【第77話】同僚の結婚式
「本日はおめでとうございます」
「ありがとうございます」
わたしは目の前にいる人と机を挟んでお辞儀をして、ご祝儀を受け取る。
「ありがとうございます。お預かり致します。
恐れ入りますが、こちらにご記帳をお願い致します」
「はい」
書いてもらった芳名帳に記入漏れがないことを確認して、先に準備しておいた席次表を渡す。
「会場の準備が整いましたらお呼びいたしますので、控室にてお待ち下さい。
控室にはお飲み物のご用意がありますので、ご自由にお取りくださいませ」
控室はあちらからお願い致します。と案内して、さて次の人。
来た人からご祝儀を受け取って名簿にチェックしていく。
あぁ着物って普段着ないから違和感が・・・あと動きづらい。
今日は声優の同僚の結婚式の受付をやっている。声優の同僚の結婚式だからリンとして出席予定ではあったけど、受付の担当じゃなかったはず。でも、担当が今流行っているインフルエンザにかかって急遽代役ということになった。リンちゃんなら任せれるーと言われたけど、なぜ代役がわたしなのかよく分からない。
確かに親しい方の人ではあるんだけど、受付をやるほど親しいかと言われると微妙なんですよね。
わたしの横には姉さんも受付としているから、もしかしたら姉弟だからという理由で選ばれたんじゃないかとは思ってる。
「本日はおめでとうございます」
「ありがとうございます」
*
「あれ?すずっち?」
なんで結婚式に早乙女さんが来るのでしょうか。
え?早乙女さん親族かなにかですか?わたしは今日の参加者のリストを見るが早乙女さんの名前はない。
「新郎の方の妹だよ」
え。まじですか。そう言えば新郎の方の名前が早乙女だ。
「受付やってんだ」
ファイト~、あたしは喉乾いた。といって早乙女さんは控室の方に向かっていった。
というかあの人、名字早乙女になるんだ。
*
式が始まってわたしは未成年だからソフトドリンクで乾杯。出席しているご両人の家族にもわたしと同じくらいの年齢の人がいるからその人もソフトドリンクだろう。
「リンは結婚式どっちでやるの?」
隣で一緒にタキシードとウェディングドレスを着た新郎新婦を見ながら姉さんが聞いてきた。
「普通に」
えぇ、普通にわたしは男の格好でやりますよ。誰と結婚するかは正直分かりませんけどね。遥さんとの関係がこのまま続くとも限らないわけですし。
「普通にウェデングドレスかぁ」
いや、ちょっと待って下さい。姉さんわたしの性別考えて下さい。
まぁ人の結婚式で言うことじゃないので別にいいですけど。本気で言われている気がしてならないんですよね。
「姉さんはどうなんですか?
親に挨拶しに来ましたし結婚も近いんじゃないんですか?」
そういえば指のサイズを調べるの忘れてましたね。結局今どうなっているんでしょうか。
「あーまだ結婚はしないかなー」
同棲はしようとは思ってるけどね。と姉さんから教えてもらう。結婚はまだなんですね。
それにしても結婚かぁ・・・わたし達にはまだまだですけどね。
*
「リンちゃん今日はありがとう」
結婚式が無事終わり新婦の控室に姉さんと一緒に来た。
受付をする前に一度顔合わせはしているけど、あのときは結構バタバタしていたからあまり言葉も交わさなかった。式場の人と一緒に打ち合わせした程度だ。
「早紀ね~」
確か新婦の弟さんだったはず。家族だったとしても女性の部屋にノックなしで入るのはどうかと思いますけど。
まぁわたしの部屋に母さんとかはノックなしで入ってきますけどね。別に見られて困るものはないのでいいですけど。両親に性癖バレしているので隠す必要はないんですよね。性癖は女装ですけど。もう隠しもしてないですし、見られてもどうでもいいです。
「カズは何度ノックしてって言ったらいいの」
「あーゴメンゴメン」
全く悪びれる様子はない。
そしてわたしの方を見て固まる。へ?わたし何かしましたっけ?
「カズはリンちゃんに一目惚れだってさ」
新婦である早紀さんがこそっとわたしに耳打ちしてくれる。
「あ、あの受付でいたのを見て一目惚れしました!!付き合って下さい!!」
「ごめんなさい」
「即答!?」
だってわたし相手いるし。そもそも男と付き合うつもりはない。
「私もリンちゃんに彼氏がいるとは言ったんだけどねぇ」
信じてくれなかったってことですか。よく居ますよね一目惚れ相手に突き進む人。遥さんを追いかける京さん然り。
「相手いるから」
そういってわたしはスマホの画像フォルダをカズ君?に見せる。ほとんど遥斗との写真と遥さんとの写真だ。他は移動中に見つけた小動物の写真。
「やっぱり可愛い子には彼氏いるよなぁ」
まぁ可愛い子には大体相手がいるんじゃないでしょうか。
*
――コンコン
「入るよ」
新郎の声だ。早紀さんが返事をして部屋に入ってきた。隣には早乙女さん。軽く手を上げて挨拶しておく。
「あれ?二人共知り合い?」
「あー、うん。クラスメイト」
「えっそうなんだ」
一瞬早乙女さんがこっちを見てからクラスメイトと答えた。まぁ共学ですから、その回答で大丈夫です。
「じゃぁリンちゃん。これからも明里と仲良くしてやってな」
「ん」




