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第六十一話 そこはやっぱり草津の湯でしょ

「ピンポン」

 陽もすっかり暮れた時刻になって五所瓦ごしょがわら家の玄関チャイムが鳴った。

「むぅ?こんな時間に誰だ。我が家に18時を過ぎて訪ねて来る者があるのは珍しいことではないか?」

 時刻は20時くらい、時計を見て不思議に思いながら五所瓦家の大黒柱である五所瓦ごうぞうが言った。

「ばりばり……お父さん出なくていいの?」おかきをばりばり言わせながながら居間でテレビをみていたあかりが言った。

「あかり、お前が出ようとは思わないのか?」

「いいえ、ここはお父さんが行った方が良いと思うの。私の勘がそう言ってるわ」

「ふふ、なるほど。五所瓦の血の中でも一等感じやすいあかりがそう言うなら、ひとつその通りにしてみようではないか」と言いながら父は新聞(の4コマ漫画のページ)を折り畳んで玄関に向かった。この時、チャイムが鳴って既に2分が経過していた。せっかちな人ならもう帰っている。

 ごうぞうが玄関を開くと、そこにいたのは我らが主人公であった。「これぞう、お前夜行タスキなんてしてどこで遊んでたんだ?」

「いえ、お父さん。僕は夜遊びをするような人間じゃないですよ」

「これぞう、たまにはちっとの夜遊びをしたって父さんはガミガミ言うことはしないさ。チャイムなんか鳴らして、何か家に帰るのに気まずいことでもしたってのかい?まぁ何だっていいけどさ、ここはお前の家だ。他所他所しくチャイムなぞ鳴らさずとも、ただいまとだけ言って上がれば良いじゃないか」

「うん、全く言う通りですよお父さん。ただ……」

 ここで父ごうぞうの勘が働いた。息子が何かもじもじして続きを言い辛そうにしている。こういうことは以前にもあったのだ。

「はっは~、これぞう。さてはお前、また猫か犬でも拾ってきたんだろう。それで家に帰りづらいと。優しいのは良いが、動物を拾ってくるのはいかんと言ってるだろう。どれ、何を拾ったか正直に見せてみなさい」

「では、みさき先生こちらです」

 これぞうが呼びかけると、玄関からやや離れた所に立って待たされていたみさきが歩いてきた。それを見たごうぞうの驚いたこと。

「ヌウゥ!!よめ!」

 犬でも猫でもない。ごうぞうの前に現れたのは人間の女、そしてなぜか一発でこれぞうとの関係生が嫁だと検討をつけた。

「へっへへ、お父さん~嫁だなんて早いよ。まぁでも頭に未来のとつければそういうことですね」

「あの……」とみさきが口を開ければすぐにごうぞうが次の言葉を喋る。

「おいおい何だこの可愛らしい娘さんは!お前はまた犬猫からレベルアップしてすごいのを拾ってきたなぁ!まぁ寒いから中にお入りなさい。話は後だ」

 豪気。五所瓦の大黒柱ともなれば息子が女の一人や二人連れてきたところであっさり家に上げちゃう。ごうぞうは寛大にして偉大なこれぞうの父であった。


「お~い母さん客だぞ~」

 居間に夫と息子と知らない女が入って来るのを見た嫁のしずえは一瞬で困った勘違いをした。

「あなた!何その女は!私で生息子を捨て、あとはそれっきりって誓ったじゃない!そんな若い女と素敵なセカンドライフを始めようと言うの!」そう言いながらしずえはごうぞう目掛けて飛びかかり、ごうぞうの首に見事クロスチョップを食らわせた。五所瓦の女は少々嫉妬深く、割と簡単に手を上げる。血の気が多い。

 勘違いから母が暴れ、それを息子と娘とで落ち着かせるのに3分の時間を要した。

「痛いなぁ。なんて勘違い女だ。こちらは僕ではなくこれぞうの良い人だよ」腫れた頬をすりすりしながらごうぞうが言った。

 今は落ち着いたので居間に五所瓦の4人とみさきの5人が座っている。

「ごめんなさいあなた。愛する夫を一瞬でも殺そうと思ったなんて恥じるところだわ。それにしてもこの方はどなた?」

「お父さんお母さん聞いて下さい。この人は僕の先生で、そんでもってかくかくじかじかの事情がありましてね~」とこれぞうはかくかくじかじかな事情について5分程ペラペラと喋った。


「それは仕方ない。家に泊まっていただこう。しかしこれぞう、分かっているな。彼女は乙女であり先生だ。間違ってもアレなことはするなよ」

「はい、お父さん」と答えたこれぞうの顔は本の少しだけにやけていた。

「しかしあのポンコツ学校にこんなに若くて可愛い先生が来るなんてな~。春からこれぞうが楽しそうに学校に行くわけだ。僕が通ってた時にはジジイとババアの先生しかいなかったと言うのに」と過去を振り返って喋るごうぞうもまた大蛇おろち高校の卒業生であった。

「でしょ。みさき先生超可愛いんだから。あの桂子かつらこも先生にはベタ惚れだからね」とあかりが言った。

「へへっ、お父さんの時は間が悪かったのですね」またにやけてこれぞうが返す。 

「先生、家の子は色々アレで、身内の贔屓目で見ても変人の域を出ることのない子です。それでも良い子なので今後も色々とよろしくお願いします」と言って母しずえは頭を下げた。

「はっはぁ、まぁ教師として出来ることは……」みさきはこれぞう一人で一杯一杯のところに姉と両親まで出てきて困っていた。

「話したいことは色々とある。何せあのこれぞうが気に入った人で、しかも女ときているからね。これまで学友をチンパンジーか何かと想って接してた男がこの進歩はすごい!っとまぁそれは置いといて、先生、ひとっ風呂浴びてください。そして明日に備えて我が家でしっかり休んでください。あっ、よかったらビールでも付き合ってもらってもいいなぁ。たまには若い娘さんとも飲んでみたいよ~」

「あなた顔がいやらしい」と嫁が注意する。

「ごほん、ではこれぞう。先生を風呂まで案内してさしあげなさい。着替えは、胸以外はあかりのでサイズで合うだろうから、あかりは何か用意してさしあげなさい。パンツがいるというなら風呂に入ってる間にも私がコンビニまでひとっ走りしようか?」

「大丈夫よお父さん。パンツは新品のがあるの。それを穿いてもらいます。それからナチュラルにセクハラ発言しないで欲しいわ」

「え、パンツっていうと、どんなだい姉さん?」

「だめ、あんたには教えない」

 やはり五所瓦家、みさきの育った水野家とはノリが少々違っていた。しかしみさきは五所瓦家の面々を見て、仲良く暖かい家族だと想ったのである。

「では先生、先生のお好みの湯をお選びください」と言いながらこれぞうは入浴剤セットを取り出した。

「じゃあ、これ……」

 みさきが選んだの草津の湯であった。 

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