【第92話】調理実習
「また調理実習があるから教えて下さい」
遥さんが頭を下げた。いや、もういいんじゃない? 遥さんが料理が壊滅的だろうとうちのクラスメイトがひくことはないと思うし。
「体面じゃなくて、まじで危機を感じてて・・・」
既に妹には料理の腕は完全に抜かれてるし・・・と凹みながら言ってくる。まぁ料理は出来たほうがいいし、教えるのは別にいいけど。
「怪我だけは気をつけて」
本当にピーラーで自分の手を切ったぐらいだからな。
しかしなんでうちの高校は調理実習が多いんだろうか。2,3ヶ月に一回の頻度でやってる気がする。
「それはあたしがお答えしましょう!!」
あっ、早乙女さん。
「うちから県外の大学に進学する人が多いでしょ。だから実家を離れる人が多いから、一人暮らしを初めて困らないように調理実習を多めにしてるんだってさ。チョット気になって華岡先生に聞いたらそんな理由だってさ」
ほうほう。ただ学校の調理実習で今後家事するかはわからないけどな。
ところで、華岡先生からの呼び出しされてたけど何だったんだ?
「あー、先生の呼び出しはこれ」
そういって早乙女さんは紙袋を俺に渡してきた。中を見ると・・・BLの同人誌が詰まっていた。
「学校で受け渡しするなよ・・・」
*
「リンお姉ちゃんいらっしゃい!!」
飯島家のインターホンを押して待っていると、梨花ちゃんが出てきた。うん。今回もわたしはリンの姿です。梨花ちゃんの要望でね。
家から出てきた梨花ちゃんはすぐにわたしに抱きついた。
「絶対お姉ちゃんより気持ちいい」
「ちょっと、梨花ひどくない!?」
あはは。遥さんが梨花ちゃんの後ろから出てきた。
「遥さんのほうが柔らかい」
「んーん。リンお姉ちゃんのほうが柔らかいよっ!!」
どうなんでしょうね?自分の抱き心地はわからないので比較しようがないです。でもちゃんと女性の遥さんのほうが柔らかいかと思いますよ?
*
「じゃぁ、今日は豆腐ハンバーグを作る」
キッチンに移動して手をしっかりと洗いながら作るものを言う。豆腐ハンバーグは次の調理実習で作ることにしているメニューだ。
今回のテーマは豆腐だったから、班で食べたこと無い人がいた豆腐ハンバーグを作ることにした。わたし的には豆腐ハンバーグに大根おろしと醤油をかけるのをおすすめしたい。さっぱりしていて美味しい。
豆腐を水切りするレシピの方が一般的だけど、今回は学校の授業の調理実習で作ることもあって下処理に時間をかけていられないから今回は水切りなしのレシピですることにする。正直水切りで30分とか待っているのが面倒くさい。
昨晩に梨花ちゃんに飯島家に無い材料を聞いて買ってきたエコバッグから玉ねぎと合い挽き肉、木綿豆腐を取り出して・・・
「私が玉ねぎ切る!!」
あっ、はい。本当に気をつけてくださいね。
*
「ん?」
は、遥さんが包丁でみじん切りしてる!?
え?何故かピーラーを持っていた手が切れるミラクルを起こすような遥さんが!?
「ふふっいつまでも料理下手だと思うなー!!」
あっ、ちょっ、切ってるものから目を離さないで!!今指切りそうでしたよ!?
「お姉ちゃん・・・みじん切りしか出来ないのに威張らない」
「ちょっと梨花!!それ秘密って約束でしょ!!」
「でも事実じゃん」
みじん切りしかできないんですか・・・それはそれでおかしい気もしますけど、成長しましたね。
*
「リンちゃんいらっしゃい!!」
「お邪魔してます」
どうやら出かけていた遥さんのお母さんが帰ってきた。
今は成形も終わってフライパンで焼いているところだ。
焼くぐらいなら遥さんもできるかと思って任せようとしたら梨花ちゃんが絶対真っ黒に焦がすよと言ったから一緒に焼いてる。
そういえば飯島家のキッチンはIHなんですよね。うちはガスなんですけど、IHだと揚げ物の油の温度管理が簡単そうでちょっと憧れる。あとさっと掃除ができるというのもポイントが高い。確か前呼んだIHのパンフレットに音声案内とあったと思うんだけど、あれどうなんだろう?
「ふふ。遥がキッチンにいるなんてねぇ」
本当にあの頃からは考えられないですよね。
「お姉ちゃん、リンお姉ちゃんに負けてられないって頑張ったの」
「あっ、梨花!!それも秘密って!!」
「そういや、彼氏に料理の腕負けるのは女子としてのプライドがーとか言ってたわね」
「お母さん!?」
「でも、リンちゃんみたいな彼氏なら女子力負けてもねぇ・・・全然悔しくないんじゃない?」
「それはそうなんだけど」
そうなんですか。まぁわたしの女子力とかはおいておいて・・・
「そろそろ焼ける」
豆腐ハンバーグの完成です。
*
「はるさんがみじん切りしてる!?」
早乙女さんが少しゆっくりながらも玉ねぎをみじん切りしている遥さんを見て驚いた。ちなみに早乙女さんには今回米を炊いてもらっている。
「頑張ったからね」
「なに?すずっちが教えた?」
「いや、梨花ちゃんが頑張ったっぽい」
「あー・・・梨花ちゃんお疲れ様」




