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第七十七話 微笑み~鉄板の上で交わし合う友愛~

 みさきと土上どのうえ、二人の楽しい休日の舞台はとある喫茶店からジュージューという音が響き渡る例のお好み焼き屋「大ひっくり返し8号店」へと移った。


「こんな格好をしてるから控え目にお茶で済ませようと思いましたが、やはり気取ったことをしていてはお腹が減るばかりですね」

「ふふっ、ドニーもやっぱりお腹減ってたんだね」

 二人はまだまだ若い乙女、ちょっとお茶したくらいでは物足りなかったのだ。

「それにしてもこれがお好み焼きですか。久しぶり過ぎてこんな物だったかと想ってしまいますね」

「ドニーはそんなに久しぶりなんだ」

「ええ、ここ9年は食べてないし見てもいません」

 ここはみさきのお気に入りの店である。みさきのおすすめで土上を招待したのであった。

「みさき、これはもう返してしまっていいのですか?」

「うん、もう良いと思うよ」

「では……」

 土上は体をやや前に倒す。彼女の大きな胸が強調される。彼女は鮮やかな手付きでクルリとお好み焼きを返してしまった。その時にはメイド服の上からでも胸が揺れるのが確認出来た。

 店主のオヤジは「おおっ!」と言ってその光景を覗いていた。

「先生、そちらさんは先生の所で雇っている方ですかい?先生はお嬢さんだったんですかね~。それか、アレですかい。ホラ、先生の良い人ってやつ~?」

 店主はニヤニヤして言う。

「ちょっとあんた、そういうのはセクハラだって言ってるだろう。常連と店を失いたくないなら黙って仕事しな」

 横からおかみさんが店長の発言を注意した。

「へいへい。先生、ゆっくりしていってよ」

 夫婦は仕事に戻る。


「みさき、ここには良く来るのですね」

「うん、とっても美味しいから」

 みさきはそう言うと、イカ玉を頬張った。

「みさきはそうして何でも美味しそうに食べるんでしたね。変わりませんね」

「ええ?そうなの?顔に出てる?」

「出てます」 

 二人とも青のりと紅生姜がたっぷり乗った物を食べている。

「みさきの歯に青のりがついていますね」

「気にしない気にしない。お好み焼きを食べる時に青のりが歯につくのが格好悪いと気にするのが格好悪いと言ってた人がいるわ」

 それを聞いて土上はクスリとしてみせる。

「それは、みさきにとっての良い人のことですか?」

「ええ!何を言うのよ。そんなのいません」

 土上はミックス玉を食い終えた。


「で、先程の続きですが、あなたは生徒に告白されたのですね」

「うぇ?何よいきなり」

「みさきは隠し事をするのが下手なようですね。あなたの腕っぷしは高く買います。しかしそうして秘密を守れないところは私の前職には向きませんね。一緒に行かなくて正解な部分もありましたね」

「ううん……そんなに態度に出ているものなの?」

「ええ、動揺ぶりでよく分かります」

「そうかぁ……」 

「で、どのような生徒に言い寄られたのですか」

 土上は洞察力に優れている。みさきは観念して話し始めた。

「う~ん。一年生の男の子だけど……」

「あなたはやはり年下に人気があるのですね。高校の時からそうでしたよ」

「ええ、そうだったのかな……」

「無論、年上からも人気はありましたよ。それでも年下からの指示の方がやや上回っていたと思います」

 これは土上調べである。信憑性は高い。

「ちょっと変わった子なのよね。妙に懐かれて妙に縁があるというか……」

「憎からず想っていると」

「そりゃ悪い子じゃないのよ。でもね、そういうのには答えられないじゃない」

「あなたのことです。かと言ってはっきりとお断りは言わないのでしょう」

「うん……まぁ……」

 土上は困っているみさきの表情を見ても目が笑っていた。


「店主、次は焼きそばをお願いします」

「ええ、ドニーまだ食べるの?」

「みさきだってまだいけるのでしょう。あなたは昔から良く食べる。ここは私が出します。一緒に食べましょう」

「……うん、実はまだまだいける」

 みさきはニコリと笑って答えた。

 それを見て土上は「みさきはそうしてニコニコしているのが良いと思いますよ」と言った。

 土上が優しい目をしてそんなことをいうものだから、みさきは照れて頬を赤く染めた。

「店主、先程の焼きそばは3つ玉でお願いします」

 今日の土上は大変ご機嫌であった。そして二人の胃袋だってそれは同じことであった。


「ほい来た!先生とメイドさんに愛を込めて焼くぜ!」

「だからあんた、そういうのセクハラになるよ!」

「ええ!これもかい?」

 店の夫婦は仲良く仕事をしていた。

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