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第百八十三話 砂浜に舞え!天使達とその他

 松野がトスして打ち上げたボールを、ひよりはジャンプ一番アタックした。彼女の放つ強烈な弾丸は、コートのライン際めがけて飛んでいく。それに即座に反応したみさきは回転レシーブでボールを拾い上げる。砂に突き刺さると思ったボールは予想に反して再び虚空を舞う。それを久松がトスしてコート右端に流すとそこには宙に浮く桂子がスタンバイしていた。彼女は重力を味方に付けて腕を振り下ろした。華奢なお嬢様の腕から放たれるとはとうてい思えない高速アタックが返された。それはこれぞうの真正面に飛んでくる。

「うげぇ!」

 桂子の渾身のアタックはこれぞうの額に打つかった。意図せず出されたこれぞうのヘディンパスは彼の後ろに控えるあかりに繋がった。あかりがレシーブでボールを拾うと、それに合わせてアタッカーの松野が宙を舞う。滞空時間が長い。高度を十分に稼いで、松野は高い位置から相手コートめがけてアタックを叩き込んだ。久松がそれ飛びついたが、松野の攻撃が早い。久松はボールを拾い上げることが出来ず、ボールは白い砂に埋まっていく。

「だぁ~早いなぁ!!」

 悔しいが、それでも楽しそうに笑顔たっぷりで久松が声を上げた。

「どんまいどんまい!次よ」久松と同じチームのみさきが声をかける。

「はぁはぁ。痛い、そんで暑いよぉ……」これぞうは従姉妹に割られそうになった額を擦った。


 あかりに引っ張られてこれぞうはビーチバレーに参加することとなった。

 チーム分けは、松野、ひより、これぞう、あかり対みさき、久松、桂子だった。4対3となるが、これぞうはほぼほぼ戦力外なのでこれでもゲームが成立していた。

 これぞうは思った。他の6人がマジすぎる。自分以外の6人は皆高い運動能力を誇っていた。これぞうは決して運動音痴ではないのだが、ちょっとしたルールが絡んだ団競技は大体不得意だった。どこまで行っても個人勢、それが彼の宿命であった。

 みさき、松野、ひよりが普段からスポーツで鍛えていることは知っていたが、まさか姉たちもマジになって、しかもかなり動けるとは知らなかった。これぞうは皆の熱量に驚かされていた。正直言うと暑いので、日陰でジュースでも飲みたいと想っていた。

 そんな具合で一同は小一時間ビーチバレーで盛り上がった。


「はぁ、はぁ、僕だって最近はトレーニングをしていたけど、みさき先生や桂子ちゃんの攻撃なんかをいつまでも受けてたら身がボロボロになっちゃうよ。まだまだ綺麗な体でいたいもんね」

 傷ついたこれぞうはパラソルの下のビニールシートに寝転んだ。

「はぁ~楽しかったな~」

 みさきは額に汗して大変満足そうである。彼女は心から体を動かすことが好きだった。湧き出る生命力は、体を動かすことで外に逃がすしかないのだ。

「先生、やっぱりすごいんですね。際どい球でも良く拾うし」みさきと対決した感想をひよりが口にした。

「ははっ、六平ろくだいらさんもよく動くわよ。他の皆もね。松野さんと組んでビーチバレー大会でも出たら良い所まで行けるかもね」

「たまには庶民の戯れ事ってのも良いものね。思わず興奮しちゃったわ」しっかり動いたお嬢様が言う。そして彼女はうっとりして「しかし、コートに舞う美少女達は……目の保養だったわ」と付け加える。

 桂子の言う通り、コートを所狭しと駆け巡るみさきの姿は確かに蝶にも蜂にも見える素晴らしきものであった。これぞうは己の目で見てそう感じた。

 これぞうが打球の処理にしくじったのは相手が強すぎるということもあったが、みさきが水着姿で飛んだり跳ねたりするのが素敵すぎてそっちに目を奪われたことも原因となっていた。

「うむ。痛い思いもしたが、海、良いものだ」これぞうはそう想った。


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