夜までの間に土の神殿に持ってきてほしい」


 土の神殿の名前を出すと、売り子は深く頷いた。


「なるほどね。アンタ達、変わった服装だし、魔力はやたら高いし、一体どういった方々なのかと思ったが、土の神殿の客人だってわけかい」


「大神官さんに会いに来たんだよ」


「驚いたね。アタシの実家ではね、土の神殿に訪れる珍妙な服装の客人は丁重にもてなす様にと、言い伝えられている。果物の値段が安くなるように、親戚に頼んどくよ」


「有難う!」


 感動した様子の売り子に代金を払う。

 汚れが少ない麻袋に渡された二十本のトウモロコシ+アルファは、ズッシリとしている。袋には持ち手がないため、持ちづらいが、汚れているため、両腕で抱きかかえるのも躊躇われる。軽くため息をつくと、袋は横から奪われてしまった。


「あ……」


「僕が持つ」


 試験体066は、マリからもぎ取った袋をサンタクロースの様に肩に担いだ。彼は無機質な雰囲気があるのに、そうすると、妙に人間らしく見える。


 彼の青い服は、麻袋の土で汚れてしまうだろう。でも、その方がもっと人間らしく見える様になるかもしれない。


 マリは自分の思考にギョッとし、激しく首を振った。


「私にも持てたけどね!」


 マリはおかしな考えを誤魔化すために可愛さ皆無な事を言い、ズンズンと先を進む。


(だけど、汚れた服を洗濯しようにも、代えの服を持ってなさそうなんだよな)


 セバスちゃんの服を貸そうにも、二人の体格は全然違う。一時的にでも、動き辛すぎて気の毒だ。


 どうしたもんかと、市場の中を見回す。すると、奥の方に、幾つもの布が吊り下げられている一画が見えた。


「あの露店、服も売ってるのかな?」


「マリさん、服が欲しいの……?」


「アンタに服を買ってあげようと思ってさ。その青い服をずっと着ているわけにもいかないじゃん? 洗濯しよう」


「え……要らない……。服を洗わなきゃいけないなら、洗うけど、乾くまでの間、裸でいるから……」


「何言ってんのー!? 素ッ裸の男と一緒に長時間同じ空間にいるとか、無理!」


 慌てふためいて、口にした言葉が妙に芋くさくて、ウゲッと思う。


「べべ別に! モデル並の男だったらマッパで過してもらってもいいよ! でもアンタじゃちょっとね! 見て楽しめる身体になってから出なおしてよ!」


 マリは途中から何を叫んでるのか分からなくなった。少年が真顔なのに気がつき、顔を真っ赤にする。


(私の感覚が東海岸的なのかな? 西海岸じゃ男女とも半裸で街をウロついているみたいだし! でも……)


 マリは混乱気味の頭を鎮めるため、ゴホンと咳払いした。


「私の前では服を着て! 下半身を露出させてる男は警察に突き出されても文句を言えないんだからね!」


「下着まで脱ぐとは言ってない……」


「うっ……! とにかく! 何か着れそうな物買ってこう」


 何やかんやと言う少年を黙らせ、生成り色のチュニックや、下着になりそうな衣服を購入する。さらに遅めの昼食用にパン等を入手してから、土の神殿に戻ると、一時間以上経ってしまっていた。


「遭難したのかと心配していたんだが、無事でなにより。どこかで買い物でもしてきたのか? マイペースだな」


 スンナリと通された、大神官の執務室で、マリ達はエイブラッドに呆れられた。


「土の神殿の近くに青空市を見つけて、料理に使う食材を買って来たんだよ。パンとかも買ってきたの。昼食にどう?」


「あいにく、貴女達が帰って来るまでの間に昼食を済ませた」


「僕もエイブラッドに便乗して食べたよ。不味い飯だけど、君達の分もあるみたい」


 公爵がのほほんとした笑顔で口を挟む。


 そういう事は早めに言ってほしいものだ。用意してもらった料理を無駄にするのは、マリの流儀に反するので、買って来たパンは後で食べる事にし、運んで来てくれた料理を昼食にする事にした。


 雑穀の粥や、油で揚げたシュウマイ的な惣菜、茹ですぎの野菜、等である。


(うーん……。確かにお世辞にも美味しいとは言えないな)


 素材の味は良さそうなのに、味付けが濃すぎたり、薄すぎたり、グチョグチョしてたりして、苦労して完食した。

 食後、試験体066はザリガニの解体の為に地上に連れて行かれ、執務室にはマリと公爵、エイブラッドの三人だけが残った。




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