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第百十九話 正月に帰る実家の特別感といったらたまんない

 これぞうが初詣に行って決意を新たにしたその一方で、作品ヒロインのみさきもまたまったりと正月を過ごしていた。これぞうとみさきは同じ空の下にいたが、違う街で過ごしていた。みさきは正月を実家で過ごすため、年末にはソニックオロチシティを出た。そしてそこから2つ向こうにあるポイズンマムシシティに帰って来たのであった。みさきにとっては久しぶりの地元、そして実家。さしものみさきも親元に帰ったとなれば安心しきって少々はだらけた生活を送っていた。これを許して受け入れてくれるから実家は、そして両親ってのは良いものだと言える。

 今日は1月3日。


「おーいみさきちゃん、今日もカステラいっとく?」おそらくこの街では年間で一番カステラを食っていると思われるみさきの父がカステラを勧めてきた。

「ありがとう。でも年賀状の返事書かなきゃ」みさきは届いた年賀状の返事を書いていた。

「おやおや、これぞう君からもしっかり来てるね」父は机に置かれたこれぞうからの年賀状を手に取った。

「うん、でもどうしてあの子ここの住所がわかったんだろう?」

「そりゃ簡単、このお父さんが教えたからだよ」

「え!そうだったの?」

「まぁね。歳こそ大きく違えど、我々は本気で勝負をした仲だ。住所を教えて手紙の一枚二枚くらいのやり取りをしたって問題ないだろう」

「まさかお父さんが教えたとは……」

「それも彼から聞いてきたんだよ」

「ああ、あの子ならそうして抜け目なく立ち回りそうね」

「はは、あんなに先生を慕って、可愛らしいところがあるじゃないか。お父さんが生徒だった時なんかはシワと白髪によってかつての美貌の名残も見えなくなった老齢の女の先生しかいなかったもんだよ。これぞう君にとっては、こうも歳の近い若い先生なんてのはかなり眩しく見えるんじゃないかな」

「へぇ~男子の考えることなんてよく分かんないわ」

「みさきちゃんはもっと男心を学ぶべきだね。しかし学んでから彼でも他の男のとこでも行かれると困るな。お父さんはみさきちゃんが望むなら、ずっと独身でこの家にいてくれても構わないと想ってるからね」

「はいはい、そうなったらよろしくね」

 これぞうは抜かりなく父を通してみさきの実家住所を抑えていた。実はこれぞう、最高の一枚を仕上げようと3時間もかけてたった一枚の年賀状を仕上げた。今年彼が送った年賀状は、水野みさき宛の物ただ一枚のみである。


「お姉ちゃん、明日は同窓会行くんだよね?」妹のみすずが聞いてきた。

「うん、行くことになった」

「ねえねえ、こういうのに参加したきっかけで芽生える恋があって、それを同窓会ラブとかって言うじゃない?」

「うん、聞くわねそんなことも」

「お姉ちゃんにもそういうチャンスあるんじゃない?」みずすはこの手の恋バナを面白がる年頃なので、年相応に面白がって言った。

「はぁ?ないわよ」

「あるかもしれないじゃん。お姉ちゃんには何にもなくても、男の方が、久しぶりに水野を見てドキっとしたぜ、とかなりそうじゃん?ほら、お姉ちゃん背もおっぱいも大きくなったし」みすずは男のセリフの時には出来る限り声を低くして喋った。

「う~ん、でもないわね」

「もし何か言われたりしたら私にも教えてね」

「だからないし、あっても言わないわよ」

「え~お姉ちゃんケチ~。あっ、それともこれぞう君の気持ちを想うと、ここで急に出てきた男にはなびけないって考えかな?」

「五所瓦君は関係ないの」みさきがそう返した時、これぞうへの年賀状を書き終えた。

 ここでまた父が声をかけてくる。

「お~いみさきちゃん」

 近くにいても遠くにいても関係なく「お~い」を言うのが父の口癖であった。今父は、紙の上を走る鉛筆の音だって聞こえるくらい近くにいた。

「これから手紙を出しにいくんだろ?だったらさ、ついでに例の菓子屋さんで注文してるの受け取って来てくれない?金なら先払いしてるからさ」

「え?またお菓子頼んだの?」

「だってさぁ、正月だからって餅ばかり食ってると飽きるだろ。スイーツでもがぶりと行きたいよ」と答える父の右手にはカステラが握られている。彼はカステラを切り分けることなく、丸々一本を上から下までかぶりつくスタイルで味わうのだ。

「いや、今手にし、そして口にもしてるそれは何よ?」

「ああカステラはなんて言うかさ、特別枠。常日頃から食べてなきゃ落ち着かないよ。今回頼んだのはロールケーキでカステラじゃないからさ。持って帰って来たらみさきちゃんも一緒に食べよう。お父さんは、棚の奥の方にあるちょっと良い紅茶を出して待っていようじゃないか」

「お姉ちゃん気をつけて行って来てね。私も楽しみに待ってるから」と言うとみすずはテレビのバラエティに集中し始めた。

 

 みさきは、やはり自分の家族はマイペースだと思い、それが落ち着くのであった。 

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