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火の神殿へ①

 ミクトラニ王国の宰相から褒美を受け取ってから、二日後の朝、マリ達はハリテクトリ侯領へと旅立った。

 プリマ・マテリアの枢機卿モイス・ソニシアに会って、彼が持っているであろうハリテクトリ侯領の情報を貰おうと考えたのだが、彼は一足先に火の神殿に旅立ったらしく、不在だった。

 彼はプリマ・マテリアの中でも火の神殿を担当するので、本職に関連する何らかの仕事があるのだろう。

 それはそれで好都合なので、マリは公爵に頼み、モイスに火の神殿との間に立ってくれるように連絡をしてもらった。


(火の神殿かぁ、どういう建物なんだろ? やっぱ熱い感じなのかな)


 これから行く場所の事を考えながら、窓の外を流れる風景を眺める。

 キャンプカーは既に八時間ほど走り、王都を取り囲む森を抜け、荒野地帯のただ中だ。

 マリは道から離れた所に生えたヒースに似た植物の姿に眉をひそめる。

 道の近くに生えたモノは車が巻き起こした風により、揺れているのだが、離れた所のヒースはびくともしていない。

 無風状態なのだ。


 マリがその様子に興味があるのは、理由がある。

 王都でちょっとした騒ぎが起こっているからだ。

 ここ数日の間、王都に風が吹き込まなくなっている。元々、森に囲まれて、たくさんの建物が建つ場所なので、弱い風しか吹かないらしいのだが。ここまで空気が循環しない日々が続くのは珍しいらしい。


 今走っている荒野でも風は吹かず、それがマリには不吉の前兆に思えてならなかった。


 これは、アレックスと元の世界に渡ってしまった風の神の影響なのではないかと考えている。


(神様って確か、瘴気を浄化したりもするんだよね? 風の神様がこの世界から消えてしまったら、空気の浄化はオーパーツ頼りになるのかな? それってメチャクチャやばいような……)


 壊れかけのオーパーツ。水の神からマリはその対処を頼まれているわけだが、急がなければならない状況といえそうだ。

 とは言っても、アダマンタイトが本当に存在するのか、そしてそれを錬金術スキルでどう扱ったらいいのか、どちらも不明すぎるので、どうにも落ち着かない。


 モコモコの膝掛けを抱きしめてボンヤリと考え事をしていると、セバスちゃんが楽し気に近寄って来た。


「マリお嬢様! 私ついに家事魔法を修得しましたよ!」


 水の神殿での一件以来、微妙な態度だった彼は、ここ数日の間ですっかり元の調子を取り戻していた。


「それってアンタのスキルなんだっけ?」


「そうです! 今使いますから、見ていてくださいね」


 セバスちゃんは手に持っていたテーブル用の小さなブラシをソファの上に置く。彼がそれに両手をかざすと、ブラシがピョンと飛び上がり、カサカサと左右に揺れながらソファの上を移動した。


「お~! 生き物みたい!」


「ニューヨークではロボット掃除機に頼りきっていますが、こちらの世界ではこのスキル、かなり有効そうです。キャンプカーの中を清潔に保ちますからね」


「有難う! ねぇ、変な事聞くけど、アンタってさ、ニューヨークに帰る気ある?」


 アリアにあれだけ未練タラタラな姿を見てしまったので、聞いてみないといけないと思っていた。

 もし少しでも悩んでいるようなら、ストロベリーフィールド家に義理立てしないで、好きにするようにと伝えたかった。

 マリの世話があるから、この世界に残れないなどと考えているようなら、余計なお世話だと言いたい。


「も……も……勿論帰りますよ! 私が居なかったら、誰がマリお嬢様の面倒を見るんですっ!?」


「あのさぁ、セバスちゃん__」


「__すいません! そろそろ公爵と運転を変わる頃合いなので失礼しますねっ!」


 彼は早口で言いきり、逃げる様に運転席側へと走り去った。


「本音を言わないなんて、アイツらしくない……」


 マリは呆れてため息をついた。

 彼とは古くからの付き合いだから、なるべく望む様な生活を支援してやりたいと考えている。


 報奨金の受け取りをグレンに断られてしまい、その分配の仕方を考え直しているのだが、もしセバスちゃんがこの世界に残る気なら、当面の生活が出来る分くらいは退職金として渡してあげたい。勿論グレンに対しても、何らかの形で渡すべきなので、今考えていることは、ニューヨークのブルックリン地区辺りの物件を買ってあげる事だ。

 住む場所を与えるだなんて、何だかヒモを抱え込むようで正直モヤモヤする。


(まぁ、パトロンと考えよう! でも、アイツってニューヨークに帰る気あるのかな? ずっと友達でいるって約束したけど……)


 世界を跨いでしまっては、親しくし続けるのは不可能だ。というか、普通に寂しい。


(まぁ、今考えてもしょうがないか)


 窓の風景は、いつしか荒野から、岩がゴロゴロと転がる大地に移り変わっていた。ハリテクトリ侯領には鉱山があると聞いていたのだが、思ったよりも植物の少ない地域のようだ。

 面白味にかける光景を見るのに飽き、マリは夕食作りを始める事にした。


 王都近くのダンジョンに潜って修行していたグレンのお土産で、香辛料がかなりあるので、それを使った料理にしたい。


(ホワイトペッパーとコリアンダーの種を使ってタイオムレツを作ろうかな。後は、パッタイとか? 暇だし、麺から打ってもいいな)


 火の神殿まではまだまだ遠いので、スパイスから多少なりともパワーを貰いたいところだ。


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