化物に食わせるB級グルメ②
三人との話し合いを終えた後、マリは私室に戻り、泥の様に眠った。
ベッドの中で、水の神から預かった石板を読んでみたのだが、謎の物質名や地名だらけだったので理解が難しく、数秒で眠りの世界へと旅立った。
夜が明け、朝食時に現れたアリアは、マリ達を水の神殿での打ち合わせへと呼んだ。昨夜神殿に戻ったアリアが、マリ達との話し合いの内容をイドラや神官達に伝えら、一度ちゃんと擦り合わせしようという事になったらしい。
神殿でのミーティングは、マリ達や水の神、水の神殿の神官達、神殿騎士からも数名出席し、さらにプリマ・マテリアのモイスまで加わり、かなりの大所帯になった。しかし、人数が多い割に、話はそれなりにスムーズに進んだ。
誰も彼も、カリュブディスを何とかしなければならないという思いは同じで、基本的に協力する姿勢でいるからだ。
話し合いで決まった作戦内容はこうだ。
決行は明日の昼。
今日中にマリ達は諸々の準備を整え、水の神殿側は、精鋭の神殿騎士をリザードマンの里へと放つ。
所謂刺客という奴だ。だが、元々リザードマン達は水の神を信仰していた為、対処は甘々にする予定らしい。彼等の水場に強力な睡眠薬を混入し、聖域での活動中に、増援が来ないようにしてくれるとのことだ。
そして明日、神殿騎士達が聖域を占拠するリザードマン達の注意を引きつけ、その間にグレンがカリュブディスの頭部を水面から引き上げる。それに目掛けてマリやセバスちゃん、そしてアリアが料理を投げつけたりするわけだ。
だが、カリュブディスは昨日見せた、大渦を使ってくる可能性が高く、非常に危険だ。だからその対処として、水の神や公爵、そしてモイスが防御役を買って出てくれた。
マリは大鍋にワインを汲みながら、その日程を反芻する。
(これが総力戦ってやつかぁ……)
大規模な組織と協力するのはこれが二度目。一度やったからといって、場馴れするわけでもなく、心臓は今からドキドキしている。
神殿から運んでもらった大量の大樽は、キャンプカーの側に積み上げていて、マリはそこからワインを汲み、キャンプカーの前方へと鍋を運ぶ。
神殿騎士等が、四箇所に火を起こしている。そのうちの一箇所に行き、火の番をしてくれている騎士に鍋を渡す。
「よろしく~」
「お任せください!」
グリューワインは、とにかく大量に用意する必要がある。予定としては、中型の舟一隻分は作る予定だ。当然キャンプカーのコンロだけでは足りない。そのため、外で火を起こし、そこで作る事にしたのだ。
ワインの樽と、焚き木の間を四往復したタイミングで、グレンがボウルを二つ抱えて近付いて来た。
「マリさん、果物を刻んだけど、僕が鍋に入れてもいい?」
神殿騎士達が、朝、市場で買い占めてくれた大量のフルーツは、グレンが魔法で刻んでくれている。マリはナイフを使ってチマチマ切るつもりでいたので、彼の効率的すぎる作業は有り難かった。
「うん。お願い!」
マリは彼に指図しながら、鍋の中にシナモンスティックや砂糖等をドシドシと投入する。
周囲はワインの香りが充満し、なかなかの危険地帯になっている。
酒を気化して喫煙する商品があるくらいなので、こういう蒸気でも普通に酔う。水の神殿は沖合にあるため、風は結構吹くのだが、注意が必要そうだ。
「グレン、時々でいいから、魔法で風を吹かせてくれる? 空気を新鮮にしないと、皆酔っ払いそう」
「分かった」
グレンが魔法を使うのを眺めている間に、水の神殿からセバスちゃんが木製の台車を持ってきてくれた。
「マリお嬢様、出来上がったら神殿へと運びますからね!」
「あ! もう持って行っていいよ! 沸騰させない方がいいんだ」
「了解しました!」
セバスちゃんが鍋を運び始めたので、マリはキャンプカーに戻る。
鍋が帰ってくるまでの間に、カレーマンを作りたい。昨夜のスパイスカレーだけでは量が足りないので、カレー自体を追加で作らなければならない。
「よーし! 今日中に作り終わるように、スパートかけないと!」
「フルーツは全部刻み終えたよ。何か手伝う?」
ちょうどキャンプカーに入ってきたグレンに、大きな独り言を聞かれてしまった。
マリは赤面したが、彼は特に気にしていないようなので、なんでもないフリをした。
「え、えーと……。カレーマンの皮を作ってほしい! 騎士達が買ってきてくれた小麦粉をワインの樽の側に置いてあるから、取り敢えずそれを持ってきて!」
「了解だよ」
◇
15時までの間にカレーマン用の大量のカレーと、皮を用意し、手伝いを申し出てくれた人達とせっせと作業する。
外に出したテーブルを囲むのは、マリ達の他に、アリアや神殿騎士達。皆真剣な表情で、具を皮に詰める。
「すいません……、具が飛び出てしまいましたぁ!」
「うげぇ!? 無意識のうちにハート型にしちまった!」
「あ……。すいません。地面に落としました」
神殿騎士達は不器用な人が多いのか、先ほどから小さなトラブルが多発している。でも、手伝ってくれるのは嬉しいし、大勢いるからお祭り感がある。
「落としたヤツ以外は全部採用! ドンドン包んで!」
「「「ラジャ!!!」」」




