【第70話】クリスマス2
「飯食ったしカラオケいこーぜ」
なんだか聞き覚えのある声が聞こえてきた。この声はクラスメイトの片山君だ。女声を仕込むために結構聞いたから声で判断できる。
声が聞こえた方をわたしはちらりと見る。
「遥斗は見ない方がいい」
歩道橋を渡ってくるのは金曜日に教室でクリスマスなんてくそくらえと言っていたグループだ。女子もまじり、男女比は半々。遥斗は文化祭で晒してるから出来るだけみられない方がいいと思う。わたしだけならクラスメイトにリンの姿を見られたことはないから問題ない。
「ん?」
なんで早乙女さんそのグループにいるんですかね。確かに早乙女さんは相手はいないけど、ぼっちを嘆くような性格じゃないでしょうに。
「あかりんあかりん。カラオケどうするー?」
「んーどうしよっか」
あぁ、他の人に誘われたんですね。一瞬だけ早乙女さんがこっち見た。そしてそっか、ここそういうスポットかと納得顔になった。まぁここイルミネーションを見る良いスポットですからね。
ちなみにあかりんは早乙女さんの下の名前の明里をもじったあだ名だ。本名より長いとは言ってはいけない。
「あぁカップルを棒で殴る仕事したい」
「俺もしたい」
それ犯罪です。クラスメイトがカップルがいるとわたし達を見た。
あっそうだ。
「遥斗」
「ん?」
遥斗に声をかけるとそらしていた顔をわたしの方へ向けてくれた。
わたしは遥斗にぼそりと声をかけて
――チュッ
口にキスした。クラスメイトの方からおぉっと声があがる。
「えっ」
「初キスゲット」
実は口へのキスは初めてだ。みるみる遥斗の顔が赤くなる。わたしの顔も赤くなっていることだろう。散々間接キスはしてきてるんだけどね。
「ぼっちの人にサービス」
「いや、サービスじゃなくてそれキルしてるから・・・」
ふふん。わたしに彼女がいるってことで驚いた片山君への仕返し。
*
『ちょっと二人共、オーバーキルだったんだけど』
グループラインで早乙女さんからメッセージが来た。このグループは屋上組のオタチームのグループになっている。メンバーはわたしの2アカウントと遥さん、早乙女さんだ。
こんな感じになってると早乙女さんから片山君がブラックコーヒーを勢い良く飲んでいる画像が送られてきた。背景からしてカラオケにでも入ったんだろう。
『計画通り』
スタンプ送信と。
「この後どうする?」
「うちく・・・うーん。今日親がいる」
「あー、うちもだ」
今日は両方共家に親がいる。
「ま、どっか食べに行こう」
前に声優仲間で食べに行ったお店が美味しかったんで一緒に行きませんか? 居酒屋なんですけど、お酒以外のメニューも充実していてとても美味しかったんで。
「おっけー!!」
*
「そういやさ、今日ってクリスマスじゃないよな?」
竜田揚げを摘みながら遥斗が聞いてきたから、頷いておく。
今日は日曜日でクリスマスは火曜日だ。ライブも結局は日曜日がしやすいということで少し早めのクリスマスライブとなっていた。
裏事情だけど、あのアイドルがクリスマス恋人と過ごしたいということで日曜日になっているのは事務所内だけの秘密だ。うちは恋愛禁止じゃないから問題ない。
「じゃぁあいつらなんでクリスマスじゃないのに集まってたんだ?」
あー、確かに。クリスマスに集まるのなら分かるけど、まだ日曜だった。この前の金曜日もぼっちで遊びに行くとか言ってた気がする。
考えられるとしたら・・・
「合コン?」
「は?ギリギリ過ぎないか」
ギリギリで彼女ゲットを目指して誘いまくっているという可能性がある。が、カップル見て棒で殴りたいとかいってたら出来るものも出来ないと思う。
実際の所はどうなのか、あとで早乙女さんにでも聞いておこう。
*
「そういや、俺にこんなメール来たんだが」
「ん?」
そういって遥斗がスマホをわたしに見せてくれる。送り主は・・・うちの事務所? 内容としては声優デビューのお誘いだ。
「聞いてない」
「そうか。どうしたら良いと思う?」
好きにしたら良いと思うよ。多分両声類を確保しておきたいんだと思うし。男の娘好きの監督がいるから簡単にそっちのキャラねじ込めるし。
最近あの監督の描く男の娘はわたし担当になってきた。もう別人で笑えてくるけど、それぐらい極端が欲しいとはよく言われる。いや、言ってくれればどちらにも面影を残した声ぐらい調整すれば出来ますけどね。
「ちょっと興味あるんだよなぁ・・・」
まぁ体験というのもありだと思う。駄目なら駄目で同じ声で代役はやるから安心してくれていいし。
「あと、こんなのも来たんだよな」
・・・こっちは絵の仕事ですね。どんだけ仕事の依頼貰ってるんですか。




