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夕空の下で食べるスパイスカレー④

「お前の料理を食べた時、懐かしさと共に、やってもらわなければならない事があると思った。だけどそれが何なのかシッカリと認識出来なくて、気持ち悪かったの。だけど、過去のお前の姿を見て、漸くアレコレ繋がった気がするのよね」


 水の神の瞳に浮かぶ感情は、何だろうか。友愛? 打算? 食欲?

 マリは上手く読み取れなかった。だから取り敢えず彼に手鏡を返して、3歩ほど距離を取る。


「そう……。お前にやってもらわねばならない事のうち、一つだけはハッキリ分かった」


 何を言いはじめるのかと、心臓がうるさく鳴り出す。


「1000年前、こことは別の世界からカミラと名乗る女がやってきた。アレは最初、錬金術というありふれたスキルを持つだけのつまらない奴だったらしい。だけど、カミラはスキルを研ぎ澄ませ、アタシ達神々に……いえ、この世界に、大いなる遺産を与えてくれたのよ」


 カミラという女性は、もしかして手鏡に映った人物の事だろうか? 彼女の姿を見た瞬間、水の神の、マリを見る視線が変わった。「過去のお前の姿」というのは、前世とかの事を言っているんだろうか? その辺をハッキリ言ってくれないので、しっくりこないが、マリとカミラが何か関係があると考えているのは間違いない。


「神ですら創り出す事の出来ない自動浄化システム、オーパーツ。ソレにより、この世界は力無き人間が、神に頼りきらずとも安全に過ごす事の出来る環境に作り変えられた」


「オーパーツ?」


「見せてあげる」


 ネプトゥーヌスは一際大きな窓の前に立ち、手をかざす。情景が変わり、映し出されたのは、切り立った岩山の上にめり込む様に置かれたモニュメントだった。虹色に輝く材質で出来たそれは、巨大で、芍薬の花に似た形状をしている。

 だけど、マリが見ている短い時間の間に、その花弁の一つが、ハラリと散り、砕け散った。


「この岩山はプロメシスにあるのよ。その山頂のオーパーツは、海から噴き出す瘴気を日々浄化している。二十年の周期で、瘴気の噴出口は開いたり、閉じたりするのだけど、このオーパーツが無ければ、大気中の瘴気のお掃除はアタシ達神がチマチマとやらなければならない。カミラの贈り物を一番喜んだのは、アタシ達神々なのよ」


 水の神の話す内容を、少しは理解出来るかもしれない。レアネーに居た時、瘴気について色々考えていたからだ。


(なるほど、カミラという人が作ったオーパーツとやらがあるから、この世界は一時的に瘴気の濃度が高くなっても、時間の経過でだんだん濃度が下がっていくという事なのか)


 窓に映されるオーパーツの花弁が、今度は二枚連続で散った。


「壊れていってない……? それとも仕様なの?」


「1000年の時を経て、オーパーツが限界を迎えている……。今はその機能も限定的なのよ。だからアタシがせっせと働く事態になってるの」


 話の流れが、マズイ方に向っている。面倒ごとの矛先がマリに向きそうな気配を察し、先手を打つ。


「王都とかの優秀な錬金術師に新しいのを造ってもらえば?」


「お前、さっきの話聞いてた? 神ですら創れない物を、その辺の錬金術師が作れるわけないでしょう? ていうか、お前にやらせようとしてるのが伝わらないのかしら?」


「やれと言われても出来ないし。私は錬金術のスキルを持ってるみたいだけど、何を条件に発動しているのか不明だし、自動なんたらシステムだなんて、どう作ればいいのかサッパリ分かんない! 私はだたの一般人!!」


 マリが早口で一気に言い切ると、水の神は煩そうに顔をしかめた。


「あんな料理を作っといて、よくもまぁ、一般人だなんて言えたわねぇ。浄化の効果がえげつなかったわよ」


「普通に作っただけだよ」

 

「ふーん……。まぁ、いいわ。1000年前に、カミラに書かせた石版を保管していた気がするから探してくる。オーパーツの作り方がそこに載っているかもしれないからね。お前は、アタシのために飯炊きでもしてなさいな」


「え!? 待って! 一度水の神殿に戻ってくれないかな? キャンプカーの方が美味しい料理が作れる!」


 水の神の話し振りから察するに、暫くマリを解放する気はなさそうだ。水の神殿付近で最近起こっている事態についてはまだ聞けてないから、水の神と行動を共にするのはまぁいいのだが、先程の部屋に残して来た人達を早めに休ませてあげたい。

 ちゃっかりと条件を言ったマリに、水の神を片眉を上げた。

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