第六十二話 ラブ・クエスチョン~女子の風呂上がり姿にドキドキするのは理屈じゃない~
入浴剤を用いて草津の湯と化した五所瓦家の風呂でみさきは疲れを癒やした。癒やす途中で邪魔もあった。風呂の扉がガラガラと開くと、あかりがお風呂にお邪魔して来た。
「先生、お背中をお流しします。このちょっと良い石鹸で優しいタッチで洗いますので」
この時みさきは既に湯船に漬かっていた。
「いえ、体も髪ももう洗ったわ」
「ああっ、遅かったか!」
あかりはみさきの背中を流したくて仕方なかった。
「じゃあ、いいや。このまま私も先生と一緒にゆるりと浸かろう」
さっさと体を流すとあかりも湯船に入ってきた。
「どうです先生。ひとり暮らしでしたら湯船に湯を溜めて入ることなんてそうないでしょ」
「ええ、確かにシャワーで終わらせることが多いわ」
「それにしても先生……やはりお肌がお綺麗」
「それはあかりさんだってそうでしょ」
女子二人が風呂に浸かるのを廊下で聞き耳を立てていたのがこれぞうとその父ごうぞうであった。
「姉さんはずるいな。女であることを最大限活かした特権ってやつだな」
「そうだな。にしても若い娘さんが我が家の風呂に入ってると思うと、いい年をしても心が弾むね」と恥ずかしげもなく言う父であった。
「あの先生は、その、ボインじゃないか。これぞうはああして大きいがいいのかい?」
「まぁ一概にはそうとは言えないね。しかし大は小を兼ねるともいうので、大きくて悪いことはない。ただ、僕はどちらかと言うと尻派なんだ」
「これぞう、お前って奴は通だな」
「ふふっ、お父さんの子供だからね」
スケベな親子は二人して風呂の中の水音のみを楽しむ。
「覗きなんて品のないことはしないさ、というか犯罪だしね。でも音を楽しむくらいは神様もお咎め無しだよね」
「うんうん、目がダメなら耳でくらい大目に見てくれるさ。お天道様はこれぞうの味方だよ」
これがこの親子の価値観である。
「二人共お止しなさい。盗み聞きっていう言葉もあるのだから、品がないよ」と言うのは母しずえであった。
「これは母さんに一本取られたね。さぁこれぞう、何を言ってるかまでは分からないちょっとのエコーと水音を楽しむようなマニアックなことはこれで終わりにして、向こうにいって何か小洒落たお菓子でもつまもうじゃないか」
「そうだねお父さん」
やがて風呂から上がってきたみさきを見て、これぞうは歓喜した。愛するみさき先生の風呂上がりが見れる。みさきはあかりの用意した白いパーカーを着ていた。みさきにとても似合っていた。学校ではまず見れないみさきのラフな格好、湿った髪。そして元々良い匂いがするみさきが更に全身に纏うは草津の湯の香り。これらの特殊効果はこれぞうをメロメロにさせた。
歓喜、この体を巡るはただ血液と歓喜のみ!これぞうは心の中でそう叫んでいた。
これぞうは顔を赤くしてみさきを見るばかりであった。それに気づくとみさきもこれぞうを見て頬を赤く染める。さすがに風呂上がりの姿を男子に見られるのは恥ずかしい。
「これぞう、いやらしい。先生をそんなに見つめないの」とあかりが注意する。
「ああっ、これは失敬……」
ただ女が風呂から上がっただけのこと。そう思いながらもこれぞうのドキドキは止まらない。彼はそんなちょっとのことにどうしてこうも喜び、ドキドキするのか自分で分からなかった。
その後、これぞうも風呂に浸かった。
「むむっ、先生で出汁を取った湯か……これは、さっさと捨てても良いものか……僕にしては変態臭いことを言ったな。いかんいかん……」
これぞうは舞い上がっていた。
これぞうが風呂から上がると、みさきはあかりに連れられて布団を敷いた部屋に案内されていた。
「先生、もうお休みですか?」
「ええ、さすがに疲れてしまって……」
「よろしければマッサージでも?」
「これぞう、それセクハラよ」とあかりが割って入る。
「冗談さ。では先生お休みなさい。僕も疲れたのでそろそろ寝ます」
これぞうがそう言うと、みさきもこれぞうの目を見る。
「ええ、今日は色々とありがとう。それとごめんなさいも言わないといけないことをしたわね」
「いえいえ、いいのですよ。では先生また明日」
「はい、お休みなさい」
これぞうとあかりは部屋を後にした。
そして居間に帰ってきた。
「ねぇねぇ姉さん、お休み前の挨拶のやり取りって何だか恋人みたいでいいね。ドキドキしちゃったよ」
「あんたは本当に浮かれているわね。あんたにはラッキーだったけど先生にとって今回のことは大問題なんだからあんまりはしゃぐんじゃないの」
「おっとそうだったね」
「ところで、ごめんなさいを言わないといけないこととは?」
「ああ、それがね。先生をバス停で見つけた時にね、先生が僕のことを痴漢か何かと間違ってすごい蹴りをくらわせたんだよ。あんなに可愛いのにあの先生強いんだなコレが」
「ふふ、なにそれ面白い」
「笑い事じゃないさ、僕は少しの間意識が飛んだんだからね。しかし意識が飛んでいたことがあっても、まだ眠いね。僕もそろそろ寝るよ」
その日これぞうは幸せ一杯で眠りについた。




