【第99話】夏休み5~BBQ2~
「じゃぁ皆に飲み物が行き渡ったようだから・・・乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
複数のかまどが並ぶ前に社長が出ていって缶ビールを掲げながら乾杯の音頭を取った。
運転する必要のない人たちは既に飲み始め、未成年組は流石にジュースだ。わたしは今日はメロンソーダを手に持っている。肉とは合わないんだけど飲みたくなった。
「リーンちゃーん!!どうどう?この肉行ける?」
「まだ」
「こっちは?」
「そっちはおけ」
わたしの目の前にでは肉が焼けるのを今か今かと待っている伊佐美さんと姉さんがいる。来るときは別の車だったけど、この二人は来ている。この二人は成人しているし、運転手じゃないから飲んでも良いんだけど、今日は飲まないらしい。大学の関係で最近飲みすぎて休肝日なんだそう。それにお酒の飲み過ぎで酒ヤケしたら仕事にならないとも言っていた。
遥斗達、高校生組はっと・・・
「はるさんストップ!!それまだ生焼け!!」
「え?そうなんだ」
「ほらまだここ赤いだろ。これ豚だからしっかり焼かないと」
「ダメなのか?」
「ダメ!!お腹壊すって」
あっちはあっちで大変そう。主に早乙女さんが。
*
「いただき」
父さんが大事に焼いていたお肉を横から強奪。
「あっひどっ!!」
「んま」
運転手なのにビールを手に取ろうとした人にお肉あげません。
「帰りは母さんが!!」
「あっち」
母さんはもう別の原画マンに飲まれされますよ。誰がうちの車運転して帰るんですか。社用車だけじゃ足りないからと出せる人は自家用車で来てるんですから飲んだらダメですよ。父さんは結構積載があるからと毎回車を出してるんですから。
「ふっふっふ。今年はチョット違うのだよ!!」
既に飲んでいる社長がわたしをびしっと指しながら宣言した。なんですか。
「今年はあっちのロッジも貸し切った!!つまり帰れない人は泊まれる!!イコール飲んでもよしっ!!」
「社長太っ腹ぁ!!」
他の社員から社長を持ち上げる声が上がる。
えぇーと、あのロッジ貸し切ったんですか?結構な大きさですよ?高かったんじゃ・・・
「去年は特に業績がよかったからコレぐらいどうってこと無いさー」
ぐいっと缶ビールを煽る社長。今回ジョッキは持ってきてないので飲む人は全員缶からになっている。一応お茶用の紙コップはあるけど、お酒の人は基本的にそのまま飲んでいる。
「まぁ全員泊まれるスペースはないから、帰れる人は帰ってね。というわけ」
高校生組はできれば帰って下さいな。と言われる。うちは両親がここに居るから問題ないと言っても他の人達は急な外泊になりますからね。
「ん。連れて帰る」
「じ、じゃぁ」
「ん。飲んでよし」
しゃぁっ!!と父さんはどこからか取り出した缶ビールのプルタブをあけた。飲んだら泊まりですからね。
・・・あれ? 肉を取る前に盗っておいた缶ビールはわたしの足元にあるはずなんですが・・・どこに隠し持ってた?
*
「じゃぁ一発芸やりまーす!!」
一人のアニメーターが立ち上がって宣言した。まぁ皆が盛り上がってからこういうのが始まるのは恒例だ。
「はらおど「年頃の女の子がいる前でするんじゃないっ!!」」
腹踊りしようとシャツをめくりあげようとした人を隣の人が止める。わたしは見慣れてるんですけどね。
「今朝仕込んできたのに!!」
ちらっとシャツをめくりあげた腹には典型的な腹踊りの顔が描かれていた。アニメーターということもあってクオリティが高い。自分自身にあそこまでのクオリティで描き上げるのは相当腕が良いと思う。
こそこそと社長が近藤と柊さんに話しかけているのが視界に入ってくる。そして近藤と柊さんが頷いている。あれは何をするつもりなんでしょうか。
「じゃぁ去年の業績の一端を担ったVoiceResearchersに歌ってもらおう!!」
社長が前に出て宣言する。業績の一旦を担ったって・・・結構売上行きましたけど全社的にはどうってことない金額だと思うんですが。
「関連でがっぽりだったんだよ」
にひひ。とわたしの横で肉を焼いていた経理担当の社員が教えてくれた。あぁなるほど。確かにCDが出てから悠里へのオファーとかその他の声優へのオファーが増えましたからね。
近藤と柊さんが女声と男声を駆使しながら歌い始める。この二人の歌唱力もあがりましたよね。最近では歌に特化した声になってきましたし。
「リンちゃんゴー!!」
「は?」
肉を焼いていたわたしに社長が声をかけてきた。いや、ゴーと言われてもあの二人デュエット曲ですよ。入る余地ないじゃないですか。
「あれデュエット。入れない」
「ほら、ボイパで」
「出来ない」
色んな声は出せますけど、楽器の音は無理です。あと同時に色んな音を出すことは出来ません。




