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第百八十一話 この夏始まる男女7人夏旅行

 夏休みが始まり8月になった。


 眼の前に広がるのは白い砂、青い海、それよりもっと青い空、そして美しき砂浜の天使達。中でもこれぞうの目を一番引くのがみさきであった。

「ああ、ビーチエンジェル……」

 これぞうは恍惚とした表情で一言漏らした。

「お~い、五所瓦~」

 友人の久松がこれぞうの眼の前で手を振るが、彼はそれに反応せずにみさきに見惚れている。みさきは白いビキニ姿でその上に白いパーカーを着ていた。パーカーの丈から覗く彼女の白く美しい脚は白い砂浜に負けない輝きを持っている。髪はポニーテールにし、麦わら帽子を被っていた。

 目の前に広がる自然、それをバックに立つ愛しき女、これぞうにはそのどれもが美しいものにしか見えなかった。

「僕がこうして目の保養が過ぎる美しき景色を見ている間にも、世界のどこかでは争いが起こり、それによって平和と呼ぶには遠すぎる景色を見ている人だっているんだと想う。しかし、これを見れば、そういう事情も一時は忘れてしまいそうだ。だってそんな世界の上でも、今僕は美しい景色、自分が見たかった景色をしっかり拝んで幸せになっているのだから」これぞうはワールドワイドな視野を持って現在浸る感動について語り始めた。

「五所瓦……なんかポエム読んでるみたいだけど大丈夫か?」


 現在これぞう達一行は、龍王院家で有しているプライベートビーチに来ている。ここにいるのはこれぞう、あかり、桂子、みさき、久松、松野、ひよりの7人であった。一般人は入ってこれない場所なので、贅沢に7人だけでビーチを独占している。


 旅行計画最初期段階で、みさきを同行させる策が練られた。

 これぞうとあかりと桂子は三人してみさき宅に押しかけ、彼女を旅行に誘った。

 みさきはどうしたものか困っていたが、そこは二人のお姉ちゃんが活躍してくれた。

 これぞうが修学旅行を経験できないのは可哀想すぎる。これぞうがまともに学校に通うためのモチベーションの全てはみさきから来ている。よって、みさきと楽しい旅行の想い出ができれば彼の学生生活は満足のいくものとなる。可哀想なこれぞうのためにどうか貴重な休みの幾らかを分けてくれ。二人がこういった内容を臭い芝居を交えて伝えると、みさきは渋々了承してくれた。

 送り迎えの全ても龍王院家で面倒を見ることとなり、一行は快適な旅路を経て現在海を前にしていた。


 身支度が簡単に済む男性陣は、先にペンションからビーチに出てパラソルを立てていた。そこに水着姿に着替えた女性陣が遅れてやって来た。


「これぞう!水野先生ばかり見てこっちにはなにもないわけ?」ひよりはこれぞうの頬を引っ張って言った。

「うわぁ、痛いなぁ」

「そうよこれぞう。桂子お姉ちゃんの素晴らしき水着姿を前にして何の感想も言えないなんて、それはジェントルマンとして死を迎えたのと同じことよ」どこの理屈を引っ張ってきたのか知らないが、桂子は独自の考えをこれぞうに押し付けた。

「はは、皆眩しい水着姿をしているじゃないか」

「これぞう、眩しいのは太陽のせいでしょ。そうじゃなくて、これぞうの視覚で捉えた水着自体の感想を言いなよ」ひよりは難しいことを言ってきた。

 これぞうは正直言うともっとみさきを眺めていたかったが、このうるさいのを沈めなければならない。

「六平は普段から運動をしていているから素肌のどこを出しても問題ない。努力して作った体にその赤いビキニはよく映える。桂子さんは高級感ある水着で艶やかに見えるが、水着の性能自体に甘えていなく、身につける本人自体もしっかり体を気遣っている。着るでなく着せられるって例えがあるが、その点桂子さんは自分でしっかり着こなせている。素晴らしい」久松は分析結果を元に、乙女が確実に喜ぶ言葉を選んでペラペラと喋った。

 急な分析が入って乙女二人はちょっとびっくりしたが喜んでいる。

「ふ~ん、いい事言えるじゃない久松」ひよりは照れを隠しきれずご機嫌でいた。

「うんうん、久松は良く見ているし、ちゃんと女性が喜ぶツボを心がけた発言も出来ているわ。合格ね。よしよし」そう言うと桂子は久松を撫でる。

「これぞう、あなたもこれくらいスラスラ言えないと、女の二人や三人だって落とすことが出来ないわよ」桂子はこれぞうに言う。

「ふふ、その落とすってのはたった一人で良いんだよ」言うとこれぞうはみさきを見つめる。彼女はこれぞうから離れた所をゆっくりと歩いて来ている。

「これぞう、あんまり鼻の下を伸ばすんじゃないの」あかりがこれぞうに言った。

「ああ、姉さん。姉さんの水着姿も……綺麗だね」

 これにはあかりにもドキッとした。

 これぞうは姉が美人であることは小学生の時から知っていた。一般的に見て姉は多くの人よりも綺麗な女である。彼にとってそれは特別目の行くことではないただの事実だった。

「もうこれぞうったら、シスコンだなぁ」言うと姉は弟の肩を強く押した。それが強いものだからこれぞうは砂浜の上に倒れた。

「大丈夫?」上から松野が声をかけた。

「あ、松野さん。君は着痩せするんだね」松野を見上げながらこれぞうは言った。それに松野は顔を赤くした。実際彼女は脱いが方がすごかった。それは私の目でも確認している。

「これぞう、それはまぁ褒めてるんでしょうけど、ちょっと違うわ」と桂子はツッコミを入れた。


 一行がはしゃいでるところにやっとみさきが合流した。

「みさき先生、いやぁ、今日はこんなところまでお出かけ頂いてありがとうございます」

「いいえ、まさか修学旅行に行っていない生徒がいるとは想わなかったので、まぁ今日は特別ね」みさきは水着姿を見られて少し恥ずかしいようだったが、それでも笑顔で答えた。

「いやぁ~どこかの山奥に行くこともなく地上の楽園を見られたぞ。幸せだなぁ~」

 これぞうは低い土地に地上の楽園を見た。

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