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第百九十三話 バズーカが二人を捉える

 あかりは部屋の窓辺に頬杖をついて海に目をやる。

「朝から元気ね二人共」

 あかりの視線の先にはこれぞうとみさきの姿が見える。大きな海で動く小さな二人の姿を見て、あかりは思わず微笑む。

「これぞうもみさきも青春してるわね」

 あかりの後ろには双眼鏡で二人を覗く桂子がいた。

「これぞう、鼻の下伸びてるわね……みさきが魅力的だから仕方ないか」

「桂子、それこっちにも貸しなさいよ」

 あかりは桂子から双眼鏡を奪い取ると、遠くにいる弟を近くに見る。

「いいぞこれぞう、頑張って泳ぐのよ」あかりは弟の進化の時を応援している。

「そう言えば昨日のあなたのレクチャーはダメダメだったのよね。やはり愛と腕よね。どちらも叶えるならみさきが適任だわ」

「え?私の教え方が悪いとは想わないけど……これぞうが覚えが悪くて、みさき先生は覚えが悪い奴にも丁寧に教える訓練を受けているのよ。うん、そうだわ」

 桂子の言い分に不満げに返すあかりだった。

「あらあらあかり、頬を膨らませて。みさきの方が教え方が上手いから妬いてるの?あなたもブラコンよね」

「うるさいわね。それよりもあんた、その派手な下着何とかしなさいよ。朝に見るには色合いがきついわ」

「まぁ失礼なこと、上物のシルク素材なのに!」

「素材じゃなくて色よ色!それにデザインも」

 桂子の刺激的な下着がどんなものだったか、それは私の胸にだけしまっておいて説明は控えておこう。


「これぞうとみさき、二人の青春のワンショットを撮りたいわね」

「カメラ、どうするの?だいぶ距離あるけど」

「任せなさい」と言うと桂子はパンパンと両手を打った。

 すると部屋の扉を開いて使用人の甲本が現れた。

「はい何でしょうか桂子お嬢さん」

「何でしょうか、なんて確認せずに分かって欲しいものだわ」

「またか、はいはい、あれですね。え~と、これぞう君を脅かしてやりたいからここから狙えるパチンコでも出せって話ですよね」

「全然違うわ。ほら、ナイスな写真を撮る用に持ってこさせたあのバズーカみたいなカメラ、アレを持ってきなさい」

「はいただいま。10秒で戻ります」

 10秒後、甲本はバズーカみたいに望遠レンズが長いカメラを持ってきた。

「これこれ、これを使えば遠くでも撮れるわ」桂子はバズーカもといカメラを構える。

「お嬢さん、そんな薄い格好で写真を撮るなんて、何か変質者みたいじゃないですか。さっさと服を着たらどうです?では僕はこれで」言うと甲本は部屋を出ていった。

「な、甲本!私の下着姿をぉぉ!」

 桂子は今になってそれに気づく。

「いや、あんた気づいてなかったの?そっちから見せてるんだと想ったけど」

「そんな訳ないでしょ。何て失礼な使用人なのかしら」桂子は顔を赤くして怒る。

「写真は私に任せて、あんたは服着なさいよ」


 あかりはパシャパシャとシャッターを切る。

「起きたらみさき先生がいないから、もしかしてもしかすると、これぞうに夜這いでもかけに行ったのかと想ったけど、ああして健全に大自然の中で仲良くやってるんだから微笑ましいわよね」

 あかりは二人を見て嬉しくなった。

「これぞう、この旅行でみさきに仕掛けることが出来たのかしら?」と服を着終えた桂子が言った。

「さぁ?でもこれぞうはやる時にはやるからね。となると、もうやってるかもね」

「これぞう、すっかり泳げるようになったわね。やはり愛の力は大きい。さすがみさきだわ」

「桂子、今回はお礼を言わないとね。これぞうがすごく喜んでいるもの」

「いいのよ。私達の仲でしょ。まぁあの二人を見るのは私の趣味でもあるからね。これぞう、みさき、本当に二人共興味をそそるわ」


「さて、お腹が空いたし、甲本に朝ごはんを用意させましょう」

「そうね。確かにお腹が減った。」

「ななことひよりはまだ寝ているかしら。ふっふ、襲撃をかけようかしら」桂子は悪い顔で笑う。

「あんたね、言うけど、二人から結構怖がられてるからね」

「なんですって!だったら尚更親交を深めるための襲撃をかけるべきね」

 桂子は部屋を出て乙女たちの寝室に向かう。あかりもそれを追うのだった。

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