【第8話】もう一組1
---ガンッ
俺が学校の帰り道を歩いていると、近くの路地から鉄板に強く当たる音が聞こえてきた。
路地裏を覗き込むとそこにはいかにもなチャラそうな男二人とうちの高校の女子の制服を着た生徒がいた。
一人の男に所謂壁ドンをされている生徒は本気で嫌がっている様子。
えーと、この場合は警察に連絡するんだっけかな?
あっ!?
生徒のほうが金的攻撃して壁ドンから逃げた!!
しかも早いし、こっち向かってくるし!!
道を開けると、通過してそのまま生徒は走り去る。
男どもは・・・とチラリと路地裏を覗き込むと一人は蹲ったまま動いていないし、もう一人はその動けない奴を見ている。
うん。もう大丈夫そうだな。
というか・・・
「なんでうちのクラスメイトが女装なんてしてんだよ・・・」
もしかして文化祭で目覚めさせちゃったか?
見た感じ黒髪ロングで清楚系のお嬢様っぽく仕上げていて女子のように見えるが、見る人が見れば即バレレベルだった。
名前は、近藤だったっけか?絡まない人の名前はほぼ一年経っているが覚えてない・・・席も遠いし。
ただ言わせてもらうなら、メイク濃すぎ。あと動き雑!!
文化祭とかの祭りの中で企画としてやるならそれでもいいけど、街中でそれはバレるもとだから!!
まぁ黙っておいてあげよう。
*
「リンあれって?」
休日、わたしと遥斗はデートと称して電車でヲタショップ巡りをしていると、遥斗が何かを見つけた。
視線の先には、あの近藤だった。学校でちゃんと名前は確認した。
駅前にあるベンチに腰掛けている。前と同じく黒髪ロングの清楚系で何か文庫本を読んでいる。
服装はクリーム色の落ち着いたワンピースに黒のコート。靴は低めのヒール。
パッドも怪しいほど大きすぎる。
人が近くを歩くたびにビクビクしている。
それ文庫本読めてる?
「ん。近藤」
「だよな・・・何やってんだあいつ」
と二人して少しあの様子を見るために駅前のチェーンの珈琲店に入る。
コーヒーを注文して、駅前のベンチが見える位置に座る。
全くの他人なら気にはならないが、クラスメイトとなると気になる。
「は!?」
「ん?」
コーヒーに砂糖とミルクを入れようとして目を離している間に進展があったようだ。
わたしが視線を向けると、近藤のそばに男性の姿が・・・そして近藤が抱きついた。
「はっ?」
まさかのBL的展開!?
これはこれは・・・
「リン。さっさと飲んで追いかけよう」
これは面白そうだ。と遥斗の目は語っている。
きっとわたしの目もそう語っていることだろう。
「ん」
===>
「追ってどうする?」
「ネタ?」
とリンに答えつつも、俺には別の予感があった。
あの男性・・・女性だ。
同じだから感じる違和感というのがある。
前にリンが言っていたオーラというのだろうか?
「話してない」
確かにあの二人の後をつけているが、話している様子がない。
で、二人で携帯をチラチラと見ながら歩いている。
もしかして女声も男声も出せない感じだろうか。
そして二人で入っていったのは俺達が何度も通ったことのあるカラオケ店だった。
俺たちも続いて入って隣で受付しながら部屋番号を聞く。
男性側が受付していたが、女子が結構無理して低音を出しているような声だった。
おっ丁度隣だ。
「・・・もうやめない?」
部屋に入ってリンから声が上がった。
うん。俺もちょっとやめようかと思ってた。
さすがに軽率に暴くものじゃないなと思ったのもあるし、折角カラオケに入ったのに歌わないのはもったいない。
「おーけー、ふつーにカラオケしよーぜ」
「おけ」
隣も歌い始めたし、ちょっと予定外だけどカラオケ楽しもう!!
リンこのアニメの主題歌歌って!!声優として出てたよね!!
*
少しトイレと席を立って、男子トイレに。
もう慣れちゃったなぁ・・・
手を洗っていると、ワンピースの女性が入って・・・って近藤君じゃん。
そのまま小便器の前で立ち固まった。
「あ゛っ」
「ブフッ」
つい笑ってしまった。
「えーとあーと、すみません」
普通に近藤君の声だ。やっぱり声は変えられないのか?
「いや、いいよ。入ってくる時から分かってたから」
「まじっすか」
「まぁ見慣れてるからな」
イベントのコスプレ会場だったら当たり前の光景だし。
「スカートは捲り上げたらいいよ」
脇に挟んで落ちてこないようにするのもな。と教えておく。
今までどうやってきたんだか。
「じゃ俺は行くから」
と個室に入っていった近藤君を置いて出る。
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「それまじ?」
「まじまじ」
遥斗から近藤とのバッティングを聞いて、近藤が何をしたいのかさっぱりわからなくなった。
わたし達はメインはヲタ活だけど・・・
「あとあの男性も女性だった」
うん。近づいてからわたしもそれは気が付いた。
遠目では分からないレベルだった。
うーん。でも放置で。
「ただ声だけ仕込みたくない?」
分からなくもないけど、どうやって?
わたし達の身バレはいやだ。
「んー、確かに近藤君に教える義理はないな。
放置で」
おーけー
*
「「「あっ・・・」」」
まさか、カラオケをでる時間が一致するとは思わなかった。
元々短編の予定で書いてあったので、伏線が一切ありません。
なので色々強引に進めていきます。