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第百六話 頭上に実るは柔らかき二つの果実

「んっ……」

 これぞうはしばしの眠りから目覚めた。

「むむ、ここは。ん、何だ、枕変えたんんだっけ?なかなか良いじゃないか。さて起きねば」

 これぞうは仰向け状態から腹に力を入れて起き上がる。

 ポヨン。

「アウチ!」

 これぞうは何かに頭をぶつけてまた枕に頭を沈めた。

「何だろうか。柔らかい天井にぶつかったぞ。今度はこうして、頭を横に持っていってと……」

 これぞうは真上に立ち上がるのでなく、体を少しねじって今度は頭をぶつけないように立ち上がった。

「ふう、どこだここは?何故にぼくは寝ていた?」

 これぞうは首を回し、そして下を見た。

 そこにはしゃがんだ輝美の姿があった。彼女は固まっている。

 ここでこれぞうは気づく。先程の良い枕は彼女の膝。頭をぶつけた柔らかい天井は彼女のおっぱいであった。そして自分は彼女を追い、その末に力尽きて倒れたのだった。


「ああ、全て思い出した。輝美さんだね」

「ああ……生まれて始めて男の子に膝枕して、それに胸を……」

 輝美はスクスクと成長した胸を両手で抑えた。

「わざとやってるんじゃないでしょうね?」

「ああ!これはこれは失礼を。まさか、わざとだなんて、というかなぜ膝枕?」

「あなたが急に倒れて、地面に寝かせとくのも可哀想だからそうしたの。悪かった?」

「いやいや、それどころか良い気持ち……て何を言わせるんだ輝美さん」

 これぞうは勝手に語っていた。

 これぞうは今になっておっぱいに頭をぶつけたことを思い出した。

「ああ、いかん。こないだみさき先生の胸をちょっと見てしまっていやらしいと言われたばかりでないか。今は忘れたい僕にとっての煩悩の種が、彼女から離れてもまた僕を悩ますというのか」

 これぞうは少し前におっぱいに関係でミスをしたので、今は頭の中からおっぱいを取り除きたかった。

「みさき先生?今あなたみさき先生と言ったわね?」

「ええ、僕があの人の名前を間違えるはずがない。僕の尊敬する師、それがみさき先生」

「ということはあなたはみさき先輩の生徒さん?すごい、先輩の教え子に会えるなんて!でも変な子っぽい」

「ええ、みさき先生には大切なことを教わりました。よく出来た方だ」

「私はみさき先輩と同じ大学に通ってる二つ下の後輩なの」

「ほほう、ということは女子大生さん」

「これからそのみさき先輩に会いに行く所だったのよ」

「何だって!占めたぞ、なんて偶然。まるで小説みたいだ」

 なんたる偶然。これぞうが5キロの距離を追い回した女の正体はみさきの後輩であった。しかもこれからみさきに会うと言う。後をつければみさきに辿り着く。

「あ、それでここはどこです?」

「ここはゴーゴン街よ」

「え、そんな遠くまで来たのか!街ブラ番組で見たことがあるけど、初めてくる所だな」

 これぞうは地元民だが基本的には家、学校、図書館、そこらの店しかいかないので家から数キロ離れたらもうそこがどこか分からない。

「帰り道……分かんないや」

 これぞうは困った。輝美を追いかけるのに必死で来た道などまるで覚えていない。

「ええ!帰れない?」

「うん、どうしよ」

「じゃあ着いてきなよ。みさき先輩に連れて帰ってもらえばいいじゃん」

 この輝美もまあまあの物好き。一発でこれぞうがちょっと変わったヤツと見抜いたが、それでも連れく行くのは面白そうとも想ったのであった。

「じゃあ改めて、私は輝美ね。呼び方も輝美でいいわ」 

「僕は五所瓦これぞう、みさき先生の一番弟子です」

 これぞうは普通に嘘をついた。みさきは弟子を取らない。

「え?すごい名前ね?」

「な~に、ありふれたものですよ」

「どこがよ。その名字も名前も今まで聞いたことないわ」

「へへっ、輝美さんってのは素敵な名前だね。しかし名前であんな勘違いをするとは、なんというか、ユーモアのある方ですよね」

 これぞうはニコリと笑って言う。

(これがみさき先輩の第一の教え子、名前も中身も変わってるけどいい子そうね)

 輝美はこれぞうを品定めにかかった。

「じゃあ行くから、迷子にならないように着いて来てね」 

「はーい」

 これぞうと輝美は賑わうゴーゴン街の中心部へ向かってあるき始めた。

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