表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/224

第四十話 秋が来たら、だらけた体の筋肉を呼び覚ませ!

 運動部で毎日トレーニングを行っているということでもない限り、夏休み中に生徒達の体はきっとなまっている。そう考えるのが全くの間違いとは言えないだろう。そんな奴らの眠った筋肉を呼び覚ますための機会となるのが、運動会とか体育祭とか呼ばれる学校行事である。ありがた迷惑なことかもしれないが、生徒達にちょっとの運動をさせるために学校側で用意されているのだから仕方ない。そしてその行事は、例に漏れず我らが主人公これぞうの通う大蛇おろち高校でもきっちり行われることになっている。


「はぁ~まさか高校生になってまで運動会があるとは……ちょっとありえないことと想っていたので本当にやることになるとは驚いた」

 これぞうはもちろん乗る気ではない。普通にサボる腹でいる。学校という集団に属していても、彼はそこに身を置いてるだけであって、心理的には全く帰属意識がない。いつだって彼は自分の崇高な意志と、あとは気分で行動を決めている。これぞうはチームワークがとれない強調性無き人間と言える一方で、集団心理に左右されないクリアな視界でもって物事を捉える能力がある人物とも言える。こういった人間は、人の、果てには集団丸ごとにおける進化の足がかりとして社会集団の中に一人二人くらいはいた方が良いとされる。


「おい五所瓦ごしょがわら、体育祭準備の連絡のことなんだけど、お前だけ連絡がLINEじゃなく、メールか口頭になるからちょっと面倒なんだよな」

 教室の机に右頬をつけてだらけているこれぞうにクラスメイトの久松が声をかけた。

「え?面倒でも何でも伝令という君の仕事を全うするのに手段がどうのこうのと言っては駄目じゃないか」

「いや、それはそうなのだが……LINEで一斉送信なら皆に連絡事項が分かるけど、五所瓦には個別でメッセージを作成しないといけないから、ちょっと……いいや、大分手間なんだよな」

「まぁまぁ、だったら最悪僕には連絡はよこさないでいいよ。後日ゆっくりでもいいじゃないか」

 久松が何でこんな愚痴を言うのか、それはこういうことである。我らが主人公これぞうは、このご時世の高校生にしては珍しくスマホを有していない。彼が持っているのはガラケーであった。体育祭での連絡事項はLINEグループを作って行っているが、これぞうはそこには参加していない。連絡責任は、実行委員の久松にあった。

「まぁまぁ仕方ないよ。LINEが出来ないんだから、五所瓦君には遅れても私が連絡しようか?」

 そう言って来たのは久松と同じく実行委員になった松野であった。

「いやいや松野さん、君の手を煩わせることはないさ、そこはこの久松君がやってくれるのだから君は君の仕事に専念するがいい」

 これぞうはとりあえず偉そうだ。

「まあ男子の方は確かにこっちで責任持ちだからな。松野さん、ここはこっちで片付けるよ」

 久松も面倒な友人を持って大変である。


「それにしても五所瓦、お前ちょっとはやる気だせよ」

「はぁ~全く、ここに身を置くには面倒な学業の面で基準以上の成績を修めないといけないじゃないか。僕は赤点を取らない程度の学業成績を維持するのでいっぱいいっぱいなのさ。それ一つですごい面倒なのに、その上運動会の準備をして、運動自体もやれってなると、忙しい僕の身にはオーバーワークだよ」

「体育祭って言えよな」と久松は口を挟んだ。

「高校生になってもまだこんなことがあるなんてね。まぁそれは百歩譲って良しとてもだ、何もこのクソ暑い中やることもないだろうに」

 今は9月、秋季体育祭とは謳っても実際の所はまだまだ暑い。

「確かに暑いよなぁ今年……」

 そう言いながら久松は遠い目をする。


「時に久松君、そのLINEグループってのはどんなだい?」

「ああ、こんなのだよ」

 そう言って久松はこれぞうにスマホを見せた。そしてこれぞうは画面上に愛しいあの人の名前を見つける。メッセージ発信者が「水野みさき」と表記されているのであった。

「ん、この名は夢にまで出てくるみさき先生のもの。どういうこと?」

「どういうことってなぁお前、俺たちにあれをしろこれをしろって指示を最初に発信してるのは水野先生なんだよ」

「何だって!このお祭り騒ぎの指揮を取っているのはみさき先生だったのか!これは知らなかった」

「お前なぁ聞いとけよな、俺たちのグループの指導は水野先生がしてるんだから」

「君、それを早く言いたまえよ。だったら、体育祭で何の仕事をしてるのか知らないけど、僕たちのグループで担当している仕事を真面目にやってれば、みさき先生とお近づきになれるというものではないか」

 不真面目なこれぞうは、自分たちのクラスでやる役割を何も分かっていない。

「いや、そこまでのことは知らないが、まぁ真面目にやれば先生からの印象は良いだろうよ」

「ふふ、クソつまんないと想った体育祭にもちょっとの楽しみが出来たってものじゃないか」

 これぞうがちょっと元気になった。そこへ松野が再びやって来た。

「あっ、五所瓦君元気になったの?じゃあ放課後に椅子とか運ぶの手伝ってね」

「ふふっ良かろうそのくらいのことなら。あと僕が元気じゃなかったことなんて、義務教育が終わってから今日までありはしないのだよ。ふふ……」

 これぞうは松野に気持ち悪い笑いを向けた。

「まぁちょっとは協力的になったみたいだからこれでよしだな」

 久松はちょっと安心したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ