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第三十三話 起きてビックリ肌色魔人

 桂子がやって来た次の日の朝のことである。

「わわっ!!」

 これぞうは異変に気づき大声をあげた。彼が布団から起き上がろうと手をついたら何だか分からない柔らかい物を掴んだからだ。

「ヌゥ!!これは……おっぱい……」

 そう彼が触ったのは他でもないおっぱい。これと感触が似たものはあまりない。これぞうは昨晩一人で布団に入ったはずだが、今彼の隣に寝ているのは美しき少女、そう従姉妹の龍王院桂子りゅうおういんかつらこであった。

「う~ん、これぞう……」

 桂子が目を覚ましたと分かり、これぞうはさっとおっぱいから手を離す。

「桂子ちゃん、そこで何をしているんだ!君ね、嫁入り前の婦女子が男子の布団に潜り込むなどあってはならないことだぞ。いや、どこかのかップルで合意で行うなら僕は口は挟まない。しかし少なくとも僕個人としては無しなんだ。さっさと起きたまえ」

 そう言ってこれぞうが布団を剥ぐと、そこにはほとんど肌色。桂子の寝姿がどんなかは少々刺激なもので描写できない。想像して欲しい。

「君は……なんともまぁ、刺激的な格好で寝ているんだ。まぁ個人の趣味にはとやかく言うものではないが、これは男性の見ていないところで楽しむものだろ」

「あら?これぞうはこういうのお嫌い?」

「嫌いではないが……」

 桂子は大学一年生。体つきはもう十分に大人の女性のそれと言えよう。艶のある白い肌、布団の上を泳ぐように広がる美しい黒髪、そしてこれぞうを誘惑するかのような微笑み。これらを前にして、さすがのこれぞうも普段通りではいられない。これぞうはゆっくりと剥いだ布団を元に戻した。

「こんなところを姉さんに見られたら事だぞ」

「もう、これぞうはいつだってあかりの目ばかり気にするんだから。あなたの方もシスコンなの?」

「何さシスコンって、ただ愛すべき姉さんの存在をいつだって気にかけるのは弟として当然さ。家族で姉弟なのだから」

 その時これぞうの部屋の扉がゆっくりと開く。

「はぁ!姉さん!違うからね!僕は何もしていないから」

 扉の向こうには怒ったあかりの顔が覗く。

「桂子、あんた昨日は私の部屋で寝たのに、夢遊病が相当ひどいのかしら?」

「あら、私はいつだって快眠快便なのが取り柄よ。普通に起きたままここに来て熟睡したわ」

「ああ桂子ちゃん、女子が便のことは言わない方が良いよ」


 その時、玄関ではピンポンの音が鳴る。

「おはようございま~す」

 これぞうの母五所瓦しずえが来客の応対に出た。

「あら、甲本さんじゃない久しぶり!」

「ああ奥さん久しぶりです。桂子お嬢様の荷物一式をお持ちしました。あのお嬢様もスケジュールを立てるも変更するも急でしてね。荷物の到着が遅れましたよ~。で、お嬢様の方はどんなで?」

 その時、二階からドンドンと騒ぐ音がしてあかりと桂子の元気な声が聞こえた。

「あの通り、皆で楽しくやってるわ」

「良かったです。お嬢様はこれぞう君とあかりさんが大好きですからね。お屋敷の方にいられるとうるさいばかりで、今はお屋敷が静かで静かで良いもんですよ。僕たちは今だけ夏休みです」

「あらあらそんなことを言っては桂子ちゃんに悪いわ」

「いやいや、あのお嬢様は事実素行が悪いですからね。まぁそちらで少しの間面倒をお願いします。あ、これはあのうっかりお嬢様がアメリカでお土産を買い忘れ、慌てて日本の空港で買ったよく知らないお菓子です。空港に売ってるものだから大概おいしいはずです。皆様でどうぞ」

「これはどうも。甲本さん、あなた鮭は好きじゃない?たくさんもらって今焼いてるの」

「ええ!鮭ですって!僕みたいな海育ちはエラで呼吸してる物ならだいたい好物ですよ」

「だったら是非、上がって食べていってください」

「これはついてる。朝飯代が浮いたな」

 この調子の良い男は名を甲本といい、龍王院家で雇われて桂子の使用人をしている。主に対しては極めてフランクに接している。仕事は出来るがこん感じで少々チャラい感じがする。


 一悶着あった三人が下の階に降りて来た。

「あっお嬢様並びにこれぞう君とあかりさん、おはようっす。先に朝ごはん頂いてます。いや~奥さん、この大根の漬けたやつ、最高ですね。母の料理を思い出します」

「甲本!何先に食べてんのよ」

「まぁまぁお嬢様言いっこなしですよ。今は使用人の業務はオフなんですから」 

 食卓についていたこれぞうの父五所瓦ごうぞうは「甲本さん、君は酒はいくのかい?いいのがあるんだ、休みならどうだい一杯?」

「え、鮭と酒の合わせ技ってわけですか。しかし旦那さんまだ日が高いし、それに僕はまだ19歳で未成年ですから遠慮しますよ」

「これはすまない。君はまだ20になってなかったのか、これはうっかりだったね」 

 そう言うとごうぞうは新聞に目をやった。

 甲本はこれまでも桂子に関わる用事で何度か五所瓦家に出入りしている。砕けまくった態度がこの家の人達の気質的に受けが良かったのでこんな感じでかなり馴染んでいる。

「じゃあ今日はこれぞうにどこかに連れて行ってもらおう。いいよねこれぞう、桂子お姉ちゃんとデートで」

「えっ、まぁ構わないよ」 

 こんな感じで今朝の五所瓦家の食卓は人数が多くて賑やかなものとなった。 

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