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デンジャラスな登山⑨

 アースドラゴンの背からマリ達が下りると、ドワーフ達が駆け寄って来た。

 集団の中から一歩進み出たのはセーブス族長だ。彼は感極まった様子でマリに話しかける。


「よく無事だったな! ヘンテコな文鳥からメッセージを貰って、アンタ達がヤバイのを知ったから、心配していたんだ!」


「この国全体ではまだまだヤバイよ。でも、ドワーフの里に向かって来ていたモンスター達はこのアースドラゴンが一掃してくれた!」


 族長は大袈裟に驚いた。


「えぇ!? これがアースドラゴン?? 違うぞ! アースドラゴンはもっとずっとカッコイイ!」


 外皮からオリハルコンが剥がれ落ちたアースドラゴンは、容姿が以前と大きく異なる。その変化の様子を見てない者がすんなり前後を結び付けられないのは無理もないのかもしれない。


――セーブスよ。久しいな。


「なっ!? その声はアースドラゴンのクムクムちゃん!?」


――うむ。


「うっそだ! だってお前、こんな可愛いとか! 惚れ直しちまうだろ!!」


 族長はボロボロと涙を流しながら、ドラゴンの前脚にへばりついた。

 麗しい異種族間の友情(?)だ。

 マリは生暖かい気持ちになりながら成り行きを見守る。


――嬉しがるのはまだ早い。山からまだまだ毒素に侵されたモンスターが下りて来るぞ。気を引き締めよ。


「おぅ! 勿論だ!!」


 多分アースドラゴンの言う通りなのだ。登山口付近にいたモンスター達は退治したものの、イブンナ山は広大なので、他の個体がウジャウジャいるだろう。


 アースドラゴンの背から手早くアダマンタイトを下ろし、マリ達もドワーフの里の防衛戦に協力することにした。



 途切れ途切れに襲い来るモンスターとの戦闘の合間に、マリは手抜きの塩ラーメンを作り、前線に出ているドワーフに配った。自分達四人も里の入り口の近くに腰を下ろし、ガツガツ食べる。

 インスタントの袋麺に頼ってはいるものの、気温が低く、しかも空腹だからという事もあり、非常に美味しく感じられる。

 それは他の三人と、ドワーフ達も同じようで、恍惚とした表情を浮かべる者がチラホラ見受けられる。


「お前さん達! 頼まれていたオリハルコン製の剣が出来上がったぞ!」


 一早くラーメンを食べ終わった族長は、少しの間姿を消していたが、彼には大きすぎる剣を持ってマリ達に近寄って来た。彼が柄を掴み、鞘に対して水平に引くと、黒光りする刀身が現れた。

 マリはその武骨な美しさに目を奪われる。


「綺麗……」


「これはいい品だ。グレン君良かったね」


 公爵は目が肥えているのか、感心したように刀身を見つめ、しきりに頷いている。

 対するグレンは、まだオリハルコンの剣が自分の物だと認識出来ていないようで、目を瞬かせた。


「……本当に僕が貰ってもいいの?」


「アンタの為に作ってもらったのに、他に誰が使うの? それを使って魔王と戦って」


「うん……有難う」


 マリに後押しされ、グレンは漸く族長から剣を受け取った。

 遠慮しがちな性格の彼が受け取ってくれて、マリはホッとした。

 抜き身の剣を掲げてみているグレンの姿がやたら眩しい。これを見れただけでも、危険なイヴンナ山を登り、アースドラゴンと戦った甲斐があったというものだ。


 族長はセバスちゃんを相手に、オリハルコン製の剣のすばらしさを熱心に語っている。自分達の技術力に誇りを持っているのだろう。そんな彼をチラリと見て、マリは山に登る前に考えていた事を思い出した。


「ねぇねぇ、族長! ボールダーの欠片を買い取ってくれない!?」


 キャンプカーの車内は現在、アダマンタイトとボールダーの欠片が詰め込まれていて、通路が狭くなってしまっている。このままだと先が思いやられるので、荷物を減らす機会を逃したくはない。


「ボールダーの欠片!? 勿論買うぞ! 坑道を広げる時の爆破に使えるからな! アンタ達にはかなりの恩もあるし、高く買ってやる!」


「ほんと!? 今運び出すから待ってて!」



 段ボール10箱分のボールダーの欠片を、族長は金貨100枚で買ってくれた。公爵によると、通常はその二分の一程の価格で取引されているらしいので、おそらく族長は報奨金分を含む感じで金額を決めてくれたのだろう。

 夕暮れ時になると、山から下りて来るモンスターがだいぶ減ったので、アースドラゴンは山頂へと戻り、マリ達も王都へ向けて出発する事にした。

 ドワーフ達から夕食をご馳走させてほしいと言われたが、王都の状況を考えるとあまりノンビリともしていられず、断った。


 対モンスターの最前線に居るドワーフ達を除く者達に、マリ達は見送られる。


「また武器が必要になったらいつでも来てくれ。アンタ達四人のためなら格安・迅速に最高の物を用意してやる!」


「ドワーフの里の為に尽力していただき、有難うございます。この事は後世まで語りついでいきます」


 マリはキャンプカーの窓から身を乗り出し、族長とその母であるプタマの言葉に頷いた。


「皆有難う!! ここに来てから得られた物が多すぎて、申し訳ないくらいだよ。この里に来て良かった! これからまた大変になると思うけど、皆無事でいてね!」


「アンタの事、絶対忘れないぜ! またな!!」


 別れの挨拶を終えると、キャンプカーが走り出す。

 ドワーフ達は豆粒サイズになる程離れてもずっと手を振ってくれていた。

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