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アナタの本当の姿は?  作者: kame
高校三年生
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【第90話】ストーカー

 わたしは姉さんにパロメロの楽屋に呼ばれた。来る時に事務所の車でとわざわざ指定されたのもあって、一度事務所で車を借りてから来ている。姉さんが話しを通していたのかスムーズに借りることが出来た。自由に使ってもいいとは言われたけど、これ私用ですからね。ふと思ったら免許とってから電車で移動した覚えが数回しか無い。


「何故呼ばれた?」


 楽屋につくとそこには楽屋の主であるパロメロの二人と姉さんが居た。


「来た来た」


 だからなんで呼んだんですか。


「ナギサがストーカーされてるみたいだから送迎よろしくー」


 軽っ!!ストーカー被害を言うには軽い!!

 見ればナギサさんの顔色は良くない。ここに暗い雰囲気で話したら余計に落ち込みそうだ。


「ナギサがというよりパロメロがストーカーされてるんだけど、アカネちゃんは大丈夫そうだし」


 まぁアカネちゃんは、帰るときはアカネ君ですからね。


「ん。分かった」


 だから社用車でという指定だったんですね。ストーカーにうちの車のナンバーを覚えられても問題ですし。でも社用車ってうちの会社のロゴ入ってますけど、パロメロと事務所違うのは問題ないんでしょうか?うちは問題なくてもパロメロ側はどうなのか分からないのですが。



 *



 二人のライブが終わり、珍しくアカネちゃん状態のアカネ君も連れてうちの社用車に乗り込む。助手席には姉さんが乗り込んだ。

 発車前に周囲の確認をしていると・・・


「あれ」


 こっちを覗いてくる怪しげな影を見つけた。影が思い切り見えてますよ。

 後部座席でナギサさんがぶるりと震えたのが雰囲気で分かる。あいつか。


「いるわね。いいから出して」


 ちらりとその方向を見た姉さんが、発車の指示を出した。

 見た感じ相手は車じゃなさそうだし、出してしまえば追いつけないと思う。


「いつもはどうやってた?」

「タクシー拾って撒いてた」


 ふむ。ということは自宅割れはしてないと。駐車場を出て道を進む。国道まで出よう。念には念を入れてフェイクをいれつつ送ればいいか。


「ん?」


 バックミラーでストーカーらしき人物をちらりと確認するとどこからか現れた高級欧州車に乗り込んで追ってきた。車あるじゃん・・・


「おぉう。金持ちストーカー」



 *



 国道を少し法定速度をオーバーしながら走る。そこまで飛ばしているわけじゃないから後ろのストーカーが乗り込んだ車もずっとついてくる。

 事務所の車は後部座席には芸能人を乗せることを想定してスモークとカーテンがついているからカーテンをしっかり閉めてもらった。


「ちょっと横道それてみて」

「ん」


 横道にそれて、今までの進行方向と逆に向いて進んでまた国道に戻ってみたけど、しっかりとついてくる。この意味不明のルートでもついてくるということは完全にこの車を追いかけてきているということだろう。


「どうする?」

「警察?」


「えっ、すみません。それは・・・」


 あぁ、アカネちゃんが警察に駆け込むのは色々面倒そうですね。わたしもですけど。


「なら・・・とりあえずうちの事務所。芸能部門の方確か守衛のいる地下駐車場だったよね」

「ん」


 守山さんを何度か連れて行ったことがあるから守衛さんにもこの車は覚えられているから直ぐに入れる。わたしの顔が覚えられている可能性もあるけど。


「じゃ、一旦そこで」


 了解。



 *



 地下駐車場に滑り込んで、守衛さんの居る部屋で監視カメラを見させてもらう。


「いた」


 駐車場に入る前の道の反対車線に今まで追いかけてきていた車が停まっている。


「一体何が目的か」


「あれ?リンちゃん?」


 わたし達がモニタの前で腕を組みながら考えていると、わたしに声をかけられた。

 誰ですか?モニタから視線を外して守衛室の窓から外を見ると、そこにはスカウトマンで今は男性モデルの付き人をしているはずの佐伯さんが居た。


「ん。こんにちは」

「こんにちは。何してるんですか?」

「ストーカーの監視」

「はい?」


 ストーカーを監視するのっておかしいですかね?


「普通逆じゃないですか?」


 そっか。

 守衛さんが招き入れて、佐伯さんが守衛室に入ってくる。


「ちょっと失礼します」


 モニタを佐伯さんに見せる。見た目が完全に男性な佐伯さんが居てくれたほうが心強いのは確かだ。

 モニタを見ている横で佐伯さんに今までの事を説明する。元々ナギサさんがストーカーを受けていた所からの話だ。


「ん?この車・・・」


 知ってるんですか?


「角度悪くてナンバーが見えないんだけど、ナンバーって分かる?」


 散々追いかけてくるから覚えてしまったナンバーを伝えると、佐伯さんはスマホを取り出して何処かに電話をかけた。


「お疲れ様です。佐伯です。社長いらっしゃいますか?」


 どうやら保留になったらしくスマホを耳に当てたまま、もう大丈夫。と言ってくれたけど、どういうこと?



 *



「本当に申し訳ない!!私の娘が!!」


 そういって事務所の応接室に飛び込んできた恰幅の良いおじさまがナギサさんに頭を下げた。一緒に入ってきたわたし達と同じくらいの年齢の女の子はナギサさんとアカネちゃんを見て目をキラキラとさせている。でもおじさまがその女の子の頭を掴んで頭を下げさせているが、下がってない。


「えっと」

「この人は食品会社の社長さんで、僕が前に居た会社の社長さんなんです」


 わたしがよく買うお菓子のメーカーじゃないですか。なんて大物がこんな芸能事務所に来てるんですかね。

 というか佐伯さんなんでそんな会社やめちゃったんですか。


「いやー、管理職に昇進と言われて、まだ現場で働きたかったので・・・」


 それでスカウトマンですか、全く業種違いますよね・・・


 で、この社長さんの娘さんがストーカー本人ということで良いんでしょうか?


「そうだね」


「ナギサ様!!アカネ様!!サインお願いしますっ!!」

「この馬鹿娘がっ!!人様に迷惑をかけるなと何度も言っているだろ!!」


 こういう風に叱るのは、今時珍しいお父さんですよね。

 ストーカーが年下の女の子ということが分かってナギサさんはほっと息をついている。


 まぁひとまずストーカーについては解決ですかね。

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