【第86話】修学旅行2
「おはようございます」
アカネ君がわたしのベッドを覗き込んできていた。同じ部屋だったからですね。昨日は風呂上がりにスキンケアしてから寝た。意外と疲れていたのか直ぐに寝付けた。
「おは」
眼鏡をかけていない目をこすりながら起き上がる。
「眼鏡かけてないとリンさんですね」
・・・あ。やば。眼鏡がなかったことでリンが出てきてた。頬を叩いて気持ちを切り替える。
「一応目を細めれば別人だろ?」
「あー、確かにリンさんとは離れますね」
お陰で昨日の風呂では言われなかったからな。
「それでどうした?」
「いえ、朝食の時間が近くなってきたので起こそうかと」
あー、確かに朝食の時間が近いな・・・でもよくアカネ君は起きれたな。目覚ましとかなった覚えはないんだが。
「毎日の癖ですね。体力つけるために朝走ってるんで」
今朝もちょっとホテルの周り走ってきました。とよくアカネ君を確認してみるとホテルのユニットバスでシャワーでも浴びたのだろうか髪の毛が濡れている。
「アイドルは大変だな」
「まぁ最近は好きでやってることなんで」
ふぅん。俺は人前で歌って踊るというのは怖くて出来ないなぁ・・・
「最近はよく露出している気がしますけど?」
「ラジオだけな」
ステージはまだ片手で足りるぐらいしか立ったこと無いって。
*
コーヒーとパンを手に皆が居るテーブルに・・・早乙女さんしかいない。
「おはー」
「おは」
うん?なんか早乙女さんに違和感がある。
「今ってノーメイク?」
「そだよー」
華の女子高生がそれでいいんだろうか。
「女子高生より可愛くなれる男子高校生がいる前でメイクする気が起きないんだけど」
そもそも朝は面倒くさい。と早乙女さん。
「それでいいのか女子高生・・・」
*
バスに乗り込んで昨日のうちに買っておいたお菓子をあける。アカネ君にいる?と聞いたらカロリーが・・・と言ってたから隠しながら食べることにする。やっぱりアイドルって大変だ。
流れる外の景色を見ながらポッキーをつまむ。今日は学校の決めたルートだが、明日は自由だ。はて明日はどうやってイベントの会場まで行こうか。
「後10分で首里城に到着します。貴重品は持っていって下さい」
財布と携帯とカメラを持っていこう。
*
修学旅行の定番というだけあって他の高校生らしき人もちらほらといる。時期が時期だからそんなに人数は居ないけど。
「明日どうする?足ないよ?」
歩き疲れたからその辺にあったベンチに遥さんと座って話をする。
「んー、レンタカーって借りてもいいんだっけ?」
「運転慣れてる人ならいいって言ってたけど」
じゃぁ、借りようか。ホテルの近くのレンタカー屋にネット予約しておこう。イベント終わった後も車があったほうが楽だしな。
散々運転はしてるから取って一ヶ月はたってないけど慣れてる。先生の慣れているというのがどの程度のレベルのことなのかは分からないけど、ペーパーじゃないし大丈夫だろ。
「格好はどうする?」
「んー、どうしたい?」
「できれば変えたい」
りょーかい。
*
首里城の時間が終わって水族館の方へバスで移動する。
確か巨大な水槽があるんだよな。あとジンベエザメ。それが見れたら俺としては水族館は満足だ。
バスで移動している間に今日泊まるホテル近くのレンタカー屋にネット予約しておく。クレジットカードでの支払いだったら証明書少なくて良いのか。保険は念の為につけておいてっと。時間は半日でいいか。
*
「おぉ」
俺は前、遥さんと行った時にも触ったヒトデをぷにぷにとするちょっと硬めの感触が楽しい。
「佑樹ってヒトデ好きだよね」
前も触ってたし。とナマコを手に遥さんが声をかけてきた。いや、遥さんもよくナマコを触れるよな。俺としては結構怖いんだけど。
「触ってみる?ナマコ」
んんーいいや。俺はヒトデ触っとく。
*
―ーコンコン
女子の部屋をノックする。すると時間も置かずに内側から扉があいた。
「いらっしゃーい」
俺を迎え入れてくれたのは遥さんだ。中学校みたいに部屋の移動禁止というのはないから自由に行き来はできる。
「なんで呼ばれたのさ」
俺は明日に備えて寝ようとしたところで遥さんから連絡が来て部屋に呼ばれた。
「私達の描いたカットが放送されるんだよ!!」
あぁー、なるほど。ただ、俺はもう自分の関係するアニメがありすぎてもうそこまでテンション上がらないんだよなぁ。始めた頃は結構テンション上がってたけど。
「あれって沖縄でも放送されたっけ?」
「番組表を見る限りは流れるっぽいよ」
へぇ、少し遅れて放送かと思ってた。
*
「ここ!!」
「え?はるさんここ描いたの?」
一緒にアニメを見ていた早乙女さんがえ?まじで?と聞いてきたから頷いておく。キャラクターも動いているカットだ。
「で、このキャラって佑樹が声あててるんだよね」
そうそう。このキャラの声は俺があててる。最後の最後で地味にキーとなる女の子だ。
「二人してなんというか、アニメ業界にどっぷりだな」
たしかになぁ・・・最近はどんどん仕事も増えてるし、遥さんにも色々原画のオファーが行っていたりする。いつの間にか就職の外堀が埋まっていっている気がする。嫌いな仕事じゃないしいいけど。




